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春の鉄道ダイヤ改正 「名松線」はなぜ復活できたのか

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 春は出会いと別れの季節。鉄道にも華々しく開業する路線がある一方、ラストランが話題になり別れを惜しむものもあります。華やかな話題いっぱいのなか、三重県を走る「名松線」が3月26日に2009年以来の全面復旧を果たします。『封印された鉄道秘史』などの著書があるライターの小川裕夫さんが、決して利用者が多いといえない名松線はなぜ復活できたのか、福島県の只見線は復活できるのかについてリポートします。

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 2016年3月26日、JR各社のダイヤ改正が実施される。今回のダイヤ改正の目玉は、何と言っても北海道新幹線の一部開業だろう。

 昨年、北陸新幹線が金沢駅まで延伸し、金沢は観光需要が増大。テレビや雑誌などでも話題を振りまいた。今回の北海道新幹線開業でも、函館などへの観光客増加が期待されている。

 北海道新幹線が開業の祝賀ムードに包まれる中、今回のダイヤ改正でもうひとつ注目したい動きがある。それが、三重県を走る名松線が約6年半ぶりに全線復旧を果たすことだ。

 名松線と耳にしても三重県に縁がない人たちにとってはピンとこない。名松線は三重県松阪市の松阪駅と三重県津市の伊勢奥津駅とを結ぶ約43.5キロメートルの路線で、三重県“名”張市と“松”阪市とを結ぶために計画されたことから名松線と名づけられた。しかし、名松線は名張まで路線を延ばせずに現在に至っている。

 その名松線は、2009年の台風で線路などが被災。松阪駅-家城駅間はすぐに復旧を果たしたが、家城駅-伊勢奥津駅間は被害が甚大だったこともあって、同区間はバスによる代替運行に切り替えられた。

 もともと、名松線は1日に250人程度の利用者しかいない。沿線の過疎化が進み、マイカーが普及した現在では、名松線の利用者が増える見込みは薄い。全線を復旧させても赤字が増えるだけだ。それゆえに、名松線はそのまま廃線になってバスに転換されるとの予測も流れた。

 しかし、三重県や津市は鉄道での復旧にこだわった。自治体が土砂撤去や盛土、線路・電気設備などの費用4.6億円を負担。こうして、名松線は蘇ったのだ。

「JR東海でも、当初、鉄道の安全を確保する前提となる治山治水対策は難しいのではないかという認識に基づき、バスへ移行することが最良と考えて提案をしました。その後、自治体との話し合いで、復旧の前提となる治山事業、水路整備事業とその維持管理を自治体側で実施していただけることになり、2011年5月に三重県・津市および当社の3者で鉄道の運行再開等に関する協定を締結し、復旧することになったのです」(JR東海広報部)

 三重県や津市の熱意がJR東海を動かし、名松線を復活させた。JR東海は地元の熱意に応えるべく、全線が復活する3月16日にはヘッドマークをとりつけた記念列車を運行する。

 赤字路線の維持・復活に、自治体の熱意は欠かせない。例えば、名松線と同様に福島県の只見線は2011年に豪雨災害で橋脚や線路が流失。現在も会津川口駅-只見駅間が不通になっている。

 只見線は福島県会津若松市の会津若松駅と新潟県魚沼市の小出駅を結ぶローカル線で、1日の平均利用者数は約320人程度。利用者数は名松線よりも多ものの、仮に全線が復旧しても赤字路線であることは変わらず、赤字額は増え続ける。

 それでも、福島県や沿線の市町村、東邦銀行など福島県を地盤にする企業などは只見線の全線復旧を諦めない。福島県の担当者は、こう話す。

「只見線の全線復旧は福島県と17市町村が一丸になって、2016年3月末までに21億円を超える寄付金を集めました。利用者数だけを見れば、只見線は赤字路線で、今後も黒字転換するのは難しい。それでも、只見線は福島県にとってなくてはならない路線だと考えているからです。行政ばかりではなく、そうした思いは地元の企業や市民の人たちにも少なからずあります。だから、多額の寄付金が集まったと考えています。この寄付金を元にして、JR東日本に復旧を働きかけていきます」(福島県生活交通課)

  福島県民の只見線への思いは、集まった寄付金の額からも伝わるが、他方でJR東日本の反応は思わしくない。

「只見線の全線復旧については、福島県が検討委員会を設置すると聞いています。弊社はオブザーバーとして検討委員会に参加する予定ですが、復旧の可否についてはJR東日本からは何も申し上げられません。ただ、利用実績から見るに、バス代替で十分に対応できるのではないかと考えています」(JR東日本広報部)

 実はJR東日本管内では、2010年に豪雨災害で全線が不通に追い込まれた岩泉線という路線があった。岩手県の山間地を走っていた岩泉線は復旧を模索したものの、2014年に復旧を断念。あえなく廃線に追い込まれた。奇しくも、ほぼ時を同じくして東日本大震災で被災した三陸鉄道が全線復旧を遂げたのにも関わらず、だ。

 超がつくほど赤字路線と言われながらも全線が復活する名松線は幸運な事例と言っていいが、名松線が今後も生き長らえるかどうかは誰にもわからない。

「利用者を増やすためには、名松線に乗ってこの地を訪れたいと思えるような観光資源の発掘など、地域の魅力を高めていただくことが重要であると考えています。自治体をはじめとした地域の取り組みに期待しています。弊社としても可能なかぎり協力をしていくつもりです」(JR東海広報部)

 3月26日、鉄道ニュースは北海道新幹線一色に染まるだろう。鉄道業界・関係者にとっても喜ばしいことだが、ひっそりと日常生活を支えるローカル線にも思いを馳せてほしい。

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