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大注目のSF作家・宮内悠介は「音楽」をどう「文章」に変換したか

大注目のSF作家・宮内悠介は「音楽」をどう「文章」に変換したか

 デビュー作『盤上の夜』がいきなり直木賞候補に、そして『ヨハネスブルグの天使たち』、『エクソダス症候群』と立て続けに話題作を発表し、今もっとも注目すべき作家の一人である宮内悠介氏。

 その宮内氏が新作『アメリカ最後の実験』(新潮社刊)でテーマにしたのは「音楽」だ。
単身アメリカに乗り込み、超難関音楽学校の入試に挑む日本人ピアニスト・脩はライバルとなる受験生とその才能を競い合い、選考を勝ち進む。しかし、そこで予期せぬ殺人事件が起こり、それは奇妙な形で連鎖していく。
 
 謎の楽器「パンドラ」とは?そしてタイトルにもなっている「アメリカ最後の実験」という言葉の持つ意味は?
今回は宮内氏ご本人が登場し、この物語の成り立ちを語ってくれた。

――『アメリカ最後の実験』は冒険小説、あるいは青春小説であると同時に、音楽好きにとっては知的好奇心を刺激される「音楽小説」でもあります。まずはこの作品の最初のアイデアがどんなものだったのかというところからお聞かせ願えますか?

宮内:最初のアイデアは作中に出てくる「パンドラ」で、鍵盤楽器であるにもかかわらず、ジャズでいうところの「ブルーノート」という微妙な音程が出せる楽器です。

学生時代に読んだ花村萬月さんの『ブルース』という小説に「ピアノにはブルーノートが出せない」というような台詞が出てきたのですが、鍵盤楽器が大好きな私はそれを見て「なにくそ!」と思いまして、当時から勉強していたプログラミングを使ってブルーノートを出せるピアノを作ろうと考えた結果出てきたのが「パンドラ」でした。その後、プログラマーになってからは、実際に制作しようと企画したこともあります。

――この「パンドラ」のアイデアから、どのように物語を書き進めていったのでしょうか。

宮内:実はこの小説は原型のようなものがありまして、十年近く前に書いた600枚くらいの原稿がそれにあたります。ただ、そのときは書きたいことが多すぎて「長編のなりそこね」の状態になってしまいました。

それを書いている時、「パンドラ」のアイデアをどう生かしていこうか、というところで、難関音楽学校の受験で志望者同士が音楽バトルを行うということを考えました。

今回、それを再構成するにあたって、ある程度ハリウッド的な構成だとか、ほかにも「少年ジャンプ」の「ジャンプシステム」を意識しつつ――私はアメリカ人ではありませんので――連載ですから一話一話に「引き」を作ってキャラを立てて、ということを考えながら書いていきました。だから、これまでの私の本の中では一番読みやすいのではないかと思います。

――「音楽バトル」をメインとしながらもいくつかの物語が平行したり、絡み合ったりしながら進んでいきます。書くにあたって注意したことや「これはやらないようにしよう」と思っていたことはありますか?

宮内:私個人がやっかいな読者でして、あまり前衛的だと引いてしまうし、かといって紋切り型だと楽しめないんです。ですから、同じような性格の方に届けば嬉しいと思いながら書きました。
少しずつ斜め上に展開していくようなイメージで話を進めていきました。

――舞台をアメリカにしたのには、やはり宮内さんご自身のご経験が関係しているのでしょうか。

宮内:そうです。私が初めて踏んだ海外の土地がアメリカでして。4歳のころに家族でアメリカに移住したのですが、最初に降り立ったのが西海岸で、親の知人の家にしばらく居候してから東海岸へ移りました。

そんなわけでアメリカの西海岸が自分の中に原風景としてあるのに加えて、「実験国家」というアメリカの性質も頭にありました。アメリカが実験を繰り返してここまできた国だとすると、「最後の実験」は何だろうという問いが作中で示されます。そして、それと関連してアメリカのある町が「音楽の死んだ町」として出てくる。

――「音楽が死んだ町」はおもしろい設定でした。確かに生活の場の中ではどこでも何かしらの音楽が鳴っています。

宮内:ええ、私にとって今回の「音楽の死んだ街」は、きわめて実験的な、アメリカ的な街であるのです。アメリカは人類の最先端を行くような国であるのと同時に、人類にとっての課題が凝縮している国でもあります。それもあって舞台はアメリカがベストだと考えた次第です。

――そのアメリカに単身乗り込んで、超難関の「グレッグ音楽院」の入試に挑む主人公の脩は自信家であると同時に、音楽をゲームとして捉えるニヒルな一面もあります。彼のキャラクターと宮内さんご本人との関係について教えていただけますか。

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