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MUCC&シドAKiの「M.A.D」、リキッドルームで2daysファイナル公演を開催

MUCC&シドAKiの「M.A.D」、リキッドルームで2daysファイナル公演を開催

MUCCとAKi(シドのベーシスト)が、ヘッドライナーを務め開催された全国ツアー「M.A.D」。同ツアーのファイナル公演が、3月31日と4月1日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。

<恵比寿LIQUIDROOMライヴレポート>
1月23日の埼玉・三郷市文化会館を皮切りにスタートした、MUCCとシドのベーシスト・明希のソロプロジェクト“AKi”がダブルヘッドライナーをつとめる全国ツアー「MAVERICK DC presents DOUBLE HEADLINE TOUR 2016 M.A.D」のファイナル公演が、3月31日と4月1日に恵比寿LIQUIDROOMにて行なわれた。

追加公演も合わせ、全国13箇所・18公演で行なわれた今ツアーには、ギルガメッシュ、ユナイト、DIV、カメレオ、CLØWD、という彼らの後輩バンドや、D’ERLANGER、ゲストパフォーマンスでcali≠gariの桜井青、ゲストヴォーカルとしてL’Arc〜en〜CielのHYDEとシドのマオ、そして、このツアーには欠かすことの出来ない存在となったL’Arc〜en〜CielのKenらを迎えて行なわれた。まさに、このツアーのタイトルどおりの、ロックシーンを牽引するMAVERICK DC GROUPあげての強力な布陣となった。

両日ともに先陣を切ったのはAKi。来年には結成20周年を迎える、19年の歴史を築き上げてきたMUCCに対し、自身がベース&ヴォーカルをつとめ、ギターに佑聖(ex THE KIDDIE、GUTS AND DEATH)、加藤貴之(兎-usagi-)、ドラムに宮上元克(THE MAD CAPSULE MARKETS)を迎えたAKi名義のソロプロジェクトは、結成わずか1年とまだまだ始まったばかり。シドとしては13年の歴史を持つ明希だが、ベースに加え、ヴォーカルとしてセンターを担い、バンドを引っ張り、さらに、20年選手と並び、ヘッドライナーをつとめるという責任の重さは、想像以上のプレッシャーであったに違いない。

正直な言葉で書くとするならば、ツアー序盤では、それぞれが秀でたスキルを持つ最強のプレイヤーを揃えながらも、バンドとしての経験とライヴ経験が少ないこともあり、楽曲そのものの魅力が充分に発揮されておらず、本来の魅力を持て余す様子も伺えたほど、“AKi”というプロジェクトが、発展途上であることを雄弁に物語っていた。しかし。ツアー中盤あたりからの成長には実に目を引くものがあった。いや、度肝を抜かれたという表現の方が適切かもしれない。それは、楽曲のアレンジ自体を大幅に変えたのか?と錯覚するほどに楽曲の印象が違って聴こえたことと、まったく異なるバンドかのようなバンド感を放っていたところにあった。そう。AKiというプロジェクトは、短期間に何年も歴史を積み重ねてきたバンドが宿す重みと深みを身に付けていたのだ。

ファイナルとなった1日目は、壮大なSEから幕を開けながらも、その印象を一気に打ち砕く破壊力を持った「Fahrenheit」「Be Free」を畳み掛け、まったく飾りのない、丸腰のバンドサウンドでオーディエンスを煽っていった。まさしくそれは、AKiがこのプロジェクトで魅せたかった理想型だと感じた。最強のプレイヤーの個性が、1つのバンドとして集結することで生まれた音像である。また、バンドとしての遊びを感じさせる、タイトなノリの「FAIRY DUST」や、独特な毒を含んだ「FREAK SHOW」で、オーディエンスに純粋に音楽の楽しさを教え、「Day 1」「LOOP」などのメロウな楽曲は、音で景色を描く様を魅せると共に、AKiの根底と楽曲センスを見せつけるものであった。

ここに上げた、“丸腰のバンドサウンド”と、“ギミックで魅せた音の楽しみ方”と、AKiのルーツが窺い知れる“メロウで幻想的な歌モノ”という大きな3つの枝は、この先もAKiのサウンドを支え、大きく葉を茂らせていくことになるであろう軸を思わせた。

また、2日目の始まりには「Day 1」を置き、静かでありながら熱く厳かな空間からライヴをスタートさせ、大きく曲順をシャッフルさせていたが、楽曲それぞれの個性がしっかり確立されていたこともあり、曲順を変えただけで大きくライヴの景色を変えることとなったのである。

後に続いたMUCCのライヴは、AKiが描き出した景色とは異なる世界観のモノであったが、集まったオーディエンスは、ノリを変え、MUCC、AKi、という両者から放たれる異なる音を楽しむスイッチを切り替え、“音楽そのもの”を楽しむ喜びを噛み締めていたように思った。

後攻のMUCCのライヴもツアー序盤とは印象を変えていた。確実にAKiとのライヴがMUCCのライヴを変えていたのだ。20年選手が、ここに来て、またこれほどまでに大きな成長を魅せてくれるとは。ある意味、AKiの成長の振り幅以上に驚かされたと言っても過言では無い。

百戦錬磨のMUCCのライヴ戦力は半端ない。が、しかし、このM.A.Dというツアーは、彼らにとっても特別な刺激を与えた時間となったのだ。敢えてアウェイ戦に挑み、自ら率先して負荷を与えてきただけに、こういった“戦う相手”が同じ場所に存在するときに発揮するパワーは、彼らのライヴをひと回りもふた回りも大きく成長させるのである。この日のMUCCは、純粋にライヴを楽しんでいる様子であったことから、本人たちは“戦っている”という意識は無かったと思うが、やはり、本能的な部分で闘志が掻き立てられていたのだろう。さらに、その相手がAKiであったことも大きかったのだ。同士であり、仲間であり、友人でもあるAKiだが、MUCCはそこをサポートする気などさらさら無い。結成1年の対バン相手に負けるわけにはいかないという闘争本能が、この日のMUCCのライヴを最高で最強のモノに押し上げていたのだろう。実に人間的で、常に生身であるのがMUCC。あたたかく、そして優しく、とても空虚で刹那的である故に、そことは反対に位置する猛々しさと激しさと険しさは、より深い。人間の業を唄う彼ららしい在り方である。共にライヴを楽しみながらも、本気でぶつかり合う。その景色がとにかく素晴しかった。気持ち的には、とにかく楽しんでいる様子が手に取るように伝わってきたのだが、ただただ“楽しい”だけのツアーであったとしたならば、互いにここまでの成長は無かっただろう。共に、真剣勝負で殴り合ったからこそ、より深い友情と成長がそこにあったのだと思う。

その証拠に、1日目のMUCCはAKiのライヴを受け、1曲目をライヴ直前に変更したのである。混沌とした世界を描きながらも、激しく、大きな4つ打ちで聴き手を揺らす、MUCCというバンドの歩みのすべてを凝縮した「睡蓮」から、ライヴ後半で投下されることが多い、トドメの煽り曲「蘭鋳」への曲変更は、AKiが作ったフロアの熱をそのまま引き継ごうと思ったのか、はたまたその熱以上の破壊力でその場をMUCC色に染め変えようと思ったのかは定かではないが、闘志を掻き立てられたことには違いない。新曲「JOKER」での逹瑯とミヤの妖艶な絡みも、いままでのMUCCには無かった色である。それは、純粋に、この曲の持つMUCCらしいレトロなメロが自然と呼び起こした絡みでもあるだろうが、AKiとのこのツアーで新たに呼び起こされた新たなMUCCらしさでもあったのではないだろうかと感じた。1日目には旧曲「試験管ベイビー」が届けられたのだが、昔とは違う激しさがそこに宿っていたのも、ミヤの導入の台詞の後に逹瑯が英語での煽りを差し込んだ「睡蓮」の魅せ方も、彼らが“当時のまま”そこに立ち止まっていたら、この成長も変化も無かっただろう。“将来英詞の曲とかやるようになっちゃうかもね!”と、冗談にしていた当時の彼らに、今のMUCCの姿を見せたとしたら、誰よりもその変化に驚くことだろう。そんな成長も愛おしく感じさせられた一夜となった。

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