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丸山茂雄×山口哲一、元SME社長と『新時代ミュージックビジネス最終講義』著者による業界注目の刺激的な対談をレポート

丸山茂雄×山口哲一、元SME社長と『新時代ミュージックビジネス最終講義』著者による業界注目の刺激的な対談をレポート

 2016年3月2日、【丸さんに訊くこれからの音楽ビジネス ニューミドルマンリレートーク完結編】が東京・高田馬場で開催。書籍『新時代ミュージックビジネス最終講義』の著者である山口哲一と、元SME(ソニーミュージックエンタテインメント)社長としても知られる丸山茂雄が対談を行った。

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 今回のイベントは2015年に出版された『新時代ミュージックビジネス最終講義』の発売を記念した対談イベントシリーズの最終回。同書は、日本と世界の現状を整理しつつ、“ミュージックビジネスのこれから”を実務にまで踏み込み提案する実践的な新時代の音楽ビジネス論を扱った本。リレートークでは、これまでにアニメプロデューサーの石川真一郎、音楽ブロガーのジェイ・コウガミ等、様々なゲストを招いてイベントを開催してきた。

 今回ゲストとして招かれたのは、前述の元SME社長に加え、ソニーコンピューターエンタテインメントの元社長や、<EPIC・ソニー>等のレーベルの設立にも関わってきた丸山茂雄。山口はイベントの告知ページで「野球で言えば長嶋茂雄、バスケットで言えばマイケル・ジョーダンみたいな音楽業界のレジェンド」と丸山を称しており、最大限の敬意を示してイベントに臨んだ。

 イベントは新時代の音楽ビジネスについて、山口が丸山の意見を聞くという名目のもと、まずは丸山の経歴を振り返る形で進行。参加者に配られた“年表”にしたがい、時代順に丸山の行動や業績を振り返っていく。CBSソニー(現ソニーミュージックエンタテインメント)への入社から、各レコードレーベルやマネジメントの設立を振り返り、その背景にあった思惑や当時の状況を掘り下げる。そんな楽しみとスリルのあるやりとりが続いた。

 例えば、<EPIC・ソニー>の設立の背景には、音楽賞の乱立を筆頭に当時、音楽業界への影響力を増していたテレビ業界への反発があったと示唆。音楽賞を欲しがらない(=テレビ出演したがらない)のはロック・バンドだろうと考え、<EPIC>では「音楽賞は要らない」と約束したアーティストとだけ契約したと話した。その事によって、“人気アーティストでもテレビに出ない”というスタンスが成立。「乱暴に言うと、『ザ・ベストテン』が成立しなくなったのは<EPIC>の影響」とも語った。しかし、その後、90年代に入ると『イカ天』(三宅裕司のいかすバンド天国)が人気を博し、“ロック・バンドはテレビに出ない”という風潮も減っていったという。

 また、丸山は<キューン・ソニーレコード>(レーベル/現キューンミュージック)や<アンティノスマネージメント>の設立、書籍『あなたがアーティストとして成功しようとするなら』(2002年)の出版、ソニーコンピューターエンタテインメントの設立の経緯や成功などについても応答。「レコード会社は“音楽の芯を食ってない”と思ってマネジメント(アンティノス)を始めた」など歯に衣着せぬ発言で会場を沸かせた。

 特に会場を驚かせたのは、SME社長になった当時から「再販制度の維持に反対の立場だった」という発言。その理由はいたってシンプルで「みんな頑張らないから」。定価の制限があるせいで、例えば店側で特定の商品をイベント等で盛り上げて売ろうと考えても、その足かせになってしまう、と考えていたと語った。また、(一般的に音楽業界が最も潤っていたとされる)「1990年代の音楽業界のエコシステムのどこが良かったか?」という質問に対しては、「特別良いとは思っていない」という全く異なる見解を披露した。

 その後も<レーベルゲート>や<247 MUSIC>の成功と失敗、さらに2005年にYoutubeが登場した時にとてもショックを受けたことなど、“年表”を21世紀まで辿ったところで、話題は現在と将来の音楽業界について。その中で丸山は、いま売れているのは映像コンテンツも踏まえたアイドルやK-POPばかりで、<EPIC>でやっていたようなロックを中心とした、音だけで楽しむことの出来る音楽は死んだ、と苦々しさも滲ませつつコメント。そして、現在売りだそうとするなら、映像コンテンツも踏まえた形でないと活路を見出すのは難しいと語った。そして、その活路を示すものとして『新時代ミュージックビジネス最終講義』と『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(2011年)の2冊があるのではないか、と語ったところで対談は終了となった。

 刺激的な対談の内容を受けて、終了後も参加者との質疑応答が積極的に行われた。その中でも「20世紀は“質”の時代だったが、今は簡便さに重きがある」といった旨の発言や、ライブ市場の活性化について「人類の歴史上、ライブはずっと常に音楽の中心にあった」など、示唆に富んだ発言が多数飛び出し、最後まで興味深い議論は尽きなかった。

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