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春だ! 桜が咲いたので樹木医さんにお仕事や花の愛で方について聞いてみた

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春になると私たちを楽しませてくれる桜の木を、一年中気にかけている樹木医。きっとお花見をするときも、専門家ならではの視点があるはずということで、現役で活躍されている方にお話を聞きました。インタビューを受けてくださったのは、多くの大木と古木、そして街路樹を診断している、日本花の会・主任研究員の和田博幸さんです。

「とにかく地を這いつくばって生きるんだ」ー”樹木医”というお仕事

—はじめに樹木医とはどんな仕事なのかを教えてください

樹木医は、街中にある身近な樹木の診断をして悪いところを直したり、地域の人たちが守りたいと思っている大木を保護したりする仕事です。講演やインタビューを受けて、樹木を大切にしてもらうための普及啓発活動もやっています。

ちょうど今の時期、春先から夏前後にかけて、全国の自治体から診断の依頼がきます。なぜかというと、葉がついている時期が一番、木が元気かどうかを診断しやすいからです。葉の大小や、多さ・少なさなどから健全な状態であるかがわかります。通常よりも葉が小さい、少ないといった異常は、何らかの原因で、土から水分や養分をきちんと吸えていないということなので、根を掘って調べ、必要であれば根や土に手を加えて治療をします。

落葉樹であれば治療は冬。冬は木が眠っているので、根を掘っても治療の負担が少ないんです。常緑樹の場合は、蒸散が盛んで生命活動が活発な真夏と、寒さが苦手なので真冬は、根に手を加えることはしませんね。


—木の病気は根に問題があることが多いのでしょうか

はい。多くの場合、原因は根と根元の土です。土の中はいろんな細菌の宝庫で、木はそれらみんなとの共生関係で生きています。共生関係のバランスが崩れ、生育を助けてくれる良い菌が減ると、木の元気が失われます。特に松なんかは顕著で、土壌の養分を集めてくれる菌糸、つまりキノコがいないと生長できないほどです。マツタケも松と共生関係を結んでいるキノコのひとつで、ただ美味しいだけじゃなくて立派な役割を果たしているんですよ(笑)。

そういうわけですから、根元の土を良い菌が住んでいるものに入れ替えるのが治療になります。人がたくさん訪れる古木や桜、それに街路樹では、根元の土が踏み固められるのですが、すると、通気性や透水性が低くなって、土の中の環境が悪化します。そんなときは表土を柔らかくほぐしてあげると、木は元気を取り戻してくれます。

私は恩師から「とにかく地を這いつくばって生きるんだ。上を向いてばかりでは木の状態がわからない、胸を張ってはいけないよ」と教わりましたが、根や土を診ている日々を考えると、本当にその通りだなと思います。

樹木医が見る美しい桜のポイントはココ!

▲山梨県北杜市にある「山高神代桜」(写真提供:北杜市観光協会)

—桜を見るときに、樹木医としてはどんな視点で見ていますか

やっぱりその木の健康が気になってしまいます(笑)。桜は花の咲き方から状態がよくわかるんです。元気な桜の木は、全体に満遍なく花が咲きます。幹から立派な枝が四方に張り、さらにその先に小枝が伸びて、均等な間隔で芽吹く。

ですが栄養が行き渡っていない木は咲き方に偏りが出ます。枝の先にちょこっと、花が集まったように咲いている様子を見たことはありませんか? それを見て、まるで鞠みたいでかわいいと話す人もいますが、健康な咲き方ではないので、樹木医としてはそういう言葉を聞くと、複雑な気持ちになりますね。できたら一部を見るのではなくて、木の全体を見て桜の健康的な美しさを感じていただけると嬉しいです。

▲桜の花は、均等な間隔で芽吹いているのが健康的な咲き方

—ご自身が関わった桜のなかで印象的な桜の木について教えてください

山梨県北杜市にある「山高神代桜」が忘れられません。日本一古いエドヒガンザクラで非常に大きく立派、古い枝を支える支柱が何本も建っています。数年で枯れると懸念されるほど弱っていたのですが、土の入れ替えや、半径15メートル以内の立ち入り禁止柵で元気が戻ったんです。7年くらい継続して診続けて、今でも年に5から6回は行きますよ。

最初は調査をして、次に回復方法を提案して、どのような工事で治療をするかの設計書を委員会に渡すという過程を経るのですが、大きな仕事だけあって工事にかかる予算管理などの調整がたいへん(笑)。業務の7割がデスクワークで、その分、実地で木が見られる日が嬉しかったですね。

木の枝は古いと垂れるのでつっかえ棒を立てて支えますが、それでは支えている部分が痛みます。そこで思い切って、上から縄で枝を吊る方式を提案して実現にこぎつけました。樹木医の仕事は、小さなところにこだわる細やかさと、豊かで大胆な発想の2つを同時に意識することが大事で、この仕事を通してそれをまさに実感しました。

女性の志願者も増え、注目を集める『樹木医』。樹木医になるには?

—ありがとうございます、最後にこんな質問で恐縮ですが、私(34)のようなものでも、樹木医を目指せますか?

もちろん目指せます。昔は植木屋さんに弟子入りしたり、私みたいに会社勤めをしながら公園や山に入って独学をしたりするしかありませんでした。それはそれで貴重な経験でしたが、今は樹木医制度が整備されています。

なり方は2種類あって、1つは大学で勉強をして樹木医補の認定を受けてから、社会で1年の実務経験をすること。もうひとつは7年の実務経験をすること。このどちらかを満たせば、樹木医になるための試験が受けられます。年齢制限は特に無く、80歳の方が樹木医になった話を聞いたことがありますよ。

私は学生に向けてお話をする機会もありますが、昔と違って樹木医を目指す女子学生が増えています。これからどんどん、女性樹木医が増えてくるのではないでしょうか。環境問題に加えて、街路樹を植えたら植えっぱなしでよいのかという、社会インフラの再整備が注目されるなかで、樹木医が必要とされるケースが増えてくると思いますので、人気の高まりもよいことだと思います。


(プロフィール)

樹木医 和田博幸

1961年群馬県生まれ。東京農業大学卒業後、財団法人日本花の会の職員となり、現在は主任研究員に。2000年に樹木医の認定を受け、国指定天然記念物の山高神代桜などの調査や樹勢回復に当たる。樹木医として自治体からの街路樹や名木の診断依頼を受ける傍ら、まちづくり計画への参加や住民指導など、人と樹木の共生のために精力的に活動している。

文:本山光

編集:大山勇一(アーク・コミュニケーションズ

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