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名古屋市議会、報酬650万円増の妥当性

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名古屋市議会議員の議員報酬を800万円から1455万円へ

 名古屋市議会は8日、議員報酬を800万円から1455万円に引き上げる条例案を自民、民主、公明などの賛成多数で可決した。河村たかし市長は審議をやり直す「再議」を求める構えだが、自民、民主、公明の3会派は「再可決」に必要な3分の2議席を確保している。河村市長が事態の打開に向け、議会の解散に向けた署名集めに動くかどうかが注目される。

2011年、名古屋市議会の議員報酬は1633万円から800万円へ

名古屋市議の報酬は本来、月額99万円で、期末手当などを含む年収ベースでは1633万円。「議員のボランティア化」が持論である河村市長は議会との対立を踏まえ、2011年の市議選に際して地域政党「減税日本」を設立。第一党に躍進し、議員報酬の半減、月額50万円、年収ベースで800万円にする特別条例を成立させた。

当時は減税日本が第一党だったものの、過半数には届いていなかった。そのため自民党などと「当分の間」の暫定措置とすることで合意し、全会一致で条例を可決した。提出の際の趣旨説明では、条例の適用期間について「民意による成案を得るため、特例による減額期間は、当分の間とする」とされた。

その後、減税日本では議員の不祥事や離党が相次ぎ、2015年の市議選では自民(22議席)、民主(16議席)に次ぎ、公明と共産と並ぶ12議席にとどまった。75議席のうち、3分の2にあたる50議席を野党が占有。議会における主導権争いのバランスが一気に変わったことを受け、野党は「報酬半減」の撤回に動き出した。

野党は議会内に「議会改革推進協議会」を設置して議員定数や報酬額について議論したが、報酬を引き上げようとする自民、民主、公明3党とそれに反対する減税日本、共産党との溝は埋まらず、協議は物別れに終わった。それを受けて自民、民主、公明3会派は報酬を1455万円に引き上げる条例案を提出。8日の本会議で可決させた。

議員報酬はいくらが適当なのか?

この問題を考えるにあたって、いくつかポイントがある。最大のポイントは「議員報酬はいくらが適当なのか」という点だ。

河村市長は欧米のように「議員はボランティア(無報酬)で担うべきだ」という考え。とはいえ欧米のような土日夜間ではなく、平日の日中に議会が開かれる現状では無報酬ではなり手がいないため、「市民並み」に引き下げようと半減の800万円とした。一方の野党は「800万円ではまともな議員活動ができない」と反発してきたが、その理由は「議員活動にはカネがかかる」というもの。地方議員は慶弔費や会合費がかさむうえ、事務所費や秘書などの人件費も一部を「政治資金で賄わなければならない」からだという。
名古屋市議には月50万円、年間600万円の政務活動費が支給されているが、事務所費や人件費といった「政務活動と政治活動の線引きが難しい支出」には各会派の内規で全額を充ててはならない決まりがある。自分の選挙や党のための活動に税金を充てるべきではないからだ。

政務活動費で支出できない分は献金などで集めた政治資金か、自己資金を充てるが、支出が多くて政治資金収入の少ない議員は赤字となる。報酬額が多ければ赤字も賄えるが、報酬が少なくて赤字額が大きければ当然、生活費が減る。ただ、そのために報酬を上げろということは、「政治活動の資金を税金で賄え」というのと変わらない。

議員報酬を引き上げたあとに削減?で市民の理解

今回、野党が報酬額を1455万円に設定したのは、「他都市と比べて最大の削減率」をアピールしたいから。他の主要都市では大阪市の削減率が12%で最も大きいため、それより大きい15%なら市民の理解を得られるはずだ、というわけだ。

確かに月額報酬をいったん99万円に戻したうえで15%削減し、期末手当を本来のままなら約1455万円となる。しかし、多くの市民にとっては15%削減ではなく、1.8倍への大幅な引き上げ。これで市民の理解を得られるかどうかは不透明だ。

もう一つのポイントは、5年前の報酬半減を全会一致で実現させたこと。野党各党は5年間で報酬半減から1.8倍に引き上げになぜ180度転換したのか。明確な説明が求められる。

ある野党議員は「当時と今では議会の構成が変わっており、(条例に盛り込んだ)『当分の間』は終わった」というが、この間に、趣旨説明にあった「民意による成案」は得られていない。自民党などは2015年の市議選で「報酬の引き上げ」を前面に掲げたわけではないし、引き上げ条例案を作る際にも「民意を反映する努力」があったとは言い難い。

残された手は解散請求(リコール)に向けた署名集め 

河村市長は引き上げ条例の審議をやり直す「再議」を求める方針だが、議会は3分の2議席以上の賛成多数で再び可決することができる。そうなると河村市長に残された手は2011年に使った議会の解散請求(リコール)に向けた署名集めしかない。

2011年には議会との対立局面を打開するため、リコールに向けた署名集めを開始。約37万の署名が集まり、住民投票を実現。解散への賛成が7割にのぼり、実際に議会を解散させ、減税日本で第一党を確保して報酬半減などいくつかの目玉政策を実現させた。

今回も議員の報酬を争点に、リコール、住民投票、出直し市議選に打って出るのか。32万超というハードルは高いが、5年前にも成立は誰も予想していなかった。他都市の議員も固唾を飲んで見守っている。

(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

PHOTO:T.Kiya  https://www.flickr.com/photos/38217580@N05/19037056451/

 

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