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誰の暴行が死因かわからないときは、誰が責任を負う?~同時傷害の特例

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 2013年11月に名古屋市において、飲食店の従業員ら3人から別々に暴行を受けて男性が死亡するという事件が発生しました。被告のうち2人は共謀して被害者の顔面や腹部を殴ったり蹴ったりする暴行を加え、さらにもう一人の被告が40分後に被害者の顔面を蹴るなどの暴行を行ったことが認められました。
 検察官は刑法207条の「同時傷害の特例」の適用を主張し、被告らは、暴行の事実は認めていましたが、被害者の死因との因果関係は不明であるとして、争っていました。
 1審判決では、被告人の1人からの暴行によって被害者が死亡したことを認定して、特例を適用せず、1人が傷害致死となり、2人が傷害罪となりました。
 2審判決では、1審の事実認定に誤りがあると指摘して、審理を尽くすために差し戻し、その上で特例の適用についても検討するように求めていました。
 裁判員裁判の一審判決が破棄されたものとして話題となっていた裁判です。この裁判について、2016年3月24日に最高裁の判断が示されましたので、見てみたいと思います。

 この「同時傷害の特例」とはどういうものなのでしょうか?
 刑法207条は「二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。」と定めています。
 この規定は、「疑わしきは被告人の利益に」の例外を定めるものですが、同時犯としての暴行において、発生した傷害の原因となった行為を特定することが困難な場合があり、その困難性ゆえに暴行を加えた者の誰にも責任を負わせられないというのはあまりにも不合理だということから、政策的に設けられたと言われています。

 本条が適用されるためには、

(1)2人以上のものが同一機会に同一人に対して暴行を加えたこと
(2)暴行をしている者の間で意思の連絡がなかったこと
(3)傷害の原因となった暴行を加えたものを特定できないこと
という要件をみたす必要があります。
 要件の中でも問題として争われることが多いのが、(1)の「同一機会」です。

 最初の暴行と次の暴行との間に40分の開きがあり、後の暴行が別の原因から発生した等の事情が認められたケースでは「同一の機会」とは認められませんでした(札幌高判昭和45年7月14日)。
 他方で、最初の暴行と次の暴行との間に1時間20分、場所として20キロメートルの隔たりが合ったケースでは、暴行を加えたものが同じ職場の者であり、暴行を加える動機も同一であるとして、同一の機会に行われた一連の行為として認めて、本条を適用しています(東京高判平成20年9月8日)。
 また、傷害致死へこの特例を適用することの可否についても争いがありますが、過去の判例では適用が肯定されています。

 今回のケースにおいては、「同じ機会に暴行したならば、自分の行為が原因ではないと証明できない加害者は責任を負う」との判断を示し、被告側の上告を棄却しました。
 1審判決を破棄し、審理を差し戻した2審の高裁判決が確定することとなり、再度1審から審理がやり直されることになります。

元記事

誰の暴行が死因かわからないときは、誰が責任を負う?~同時傷害の特例

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