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虐待ではない?日常茶飯事で起きている介護職員のケアとは

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認知症看護認定看護師の市村です。早速ですが、虐待と非虐待の間にグレーゾーンがあるのはご存知でしょうか。この「虐待(黒)とは言えないけれど、非虐待(白)とも言えない」ケアを、筆者は虐待の倫理におけるグレーゾーンと呼んでいます。「認知症をもつ人が受ける不利益をなくす」ことを一番大切に考えているため、今回はこのグレーゾーンについてお話したいと思います。

高齢者虐待の報道が与える影響

昨今、新聞やテレビでも高齢者への虐待に関する報道が増えてきています。認知症ONLINEでも虐待に関連する記事がいくつかあります。介護職のひとりとして、ケア提供者の虐待が多いことから目をそらさずに受け止める必要があると感じています

そして、虐待報道によって利用者と家族がケア提供者に対して厳しい目を持ち、施設や事業所の緊張感につながるきっかけになるかもしれないとも思ってます。

なぜならば、冒頭にお伝えした虐待とは言えないけれど、非虐待とも言えないグレーゾーンのケアは日常茶飯事で目にしているからです。

グレーゾーンのケアの具体例

グレーゾーンのケアとは、利用者の気持ちを考慮できていないケアを指しています。具体例をいくつかあげてみましょう。
声をかけられても聞こえないふりをする
なにか訴えたそうにしている利用者に対して忙しいふりをする
オムツが汚れていることに気付いてもオムツ交換まで放置する
「食べたくない」と言っても無理やり食べさせる
入浴を嫌がる利用者を車イスに乗せ入浴させる
「○○しますね」と同意を得ずに一方的なケアを行う
本人にばれないように食事に薬を入れる

認知症ケアに携わったことのある方でしたら、思い当たるものがあるのではないでしょうか。自分が食べたくないのに無理やり食べさせられたり、訴えを無視されたりすると、とてもツラい気持ちになりますよね。

グレーゾーンのケアが起きる原因

どうしてグレーゾーンのケアが起きるのでしょうか。背景にどんな問題があるのか、考えられる原因を挙げてみます。
教育体制が不十分
知識が不十分でひとつひとつのケアに時間がかかるため、丁寧なケアをする余裕がない
人員不足
ケア提供者ひとりあたりの負担が大きく、疲労やストレスによって心の余裕がなくなる
業務優先の職場体制
業務を時間通りに行うことが求められるため、利用者の希望は後回しにされる
現場の声が届きにくい組織体制
ケア提供者が抱えてる問題や利用者の不満を把握できないため、改善がされない
グレーゾーンを容認する職場の雰囲気
グレーゾーンのケアが虐待に繋がるという認識を持てない

グレーゾーンのケアがもたらす問題


介護職を辞めた方にお話を聞くと、自身のケアの内容に対する罪悪感に耐えられなかったという方も少なくありません。グレーゾーンのケアは利用者に対して不利益になるだけでなく、ケア提供者自身の罪悪感にもつながります。

施設・事業所が現場を把握していれば、ケアの改善ができ、ケアの内容に罪悪感を感じている、利用者を思いやれる貴重な人材を引き留めることもできるかもしれません。

昨年6月、厚生労働省は2025年度には全国で介護職員が約38万人も不足するという予測を発表しています。グレーゾーンのケアを見過ごすことは、介護職の離職率を高めて、さらなる介護職不足を招いてしまうと考えています。

グレーゾーンのケアを減少させる3か条


グレーゾーンのケアを今すぐゼロにすることは難しいと思います。ケア提供者自身が意識することはもちろんですが、施設・事業所が一体となって取り組まなければならないからです。筆者が考える取り組むべき課題は以下3点です。
グレーゾーンに敏感な雰囲気
現場のケア提供者全員に「非虐待・グレーゾーン・虐待」についての認識を一致させる
ケアについて指摘し合える職場の人間関係つくり
チームミーティング・個別ミーティングを行い、ケア提供者にとって風通しのいい職場環境を提供する
職員の疲労やストレスへのマネジメント体制
ケア提供者へ定期的なケアを行う仕組みを作る

日常茶飯事で起きている、グレーゾーンのケア。施設・事業所が現状を受け止め、改善に向けて真剣に取り組むことが、利用者や家族の満足度、そして大切な職員を守ることにつながっていくと筆者は信じています。

この記事を書いた人

市村幸美

准看護師として数年間勤務した後、進学コースへ進み看護師免許を取得。認知症治療病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち認知症ケア専門士、認知症看護認定看護師を取得する。「認知症をもつ人が受ける不利益をなくする」ことを使命と考え、現在は現場での実践や教育などさまざまなフィールドで介護・福祉に携わっている。またブログ『認知症看護認定看護師のLOVE♡認知症ケア』やSNSを通して介護職だけでなく一般の人に向けても認知症や介護を前向きに受け止めてもらえることを目指している。

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