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元ロッテ矢地健人「毎日練習できることが本当に楽しい」

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 ファンの視線とメディアの注目を浴びる華やかなプロ野球開幕の影で、あの晴れ舞台にもう一度立つことを願いながら、人知れず汗を流す男たちがいる。毎シーズンオフ、NPBは12球団合同のトライアウトを行なっている。

 昨年11月の受験者は47人(投手33人、野手14人)。しかし、再びNPBのユニフォームに袖を通したのは愛媛・済美高でスラッガーとして鳴らした鵜久森淳志(日本ハム→ヤクルト)らわずか6人だけだった。

 だが、トライアウトでは独立リーグや社会人から声が掛かることもある。今年は4人が独立リーグ、6人が社会人に活路を見出した。

 その1人、投手の矢地健人(28・ロッテ→新日鉄住金東海REX)に話を聞いた。練習後のグラウンドには、マウンドに丁寧にトンボをかける矢地の姿があった。

「プロの時はグラウンドの整備なんてしませんでしたから、学生時代に戻ったようです。クリーニング業者任せだったユニフォームの洗濯も、今は社宅に持ち帰って妻がやってくれる。初心にかえって家族、周囲の方々に感謝しながら毎日練習できることが本当に楽しい」(矢地、以下「」内同)

 2009年、矢地は育成選手ドラフト1位で中日に入団。高岡法科大学4年時の北陸大学野球リーグでは防御率0.69で春季優勝に貢献するなど評価は高かった。入団1年目の4月に早くも支配下選手登録へ移行。球団史上初の快挙だった。

 しかしそこからは苦難の日々が続く。2014年4月に結婚、オフに結婚式を挙げる予定だったが、戦力外通告を突きつけられた。式は延期となり、第一子の誕生(翔稀君=11月21日生まれ)を待ちながら、合同トライアウトに参加した。

 ここでスカウトの目に留まり、ロッテ移籍が決まったが、翌2015年オフに再び戦力外通告。

 そして2年連続となった合同トライアウトで、新日鉄住金東海REXへの入団が決まる。現在、正社員として名古屋製鉄所内の品質管理関連部署に勤務する。この間に長男は1歳4か月に成長した。

「昨年の12月にようやく結婚式を挙げることができました。中日をクビになった時は、まだ子供は妻のお腹の中にいた。妻から“この子にユニフォーム姿を見せてやって”といわれて……。それがトライアウトの原動力になった」

 活躍の場を社会人に移したことを「都落ち」と揶揄する外野の声が気にならないわけではない。しかし社会人野球を“格下”とは見ていない。

「チーム一丸で全国大会を目指しています。トーナメントの一発勝負は、ある意味プロより過酷。個人成績よりもチームの勝利が絶対ですから。先発、中継ぎ、抑えと“すべての局面で登板してもらう”といわれていますし、もちろんどんな起用にも全力で臨みます。

 僕の原点は、子供の頃の親父とのキャッチボール。だから1歳の息子がキャッチボールできるようになるまで絶対にユニフォームを着る」

撮影■杉原照夫

※週刊ポスト2016年4月8日号

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