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【連載:映画で分かる女の本音】~愛する人をどこまで受け入れられるか〜『リリーのすべて』

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好きな人に嫌われたくないという不安から言いたいことが言えない、言いかけた告白を吞み込んで胸の奥に仕舞ってしまう──自分の心のなかで拮抗する感覚って、とても苦しいものです。

これを言ったら相手は傷つくだろうか? 言わずにいたらもっと傷つくだろうか? 言うべきこと、吞み込むべきことの境界線はとても曖昧で難しい。

以前、何かの本に「何でも言い合える仲はたしかに理想だけれど、何でもかんでも吐き出すのはただの愚痴。本当に言うべきこと、相手に必要なことを言ってあげられること、それが真の愛情」というようなことが書いてあり、その通りだと思いました。

また、ものすごく愛しているけれど、あまりにも突飛な告白をされたら、受け止めきれないほどの大きな問題だとしたら、どうしますか?

 

今回ピックアップした『リリーのすべて』は画家同士のおしどり夫婦に訪れる大きな変化を描いた、実話をもとにした感動作です。

風景画家のアイナー(エディ・レッドメイン)は肖像画家のゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)と公私ともに充実した日々を送っていましたが、ある日ゲルダに頼まれて女性モデルの代役をつとめたことをきっかけに自分のなかに潜んでいた“女性”が目覚めてしまいます。

一度、気づいてしまった気持ちに歯止めはきかず、最終的にはアイナーとしてではなくリリー(彼の女性としての名前)として生きていきたいと告白。

今から80年以上も前に世界で初めて性別適合手術を受けるわけです。

トランスジェンダーの男性または女性の、身心が伴わない苦しさは当事者でなければ分からない苦しさだと思いますが、女性目線としては、やはりゲルダに自分自身を重ね合わせてしまいます。

愛とは──惜しみなく注ぐこと、見返りを求めないこと、すべてを包み込むこと。

分かっていても、自分自身も女である以上は心も体女性として愛されたいと思ってしまう。それは当然のことです。

でもゲルダはそれが叶わない、でもアイナーを愛している、そして愛した人が違う人(リリー)になってしまう……ゲルダの苦しさを想像すると胸が苦しくなります。

そんなゲルダの心情をみごとに表現したことで、アリシア・ヴィキャンデルアカデミー賞助演女優賞を受賞。

惜しくもエディ・レッドメインは主演男優賞を逃しましたが、リリーのあの複雑な心情を演じられるのは彼しかいないと思わせる名演でした。

この『リリーのすべて』はとても大きな余韻を残す映画です。

考えるのは、人を愛するとはどういうことなのか? いま好きな人がいるとして、その人がアイナーのような立場だとしたら自分はどういう選択をするのだろうか? 映画を通して自分の本音が見えてくる、鏡のような映画とも言えます。

※トランスジェンダー:内面での男性or女性という自己認識が生まれた時に診断された性別と一致していない人のこと。

夫がどんなふうに変わろうとも彼に寄り添い支え続けた妻ゲルダの大きな愛についても考えさせられます。

 

『リリーのすべて』

2016年3月18日(金)公開

(C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

R15+

監督:トム・フーパー 脚本:ルシンダ・コクソン

出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、ベン・ウィショー、アンバー・ハード、マティアス・スーナールツ 他

原題:The Danish Girl 提供:ユニバーサル映画/製作:ワーキング・タイトル、プリティ・ピクチャーズ

配給:東宝東和/lili-movie.jp

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