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Andrew Weatherall『Convenanza』インタビュー

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プライマル・スクリームの『スクリーマデリカ』を始めとする数々のプロデュースやリミックス・ワーク、さらには自身のDJ活動等を通じ、ロックとダンス・ミュージックのクロスオーヴァーを最前線で牽引し続けてきたUK音楽シーンの重鎮、アンドリュー・ウェザオール。この度リリースされた最新作『コンヴェナンザ』は、ソロ名義では2009 年の『ア・ポックス・オン・ザ・パイオニアーズ』以来7年ぶりのアルバムになる。セイバーズ・オブ・パラダイス時代からの盟友ニナ・ウォルシュを交え、スポンテニアスでオープンマイドなやり取りのなか制作されたサウンドは、図らずもウェザオールのキャリアを総攬するように密度が濃く多彩なグラデーションに満ちた仕上がりに。「宗教的でない人々の儀式と超越。それがナイトクラブというものを指すんだ」。そう「Convenanza」というタイトルの意味について語る言葉通り、今作はウェザオールが長年培ってきた知識と経験、そして何より“現場感覚”が集約されたアルバムと言えるだろう。

 

―最新作の『コンヴェナンザ』ですが、ソロ名義としては7年ぶりのアルバムになります。

アンドリュー「とは言っても、俺は旺盛に活動していたけどね。ソロ作を出すのは7年ぶりでも、その間も毎日仕事していた。俺は毎日なにかしら音楽を作っているし、かつそれを楽しんでもいるわけで。だから……俺は前もって計画を立てたりしないんだよ。『本当だ! 前回のソロからもう7年も過ぎてるじゃないか。これはそろそろ次のアルバムを作らないと』なんて考えはしないっていう(笑)」

―気付いたら前作から7年も間が空いていた、と。

 アンドリュー「なんでだろう? っていうのも、俺は日々の「仕事」として音楽を作り続けているだけのことだし、7年経ったら作品としてまとまっていたってことで……だから、ソロ作の間に7年も空いた理由は自分でも分からないな。とにかく、物事がそういう風にまとまっていって、ソロとして出すのが良いだろうと、そう思えただけのことだった。俺はニナ(・ウォルシュ)と2年くらい共同で作業してきたわけで、俺たちの手元にかなりの数のトラックが集まっていた。そこで初めて見えてきたっていうのかな、『ここからソロ•アルバムが1枚作れるじゃないか』という点が」

―なるほど。

アンドリュー「一方で、それらのマテリアルからはもう1枚、The Woodleigh Research Facility(※ニナとコラボレートする別プロジェクト)名義のアルバムが生まれることにもなった、と(※近々リリース予定)。俺のやっているのは基本的にそういうことなんだよ。とにかくクリエイトしてみる、継続的に音楽を作り続けていき、たとえばそこから半年、あるいは1年経過したあたりでそれまで作ってきた音源のファイルを聴き返してみて、そこで初めて『ああ、なるほど。これらの音源は1枚のアルバムになるし、こっちのファイルはまた別のアルバムになりそうだな』と気付くっていう。だから、きちんと計画を立てて作っていくことはまずないし、俺のやってることはすべて偶然の産物だっていう。そう考えれば、今回の最新ソロ・アルバムもまた偶発的に生まれた作品、7年前と同じような偶然の「事故」だっていうね(笑)」

―「ソロ作品を作る」という意識はなしで、ただ作ってみた上で何かが生まれた、という感覚に近いのでしょうか?

アンドリュー「俺の作ったレコードってのはどれも、意図せずに生まれたものだっていう。俺はとにかく仕事に取り組み続けるし、ほぼ毎日と言っていいくらい常に音楽を作っているんだよ。で、何ヶ月か作業をやってみたところで『どんなものができたかな』と考え始める――ほんと、俺にとってはそこからなんだよ、アルバムが出来始めるのは(苦笑)。だから、アルバムの基盤になるようななにかをモノにするまで、アルバムは生まれない……それこそ作業の3/4くらいまで終了したところでやっと、俺は「アルバム」を作り始めるっていうか。意味、通じるかな?(笑)」

―ええ、ええ。でも、そうやってお話を聞いていると、あなたの音楽作りはむしろ、画家が絵を描くときのプロセスに似ていますよね? モダンな画家は、多くの場合は小さなアイデアから描き始めて、徐々に形になっていく……というものじゃないでしょうか?

アンドリュー「ある意味そうなのかもね? ただ、俺は今まで一度として『真っ白な無地のキャンバス』に向かって描き始めたことはないし……」

―むしろ「長く続けて描いてきた/取り組んでいる大きな絵に何かを描き足していく」、という。

 アンドリュー「そうそう。俺の前には巨大なキャンバスがあって、そこにえんえんと……」

―(笑)52年にわたって描いてきたキャンバスでしょうか? 

アンドリュー「(笑)そうそう。過去何年も続けて描いていた絵があって、それをたまに数歩下がって眺めてみて……いや、っていうかまさにそういうことなんだよな! だから、それこそ100フィート×100フィートくらいのどでかいキャンバスがあって、その色んな部分に毎日毎日、ちょっとずつ様々な色彩を重ね、足していく行為だっていう。で、その作業を何週間か続けたところで、後ろに下がって絵の全体を見渡してみて……『おっ、ここのこの箇所、肖像画っぽく見えるぞ』とか、『これは風景画としてイケるかもしれない』って風に気づいて、そこからその特定の箇所に取り組んでいくことになる。で、その部分がまとまったらキャンバスから切り取って、単独の作品にするっていうね。うん、その通りだ! おめでとう、君は俺の全キャリアを見事にひとつの『たとえ』にしてくれたよ!(笑)」

―(苦笑)ご冗談を。 

アンドリュー「いやほんと、俺はただ、ランダムに絵の具をキャンバスにぶつけてるだけだし、たまにまぐれでそこから絵が生まれることもある、というね! ありがとう、これ、他のインタヴューでも使わせてももらうよ(笑)」

―今回のレコーディングは、ニナとのフランクなやり取りからそもそも始まったそうですね。実際に作品を聴かせていただいても、そうしたスポンテニアスでオープンマインドな対話からサウンドが生まれ、そして作品が発展していった様子がうかがえます。

アンドリュー「そうだねえ……ごくごく自然体でやっているだけだし、そもそも作品に対する『青写真』みたいなものが存在しないからね。だから、俺は何も月曜の朝にスタジオに入って、『さあ、これからアルバムを作り始めるぞ。作品の内容はこういう感じ、こういうサウンドで』って具合に作品に着手するわけじゃない。とても自然な成り行きから生まれてくる……うん、ごく自然なプロセスなんだよな。とは言っても……かなり密度の濃いサウンドのアルバムではあるよね。で、俺としては聴き手にめいめい好き勝手に、そこからなにかをピックアップしてもらうってのが好きなんだよ。ってのも、今俺は52歳だし、ということはあのレコードには俺の52年間の人生、そこで味わった様々な経験が詰まっているっていう」

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