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気づかいに気付いていますか?存在を承認する「ありがとう」の力

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【それが気づかいだとしたら…】

書きたくもない日記を書かされる。
やりたくもない計算問題をやらされる。
記憶力を試すような質問に答えさせられる。

「こんなことをさせられて…
わたしは認知症だとでもいうのかい?」
と文句を言わずに取り組む。

これが気づかいだとしたら、わたしは頭が上がらない。

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「足りない力」ばかりに注目しない

介護の仕事をしていると、利用者に「認知症」があると聞くと、どのような介助が必要なのかを見極めるために、「○○はできるか」「○○はわかるか」といった『足りない力』に目を向けます。「トイレは自分でいけるか?」「薬の飲み忘れはないか?」「つじつまの合わない会話になっていないか?」といったことです。

そうした確認は必要なのですが、『足りない力』にばかり注目していると、その人の個性を見落としてしまいがちです。人生の中で培ってきた知識や経験は、なにものにも代えがたい財産=個性ですから、そこに注目することが大切なのです。

そもそも、わたしたちが自己紹介をする時のことを思い出してみてください。

わたしの名前は○○です。高血圧があります。数学は得意じゃなくて、英語も喋られません。

なんて言わないでしょう?

わたしの名前は○○です。介護の仕事一筋18年です。利用者さんの笑顔を見ると元気が出ます。休みの日には家族でドライブに出かけます

ということを通して、自分が何者で、どんなことに重きを置いているかが伝わると思いませんか?

「他人を気づかう力」に注目してみる

わたしたちが支援している方々は、それぞれに相応の人生経験をお持ちの方々です。特に年配の方々と関わっていて思うのは、非常に「調和を大切にされる」ということです。

わたしたちが善かれと思って提案していることも、本当は「面倒だな」「嫌だな」「なんでこんなことさせられるの?」という思いを持っているかもしれません。そう、どれだけ笑顔で取り組んでいても、です。

もちろん、心の底から主体的に楽しんでいる方もいらっしゃると思いますが、それが「気づかい」かもしれないという考えを、自分の中にもちあわせていると、また違った見え方がしてくるんじゃないかと思うのです。
会釈をされたら、その人のことを知らなくても会釈を返す
隣の人がイスに座ろうとしたら、ちょっとスペースをあけてくれる
ティッシュに手が届かない人がいたら、そっと箱を手元に寄せてあげる
飲み終えた湯飲み茶碗をとりやすいように集めてくれる

端々に見える周りの人に対する気づかいに、気付きやすくなるとしたら、きっとわたしたちは自然と「ありがとう」を伝えられるのではないでしょうか?

自分の存在を承認されないことがBPSD(周辺症状)を引き起こす

「ありがとう」という感謝の言葉は、相手の存在を承認する言葉の一つです。他にも、「○○さん」と名前を呼ぶことも、「おはようございます」と挨拶をすることも、相手の存在に向けられた承認の言葉です。そして、この承認の言葉が不足することが、症状を引き起こす要因の一つであることはあまり知られていません。

想像してみてください。あなたが職場の仲間から、「○○さん、おはようございます」と挨拶もされず、職場の仲間のために行った行為に「ありがとう」と感謝されない状況で、あなたは職場の仲間を仲間と思えるでしょうか? 仲間と思えないどころか、場合によっては敵に思えてくるかもしれません。そのような敵意が、症状を引き起こすきっかけになっていても不思議はないでしょう。

さいごに

わたしは、利用者に「ありがとう」と言える機会を見いだすように職員にオススメしています。それにより、相手に意識を向けたコミュニケーションがおきやすくなり、『足りない力』だけでなく、その人が持っている個性にも自然と意識がむくようになるからです。

少なくとも1日1回は、わたしたちから利用者に「ありがとう」と感謝の気持ちが伝えられる介護者でありたいですね。

この記事を書いた人

裵 鎬洙

アプロクリエイト代表
認知症介護コーチ&講師
コミュニケーショントレーニングネットワーク講師
介護支援専門員実務研修講師
介護支援専門員専門研修講師
介護職員初任者研修講師

【略歴】
 関西学院大学卒業後、訪問入浴介護サービスを手がける民間会社に入社。その
後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなどで相談業務に従事。コミュ
ニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にてコーチング/コミュニケー
ションのトレーニングに参加し、専門職のあり方が利用者にどれほど影響するか
を実感。
 現場での臨機応変な対応につながるコミュニケーションセンスやケアの観点を
一人でも多くの人に届けるべく、研修・セッション・執筆等を行っている。介護
福祉士・介護支援専門員・主任介護支援専門員。

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