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介護福祉団体が『いつ恋』に出した意見書に専門家が意見

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 放送中の月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)では、有村架純(23才)演じるヒロインが、勤務する介護施設で14万円の月給で24時間働かされたり、雇用契約を一方的に切られそうになるなど、過酷な労働環境が描かれている。

 視聴者からは「リアルで現実をよく取り入れている」との声もあるこの描写に「ドラマを作成している方は、介護の給与の低さや労働環境の悪さが言いたいわけではなかったことは十分承知していますが、影響の大きさも考えて頂きたいと思います」などともの申したのが、日本介護福祉士会だ。

 日本介護福祉士会は1994年に設立された公益社団法人で、介護福祉士の職業倫理の向上や、専門的教育及び研究を通して専門性を高め、介護福祉士の資質の向上と介護に関する知識や技術の普及を図ることを目的にしている。

 入会金5000円、年会費3000円を支払った会員に向け、セミナーや勉強会を実施したり、国家試験対策を行ったり、各種調査を行っている。HPを見ると、活動の一部は、国から助成金をもらい、同会会長・副会長は厚労省が主催する社会保障審議会のメンバーに名を連ねていたこともある。

 そんな団体が、フジテレビに意見書を提出したのだ。述べていることは極めて“理想的”だが、現実の厳しさを知っているのだろうか。

 意見書に対し、介護現場からは「実際に過酷な現場なのに、きれいごとを言うのはおかしい」「もっとキツいことはたくさんある」「まったく大げさではない」などという怒りの声があがった。

 介護に詳しい健康社会学者の河合薫さんが言う。

「介護の仕事は肉体的にも相当ツラいですが、それだけではなく、自分の感情を切り売りする“感情労働”だから大変なんです。

“感情労働”の代表例は客室乗務員。長いフライトを快適に過ごしてもらうため、理不尽なことを言われても、身内に不幸があっても、笑顔でサービスを提供しなければなりません。でも、客室乗務員の仕事は長くても十数時間のフライトで終わる。でも、介護には終わりがありません。

 川崎市の事件の犯人を許すことはできないけれど、“同じことをしそうになった”と一歩手前で踏みとどまったと打ち明ける人は少なくありません。そのくらい現場は追いつめられています」

 意見書には、《厚生労働省の発表している調査では、他産業の平均給与と比較すると介護職の賃金は低いと出ていますが、女性ではあまり差がないとも言われています》とあり、《私の知る限りでも、養成校を卒業して、30歳代で管理職になり、それなりの報酬を得ている介護福祉士はたくさんいます》と書かれている。また、《多くのマスコミが介護や介護職に関してかなり偏った情報を流しているように感じています》と、マスコミへの“忠告”まで。

 しかし、“女性ではあまり差がない”根拠はどこにあるのか。“それなりの報酬”とはどのくらいのことを指し、“たくさん”とはどれくらいの人数をいうのか。

 本誌はそれらの疑問を日本介護福祉士会にぶつけた。しかし、1週間の期限を待っても「多忙のため答えることはできない」という回答だった。

 回答がないので、これ以上のことはわからないが、現場からはドラマの内容かそれ以上だという声があがっているのは事実だ。河合さんが言う。

「たくさんの介護福祉士が“それなりの報酬を得ている”なんてことはありえません。“女性ではあまり差がない”というのも、それはパート勤務の女性と比べているのではないでしょうか。福祉施設の介護員の月給は、常勤で21万9700円、訪問介護員(ホームヘルパー)は22万700円で、全産業平均の32万9600円より約11万円も低い。介護計画を作るケアマネジャーも26万2900円と全産業平均を下回る。しかも、これは平均値で、施設長なども含まれているので月給13万、14万という人も多いです」

 また、河合さんは、意見書の“2勤務(16時間)するような場合も多い”という文言にも意見する。

「本来は、日中・夕方・深夜と3つの勤務時間に分けた3交代制が望ましい。そうしなければ、職員は疲弊するし、現場の引き継ぎもうまくいかない。なのに、2勤務が当たり前のように書かれているのも問題です」

 安倍政権は昨年4月「介護職員の給与を1万2000円アップする」ことを打ち出した。しかし、1年が経とうとする今、それが本当に実現されたかの調査を厚労省が実施するとしていたが、結果は発表されていない。また、アップさせなくても罰則はない。

「介護に従事しているのは介護職員の人だけではありません。事務職員、清掃員など多くのスタッフがかかわっていますが、給与アップの対象は介護職員だけ。また、月額1万2000円アップではなく、ボーナスとして支給する施設も多い。

 これでは現場で働く人の環境が改善されるとは到底思えません。老人福祉・介護事業の倒産件数は過去最高。介護報酬引き下げは経営にもマイナスです」(河合さん)

 しかも、厚労省は膨らむ社会保険費を抑えるために、2018年度から「要介護1、2」に認定されている軽度の人を対象とした介護サービスの費用を、全額自己負担にすることを検討し始めた。河合さんが言う。

「高齢化社会になって、介護や医療にかかる社会保険費の増加が国の財政を圧迫しています。政府は3世代同居を打ち出し、保険の対象となる要介護度を上げようとしている。高齢者の介護を家族に押しつけようとしています」

 日本介護福祉士会が意見すべきは、本当にフジテレビだったのだろうか。副会長が、厚労省の審議会のメンバーなのであれば、その審議会で現場改善の声をもっと強くあげるべきなのではなかったか。

 国からの助成金を活動費の一部にあてる団体にそれを望むべくもないのか――

※女性セブン2016年3月24日号

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