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『あさが来た』の語り・杉浦アナ 裏側を語る

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 大人気のNHK連続テレビ小説『あさが来た』。クライマックスを目前に、「語り」を担当する杉浦圭子アナ(57才)にその裏側を聞いた。

 * * *
 朝ドラの語りは、テレビのニュース番組やインタビュー番組とは違って、私の姿は映りません。声だけの勝負なので、アナウンサーとしてとてもやりがいのある仕事です。語りの収録は、1話につき、2度行います。まず、台本を読んで、映像編集の目安のために仮に録音します。もうひとつが、放送用の語りの収録です。実際に放送される15分の映像に合わせて、語りを入れていきます。

 今回の仕事で、私は脚本家の大森美香さんの大ファンになりました。台本が本当におもしろくて、新しい本をいただくたびにワクワク、ドキドキしながら拝読しています。台本には、語りの文言がたくさん書かれています。大森さんから思いを託されていると考えると責任を感じますね。その思いを正確に把握するために、台本を繰り返し読み込んでいます。

 実は今の語りの形になるまで、多少、試行錯誤がありました。私にとって朝ドラの語りといえば、『おしん』を担当された女優の奈良岡朋子さん(86才)がとても印象に残っていました。落ち着いた声で格調高い。ひと声聞いただけで「参りました!」と言いたくなるほど素晴らしい語りでした。

 その奈良岡さんが、かつてインタビューで、語りの極意について、登場人物の喜怒哀楽に左右されないで「一定の調子を保って語っています」とおっしゃっていました。ですから私も当初『あさが来た』を「落ち着いた低めの声で語ろうかな」と思ったのです。

 ところが1回目の仮の録音時、演出家から「もっとテンションを上げて。明るく朝の雰囲気で」と言われたので、方向転換することになりました。今のように、ドラマの進行に即して必要な情報を伝えながら、登場人物に寄り添うような優しい語り口に変えたのです。

 朝ドラの語りを担当するのは、『青春家族』(1989年)以来、2度目ですが、今回は年齢とキャリアを重ねた分、こう読みたい、という理想形が私の中にあるので、余計に難しさを痛感しています。

 第5週や第6週の放送で、山王寺屋の夜逃げや、新次郎のお妾問題がありました。はつやあさの心情にただ寄り添うと、暗く沈んだ声で語りがちでした。

 でも、実際の放送を見ると、つらい場面で語りまで暗くなると、救いようがなくなってしまうなと感じたんです。誰でも朝から暗い気持ちになりたくはありませんよね。だから、どんな場面でも、それがたとえ、この先どうやって生きていけばよいのかわからないようなしんどいシーンでも、声の奥底に希望や夢をにじませて語っていこうと決めました。

「今は大変だけど、辛抱して乗り越えたら、きっと幸せが待っているから」──そんな優しく見守るような気持ちですね。そうすれば、視聴者の皆さんにも、ヒロインたちを一緒に応援しながら、ご自身の一日を気持ちよくスタートしていただけるのではないかと思ったのです。

 放送が進むにつれて、あさの義父の正吉や五代友厚など、あさにとって大切な人たちが亡くなっていきましたよね。その時も、「志を継いで頑張る」という思いをにじませて語りました。

 正吉が亡くなったときに《正吉のいなくなった加野屋に、また新しい朝がやってまいりました》という語りがありました。このときも「あさは今、悲しみの中だけれど、託されたものを受け止めて、これからしっかり歩いて行ける。きっと彼女は大丈夫!」という思いを込めました。

 このドラマには、ヒロインたちが子供から大人へと成長し成熟していきますので、自然に私の語り口や声質も変わってきました。子供時代には、明るさや元気さをストレートに表現しましたが、親となり社会的な責任も増えた今は、語りの中に人としての深みや味わいも表現したいと思っています。

 ドラマも佳境に近づいてきました。あさと千代の親子関係が見どころのひとつです。私も娘を育てながら仕事を続けてきましたので、あさの気持ちに重なる部分があります。

 一方で、千代を見ながら、わが娘の気持ちを想像することもあります。それを語りで表現できるのは、おもしろいですね。

※女性セブン2016年3月24日号

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