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ブラックホールのナゾをKDDIのパラボラアンテナが解明する!(かもしれない)

山口市街から広島方向へと車を走らせること15分。大きな国道を左折して細い市道へと入る。坂を登り切ると、巨大なパラボラアンテナが現れた。日本最大の衛星通信施設「KDDI山口衛星通信所」だ。

計24基のパラボラアンテナが存在し、国際海底ケーブル網では疎通できない国々や地域、船舶、航空機などに、太平洋・インド洋上の通信衛星を介した国際電話、国際データ通信、国際TV伝送などを提供している。

東京ドーム3つ分、16万㎡の広大な土地に計24基のアンテナがある

まさに、日本の国際通信拠点と言うべき施設だが、通信以外にもうひとつの顔も持っている。それが、ブラックホールの謎を解き明かすかもしれない、宇宙観測研究の最前線としての一面だ。実は、24基のパラボラアンテナのうち、ひときわ大きな2基である「山口第4アンテナ」と「山口第2アンテナ」が「電波望遠鏡」として転用されているのだ。

2001年、「山口第4アンテナ」は「山口第1電波望遠鏡」として国立天文台に無償譲渡。2002年から山口大学の研究グループが運用し、観測に用いている。

そして2016年1月、「山口第2アンテナ」が、「山口第2電波望遠鏡」として山口大学に貸与された。現在、通信衛星の性能向上に伴い、パラボラアンテナには大きさが求められなくなった。通信衛星からの電波を受信する役割を終えたところに、山口大学から賃借の相談があったという。

口径32mの「山口第1電波望遠鏡」は、日本で4番目の大きさ。「KDDI」の上に記された「NAO」のロゴは、「National Astronomical Observatory of Japan」(国立天文台)の頭文字だ

口径34mの『第2電波望遠鏡』。電波望遠鏡としては、日本最大級の大きさ

パラボラアンテナと電波望遠鏡の基本的な仕組みは同じ。転用も簡単にできる

山口大学 時間学研究所教授、藤沢健太氏

「山口第1・2電波望遠鏡」を管理、運用しているのは、山口大学 時間学研究所の藤沢研究室だ。藤沢健太教授は、「ひとつの大学で、これだけの規模の電波望遠鏡を使った研究ができるのは世界でも稀なケース。すぐに利益につながる研究でもないが、学術的、文化的な意義を理解して協力を惜しまないKDDIには感謝をしている」と語る。

KDDIは、世界的な天体研究や山口市への地元貢献ができるという理由から、積極的に協力しているという。しかし、ここでひとつ疑問が浮かぶ。そもそも、なぜパラボラアンテナが電波望遠鏡に転用できるのだろうか? それには、まず電波望遠鏡とはなにかを知る必要がある。

太陽や星、ブラックホールなどの天体は、光や電波、紫外線、X線などさまざまな電磁波を出しています。実は、光も電波も電磁波に属する仲間同士なんです。異なるのは波長の長さ。波長が短いと目に見える光になり、長いと目に見えない電波となる。みなさんが想像している天体望遠鏡は、天体が出す、目に見える光を大口径の鏡で集めて観測しているんです。一方、電波望遠鏡は、その名の通り、目に見えない電波を大口径の鏡で集めています」(藤沢教授)
    

そもそも、パラボラアンテナの役割は通信衛星とやり取りされる電波を効率的に受発信すること。電波を捕捉する形状はもちろん、衛星に向かって方向や角度を変えられる装置も搭載している。それらは、天体から発せられる電波の受信に必要な仕組みそのものだ。藤沢教授は、「通信衛星との電波を受発信すればパラボラアンテナ、天体からの電波を受信すれば電波望遠鏡になる。違うのは名称くらいです」と語る。

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