ハイレベルな接客を生む「Love & Technique」とは?

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ハイレベルな接客を生む「Love & Technique」とは?

カルティエやエルメス、グッチ、シャネル、ティファニー。ジュエリーならヴァン クリーフ&アーぺル、時計ならばピアジェ。いつの時代も、ハイ(高級)ブランドは人の心をつかみ続けています。

こうした高級ブランドを支えているのが、接客です。財布の紐が固くなっている現代において、ラグジュアリーブランドが顧客から愛され続けている秘密は、「サービス」にあるといえるはず。

一流ブランドのビジネスコミュニケーションの秘密を解き明かした『ハイブランド企業に学ぶ 仕事が変わる「感性」の磨き方』(PHP研究所刊)の著者である大串亜由美さんに、お話をうかがいました。その後編です。
(新刊JP編集部)

■正解を探したがる日本人

――大串さんは企業研修などで「感性トレーニング」を行っているそうですが、それはどのようなトレーニングなんでしょうか。

大串:具体的には、会社の歴史を学んだり、そのブランドの本国の歴史を学んだり、接客トークを学んだりといった中に、本物の芸術に触れてみるとか、普段体験ができないことをしてみようとか、自由な発想で言葉を生み出すトレーニングが組み合わさっています。

ただ、感性だけを磨きましょうということではありません。ビジネスと感性のトレーニングを掛け合わせることが基本です。

――業界、国籍問わずさまざまな企業で研修を行っていらっしゃいますが、研修の内容は国によって大きく変わるのではないですか?

大串:研修の内容は、そのブランドの本国で作ったものを使っている企業もありますね。一方で日本独自でプログラムを開発しているブランドもあります。本国で作られたものについては、そのまま日本に当てはめるわけにはいかないので、マーケットに合うようにアレンジをすることもあります。

――日本とヨーロッパやアメリカを比較したときに、どのような違いが出てくるのでしょうか。

大串:ヨーロッパは感覚重視ですよね。1枚の絵を見て何を感じるか、自分の言葉で語ることに時間をかけたりします。一方でアメリカはまさに「ビジネス」という感じです。日本は受験勉強に慣れているせいか、正解を探してしまいがちです。でも感性に正解はないわけですから、戸惑う人は多いですね。ただ、戸惑うことも大事なことです。

■「Love」と「Technique」のバランスがハイレベルなサービスを生む

――ハイブランドの接客力の高さにはどのような共通点があると思いますか?

大串:これは「Love & Technique」だと思います。自ブランドに対する愛やお客様に対するロイヤリティを、しっかりと表現できるだけの知識と技術を持っているスタッフが、よい販売員だと思います。

「Love」と「Technique」はどちらだけでも成り立ちません。バランスが重要です。大事なのは知識や技術に裏打ちされた「Love」ですから、「感性トレーニング」を通して意識的に磨かなければいけない部分です。

――なるほど。

大串:ところが、多くの方は「Love」と「Technique」のどちらが得意かを聞くと、「Love」だと答えるんです。私はお客様に対する気持ちをしっかり持っている、と。

でも、お客様はどういったところでスタッフにガッカリしているかというと、「Love」の部分なんですね。商品のことを一方的に説明されたとか、お客として扱ってもらえなかったとか。だから、自分では「Love」を持っていると思っても、実はそれが相手に伝わっていないことがあるんです。

――研修以外で個人でもできる感性の磨き方はありますか?

大串:仕事モードになっている心を少し解放してみることですね。本物の芸術や音楽などに触れると、お客様に対する接し方、説明の仕方も変わってきます。目線や感性を広げることは、自分に余裕をもたらしますし、相手をよく見られるようになりますから、お客様が知りたいことは何かを受け取った上で提案できるようになるはずです。

■現状を「感性」で打破してほしい

――本書には高級ブランドの事例を通して接客のイロハが書かれていますが、内容はどんな業界でも通じるものがありますよね。

大串;そうですね。仕事をしている人全員に通じる内容だと思っています。

――どのような方に読んでもらうことを考えて執筆されたのですか?

大串:今よりももう少し高いところに進みたい人、上を向いて頑張りたい人、ちょっと躓いてしまっている人にも読んでほしいですね。状況を打破する力を持つことができると思います。

――では最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

大串:仕事の質やレベルは何歳からでも変えられます。「感性はセンスだから。持って生まれた才能だから」と言ってしまったら、ビジネス書を何冊読んでも意味はありませんし、研修を受けても無駄です。

自分を変えるためには、ほんの少しの勇気と、時間と、お金を自分に投資することが必要です。ラグジュアリー体験をしてみるなど、今までやったことがないことを経験しながら、思い込みを取り払ってほしいですね。

(了)

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