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GPS捜査とマスコミ報道

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GPS捜査とマスコミ報道

 前にGPS捜査について書いたが、3月2日に大阪高等裁判所の判断が出された。
 もともと、私は、マスコミ報道をあまり信用していないのであるが、この大阪高等裁判所の判断に対するマスコミ報道はあまりにもひどく、またあまりにも不勉強としかいいようがない。

 私の知る限り、大阪高裁は、GPS捜査について、「被告らの行動確認のため、尾行や張り込みだけでなくGPS端末を使って車の位置を探索する必要性があった。GPS端末を使った捜査が強制捜査にあたるという司法判断が示されたり、定着したりしていたわけではなかったことも考えると、捜査に重大な違法があったとはいえない。」としているようである。

 これに対するマスコミ報道の見出しは、「違法性否定」(読売2日夕刊)、「違法といえず」(東京2日夕刊)、「違法性認めず」(産経3日朝刊)というミスリードに始まり、毎日新聞2日の夕刊に至っては「適法」としている。どこをどう読んだら「適法」という見出しをつけることができるのだろうか。
 これらの中にあって、朝日3日朝刊は「重大な違法否定」としている。あの朝日が正確妥当な見出しをつけたことには驚いたが。

 この刑事裁判で問題となっているのは、GPS捜査で収集した位置情報を出力し書面化したその書面に証拠能力があるか、つまり検察側申請の証拠として許容されるかどうかであった。
 そして、この問題について、一審の大阪地裁は、証拠として許容しないとの判断を示したのであるが、大阪高裁が逆転して証拠として許容したのである。

 さて、証拠として許容されるかどうかについては、最高裁の判例があり、「令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の観点から相当であると認められる場合においては、その証拠能力は否定される。」としている。

 つまり、捜査機関が入手した証拠は、入手方法が適法であれば証拠としても許容され、入手方法が違法であっても、重大な違法でなければ同様に証拠として許容され、重大な違法のあった場合にのみ証拠として許容されないのである。
 そして、大阪高裁は、証拠としての許容性を最高裁判例にしたがって検討した結果、「重大な違法」はないとしたのである。
 さらに、「GPS端末を使った捜査が強制捜査にあたるという司法判断が示されたり、定着したりしていたわけではなかったことも考えると」との文脈からすると、捜査機関に違法捜査をなす認識がなかった、令状主義の精神を没却させる意図はなかったと判断したものと思われる。

 ここまで説明をすると、賢明な読者には理解できるであろう。大阪高裁は、何もGPS捜査を「違法ではない」とも、ましてや「適法」であるなどとは言及していないのである。
 むしろ、「重大な違法ではない」との言い回しからすれば、捜査としては違法ではあるが、証拠として排除されるほどの重大な違法ではないと考えていると読むのが素直である。
 それを「違法といえず」とか「適法」であると見出しをつけるマスコミ報道の見識を疑う。マスコミは猛省しかつ少しは勉強すべきであると思う。

 ちなみに、違法であっても何故に証拠として認められてしまうのかという疑問があるかとは思う。
 これは、例えば、緊急逮捕すべきところを現行犯逮捕したというように(その両者の区別には曖昧なところがあり警察が理知的に判断できない場合もある)、選択すべき逮捕を誤った場合まで、それが違法であるとして、その後に収集された証拠について、証拠能力を認めないことは、刑事訴訟法の一方の要求である「実体的真実発見」をあまりにも無視してしまう結果になるからである。
 この意味で、先にあげた最高裁判例はきわめて妥当なものなのである。

元記事

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