体験から学び、本当の自分にいたる道

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体験から学び、本当の自分にいたる道

 最近、見かけることが多くなった「自己肯定感」という言葉。これは、自分の「良いところも悪いところもひっくるめて肯定する感覚」のことを指す。

 しかし、実際は自分と他人とを比べて「あれが足りない、これが足りない」と悩むのが人間というもの。どうすれば自分を丸ごと肯定できるようになるのだろうか。

 この点について詳しく書かれている『スターウォーズは悟りの教科書 Star Wars is The Bible of Enlightenment』(ヒカルランド刊)の著者、松本青郎さんにお話を聞いた。

――まずは本書の執筆経緯を教えていただけますか。

松本:きっかけは、3年前に突然、全身に蕁麻疹と高熱が出て3週間ほど動けなくなってしまったことでした。経営の傾いていた父の会社を引き継ぎ、注文住宅を建てたり、リフォームを請け負ったりして11年が経とうとしていた頃のことです。その年は、過去最高の業績を達成することができました。なのに体は悲鳴をあげたのです。
蕁麻疹は自分の免疫が自分を攻撃してしまった結果引き起こされる炎症ですから、原因は精神の失調にあるのではと直感しました。
そこで、部屋にあった書籍を読み漁り、自分と向き合い続けているうちに、私は「本当の自分の人生を生きてこなかった」ことに気づき、それこそが蕁麻疹の原因なのだと突き止めたのです。
それ以来、「本当の自分」を探究するようになり、以前は見て見ぬふりをしてきた感情に向き合うことで、本当の自分がやりたいことを見つけることができました。
その「本当の自分がしたいこと」の手始めが、本の執筆作業だったわけです。

――「本当の自分がやりたいこと」とは、具体的にどのようなことだったのでしょう。

松本:「世界中の子供達がありのままの自分を受け入れ、やりたいことをできる世界を創る」ことです。そうすれば比較のない世界になり、平和が訪れます。そこで、まず大人たちに求められることは、ありのままの自分を認め、自分を愛することです。このような理想を実現するためにセミナーや講演、コンサルティングなどの活動をしていきたいと思います。

――なぜ、そのような活動をしたいと思うようになったのでしょうか。

松本:私は幼少期に両親から期待と心配という形で愛情を受け続けました。幼いころから「お前は後継ぎだ、社長になるんだ」「三代目は会社を潰すというが、二代目のお前は大丈夫か?」「会社を潰すバカ社長になるなよ」といつも脅迫めいた形で言われ続けて育ったんです。
両親は私に標準以上の能力を望んでいましたが、私は同年代の子たちと比べて、体力がなく、コミュニケーションも苦手で、「読み・書き・そろばん」も人より遅れをとっていました。正式な診断は受けていないので何とも言えませんが、いま思えば、自分はADHD(注意欠如多動性障害)やアスペルガー症候群に近い雰囲気の子どもでした。
両親は私を愛していたがゆえに、期待と裏腹に失望は大きく、深い悲しみと私の将来を憂う不安は怒りとなり、余計に私を激しく非難する悪循環を繰り返しました。そして私は、両親に喜んでもらいたいという思いから、自分を責め、否定し続けてきたのです。
先の蕁麻疹と高熱で、自分に向き合った時に、それまで「もっと成功しなければならない」と自分を脅迫し続けてきたことや、両親を喜ばすために両親の目標を自分の目標だと勘違いして生きてきたということに気づいたのです。
動けなくなってしまったのは、その時の業績を知った父親が私に「お前の方が経営者として上だ」と言ったために、それまで私を突き動かす原動力となっていた脅迫観念が昇華し消失したからでしょう。おかげで、それまでの疲労が吹き出し「燃え尽き症候群」のような状態になってしまったのです。
このような経緯で、自分がかつて味わったような「愛の行き違い」がない世界にしたいと思ったのです。

――そのような原体験があるからこそ、かつての自分と同じ思いをする子どもが出ないよう、啓蒙活動をしていきたいということなのでしょうか。

松本:そうです。私が不器用だったのと同じくらい、父も教育に対して不器用でした。わが子に大きな期待を寄せていた分、「できないことだらけ」の現実を前にして、よほど悔しかったといいますか、悲しくもあり腹立たしかったのでしょう。私が何か「できないこと」に直面するたび、「お前はダメな人間なんだから、もっとがんばらなきゃいけない」と叱責し続けました。
たとえば子どものころ、こんなことがありました。ある日、父と公園でキャッチボールをすることになったのですが、いざ始めようと父のほうを見ると、手に持っていたのはソフトボールの三号球。通常の軟式野球ボールの倍はあろうかという大きさですから、当然、小学生だった私の小さな手にはおさまりません。それでもがんばって、砲丸投げのようにして投げたのですが、スナップもきかないしスピードも出ない。で、父は「どうして、こんなこともできないんだ」と怒りだしました。

――子どもとしては、それは辛い体験ですね。

松本:子ども時代は、こういうことの連続でした。当時は辛さしか感じませんでしたね。でも、だからこそ今はこう思います。かつて父が私に対してしたことの逆、つまり、親がわが子を他の子と比較して「あれが足りない、これが足りない」と欠点を指摘するのではなく「そのまま」を受け入れることが、子どもの人生に与える影響は計り知れないな、と。
親がそのように接することで、子どもは親から愛されていると感じることができますし、その結果「自分は愛されるに値する人間なんだ」と思えるようになります。そうして自分で自分を認めることができれば、自然とまわりの人のことを認めることもできるようになります。

――ちなみに松本さん自身、そのような体験を乗り越え、自分で自分を認められるようになったきっかけは、どのようなものだったのでしょう?

松本:仕事で出会った、ある先輩から言われたひと言が大きかったですね。当時、私は駆け出しでまったく仕事ができなかったのですが、そんな私を見てその先輩は「お前は可哀想なやつだな」と言ったんです。
「仕事ができないのは、お前が悪いからじゃない。親がそういうふうに育てたからだ。可哀想なやつだ」と。傍から見れば、なんでもない言葉に見えるかもしれませんが、私からすれば目から鱗。「うまくいかないのは全部自分が悪いんだ」という思い込みから自由になれたんです。
そのことによって「出来る自分でなければならない」という感情を手放すことができ、精神的にものすごくラクになれたんです。その頃から、自分が何者かを知るために心理学に興味を持つようになりました。

(後編へ続く)

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