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橋爪功 「僕の場合は生きていること自体がサービス精神」

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 文学座出身の橋爪功は、同期に比べて売れる役者になるまでに時間がかかった。若い頃は売れることはあきらめていたという橋爪が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

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 橋爪功の文学座研究所同期には岸田森、寺田農、樹木希林ら、錚々たる名優が揃っていた。

「最初に売れたのは寺田農かな。あいつは細いし、タイのキックボクサーみたいな柄だし、これは売れるなと思いました。希林は頭が良くて『こいつはすげえ』と思ったりしましたね。それだけに、『俺は時間かかるぞ』と思いました。なかなか評価してもらえないだろうという自覚がありましたね。若い頃は売れることは諦めていて、そういうことを考えるのを忘れていました。

 ただ、マスコミに名が売れないと食えないじゃないですか。それで三十代の後半くらいからテレビドラマに小出しで仕事をいただくようになって。その頃は変な役ばかりやっていたから、演じていて一番面白かった。

 それで段々と自分の所にその役が来た理由が読めるようになりました。仕事くれた人たちの『この役は橋爪にやらせておけば間違いないだろう』という狙い通りにやっていれば、さほど外れはないかな。

 売れてはなくても、俳優としての自信はなんとなくあったような気がします。それに、『どうせ、これをずっとやっていくんだろうな』と思ってたから。ですから、『売れる』という意識よりは、『小商いを積み重ねていけばなんとかなるだろうな』って。

 そんなこと言ってはいるけど不安といえば不安だったね。もうちょっと売れないかなと思った時期もあった。『あいつが売れてるなら、俺が売れねえわけがねえだろう』と。それだけ芝居への自負心はあったから」

 情緒あふれる口跡を利かせたテレビ時代劇『剣客商売』(1998年、フジテレビ)をはじめとするドラマのナレーションや朗読劇など、声の仕事でも橋爪は確かな実績を残してきた。

「ナレーションは、役を演じるのと違う角度でドラマの中に入っていけるから楽しいですね。演出家に『今度はこんな感じで』と言われたのを自分の中でアレンジしています。できるだけ、物語の枠の外に自分の声が存在するように心がけています。だから、ナレーションだけ読んでも筋がなんとなく分かってくるというか、『この文章は物語の大体この辺だな』というのを考えながら読むという楽しみもある。

 最近は朗読に凝っています。朗読は、いろんな役を全部自分でやれるというのが面白い。

 声の出し方は、役を演じる時も普段でも、サービス精神で考えています。相手の目とか表情を見ながら、自分の出す声のバランスをとるというのがミソで。

 僕の場合、生きていること自体がサービス精神ですよ。楽しんでほしい。まあ、単に笑いがほしい、ウケたいというだけなんですが。相手の弱点を突くのも得意で、貶めてでもウケたいからカミさんには『あなたは酷い。それはサービス精神なんかじゃない』と言われますけどね。

 杉村春子さんは笑われるのが好きじゃなかった。高校生を客にして芝居した時に客席があまりに笑うものだから舞台を止めたこともあって。逆に芥川比呂志さんは笑われるのが好きで、脇役でも、いちびり(*関西弁で「出しゃばり」「お調子者」の意味)。目立っていた。そこも師匠譲りかもね」

撮影■藤岡雅樹

※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号

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