ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

第51回 面白い規則集(その4)

DATE:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫
第51回 面白い規則集(その4)

 拘置所の規則の中にはよく理解できない規則もある。
 「遵守事項」中に、「30.交談等」がある。そして、「所内生活の心得」で、交談とは「他の被収容者と話をすること」と定義されている。
 この「30.交談等」の(1)に「交談を禁止するとき」として、就寝時間中・個別運動中等々があげられている。この規定によれば、昼間に居室にいるときには交談してもよいとしか解釈できない(雑居でのことだが)。

 ところが、その(2)で「交談を禁止する場所」として居室・廊下・運動場等々ありとあらゆる場所がもれなく記載されている。
 つまり、場面的には交談が許さる場合がありそうであるが(居室にいて就寝時間外という場面)、場所的には全面禁止であるから(居室も不可)、(1)は何の意味もない規定であり、端的に「交談は一切禁止する」とでも規定すれば足りるのである。

 この規定は所内の静けさからして「概ね」守られているようである。小声で話をしているのかもしれない。
 もっとも、食事時は、雑居から時々大声での会話や笑い声が聞こえてくる。刑務官が「静かにしろ」とか「声が大きい」と注意しているところからすれば、運用上は全面的禁止ではなく小声なら構わないということだろう。
 そもそも、雑居に幾人かが一つ部屋の中にいて何の会話もないということ自体が不気味なことである。

 ところがである。独居の1階と2階に分かれて外国人が収容されていた。
 ロシア語はほとんど知らないが、聞いた感じではロシア語での会話のようである。会話?と不思議に思うかもしれない。1階と2階で、大声で会話をしているのである。
 共犯関係にある者だと推測されるし、当然接見禁止が付いているだろうから、そのような会話は厳禁である。しかし、毎日大声で会話をしているのだ。
 ところが、刑務官は何の注意もしない。少なくとも、私がいた間に刑務官が注意をしたことはなかった。非常に不思議であった。

 もっとも、私も二度目の拘置所生活の際には、かなり会話をした。前に書いた死刑判決で上告中の人とである。大体が入浴上がりのときである。
 1階別棟のユニットバス3部屋には、その人と、もう一人と私3人で行くことになっていた。私は、15分の入浴時間に若干余裕を持たせて出ることにしていたが、上告中の人もそうであった。加えて、いつも一緒のもう一人が、15分を超過することがしばしばあるのである。

 私と上告中の人とは、彼が出てくるまで廊下まで待っているのだが、その待ち時間に会話をしていた。前に書いたが、再審の弁護人をしてくれだとか、おせち料理を一緒に食べようとかの話をしていた(一緒に食べるといっても、拘置所で部屋が近いから一緒にというにすぎないことはもちろんである)。
 近くに刑務官もいるのだが、特に何の注意もされなかった。拘置所はわりと緩やかということなのだろう。

 他にゆっくり会話ができる機会は、裁判所へ行く際の車の中である。
 どういうわけか、私は一人での押送が多かった。付き添いの刑務官はいつも同じ人で、その人と、車中で、裁判所に到着するまでの間、また帰り着くまでの間、他愛のない話をするのが常であった。

 この人も含め、幾人かの刑務官は、私の事件について、一度目も二度目も、「普通に考えたらあり得ない話ですね」と、かなり同情してくれていて、普段の時も、見回りの最中に、私の部屋の前で止まっては、何か不自由なこととかないかと聞いてくれて、うれしい思いをした。
 心底がどうかは別として、私の無実を思ってくれることは、そのときの私には、何よりのものであった。(つづく)

元記事

第51回 面白い規則集(その4)

関連情報

無許可で「民泊」は違法?(今週の話題 ~法律はこう斬る!)
労働問題パート2(想うままに ー弁護士日誌から)
外国人事件パート3(想うままに ー弁護士日誌から)

法、納得!どっとこむの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。