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 ある労働事件があった。
 関東の某県にあり大型トラックが出入りするその会社は、かなりの広さを持った道路に面していた。接道幅は15メートルほどもあっただろうか。一番奥に事務所などがあり、手前にトラックが並んでいる。
 ところが、夜間になっても、入り口には鎖が一本張られるだけで、それ以上に扉があるわけではなかった。

 そのような会社で労働紛争が発生した。いつものことながら、外部ユニオンの介入であった。当初は会社側の団交拒否から始まり、泥沼化した争いとなっていったものの、団交は開始されていた。
 その最中のことである。先に書いたように、夜間でも鎖が張られているだけであるから、会社内に入ろうと思えば、難なく入ることができる状態であった。

 そのような状態であったからだと思うが、ユニオンが夜中に会社敷地内に入り(もちろん会社の許諾はない)、敷地内の壁に張り紙をし、さらにユニオンの旗まで立てた。
 すぐに撤去するように申し入れたのであるが、ユニオン側はうだうだと言うだけで応じないし、会社がこちらの要求を受け入れれば撤去すると、まったく無関係のことを持ち出してくる始末であった。

 やむなく、司法の場で決着をつけることとした。某県の地方裁判所に所有権に基づく妨害排除を理由として、撤去の申立をすることを検討したが、会社の意向で、つまりユニオンを信用していない会社としては、今後も同様の行為が繰り返されるのではないかとの思いから、会社内にユニオンが立ち入ることを禁止する仮処分の申立をなすこととした。

 どう考えても、会社側が有利であると思ったのだが、裁判所から和解案が提示されて驚いた。
 もちろん、会社の許諾なくユニオンが立ち入ることはしないとの条項はあったし、これに違約した場合には、一度につき金○○円を支払うとの条項もあった。これらはいい。
 ところが、和解条項案の第1条に、「会社側はユニオンとの間で誠実に団交をしなければならない」との文言があった。内容的には、もちろん受諾してもいいのだが、不法な立入りを禁止してもらいたいとの仮処分であるにもかかわらず、それとまったく関係のない条項がなぜ第1条にあるのかが不思議であった。しかも、団交には応じていたのだから。

 その点を裁判所に訴えても、いいではないかというばかりであった。やむなく受諾したが、この裁判所は労働者側に立っているとしか思えなかった。
 後日他の弁護士に聞きまわったところ、そのような裁判官であると知ったが、どうかと思う。

 中立公平を標榜しながらも、実体はそうでもないと思われる機関として、労働委員会もそうだと思う。労働者を代表する労働委員、使用者を代表する使用者委員、公益を代表する公益委員で構成されている組織である。
 しかし、労働者委員は声も大きくいろいろな発言をするものの、使用者委員はおとなしく、こういっては何だがほとんど頼りにならない。控室でも「大変ですね」というだけで、こちらが疑問や意見を述べても、まともな答えが返ってこない。

 労働委員会での会社側勝訴率は、労働者の勝訴率をはるかに下回っているとの統計が出ている。普通であれば5分5分であるか、さほどに差異はないはずであるが、そのような統計が出ていること自体、労働委員会の異常さを示すものであろう。

 ある文献では、「はっきり申し上げると、労働委員会による紛争解決は、労働者優位の制度及び運用がなされているともいえます」とあるほどだ。
 なんだか、かつての経営者は搾取し、労働者は搾取されているとの図式から抜け出せないでいるのだろうか。
 無意識のうちであっても、そのような図式が染み込んでしまっているとしたら、時代錯誤も甚だしいとしかいいようがない。

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