ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

戌井昭人さん タチ悪いおっさんに絡まれたときの対処法

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 人生には様々なトラブルがつきもの──散歩ばかりしているという作家で劇団「鉄割アルバトロスケット」主宰の戌井昭人氏の週刊ポスト連載「なにか落ちてる」より、不意の侵入者にどう対処すると効果的なのか、体験談を交えてお届けする。

 * * *
 寝ているときに、自分で「うわーおー!」と叫ぶ声で目を覚ましました。以前は、大笑いしながら起きたこともあります。

 なぜ、「うわーおー!」と叫んだのかは、自分が、お化けのフリをして、階段をのぼっていた人間を脅かそうとしている夢を見ていたのでした。

 それにしても、「うわーおー!」なんて叫んで、人間を脅かすお化けが、存在するのかどうか、よくわかりません。けれども、それが自分なりの、お化け表現だったのです。そして、自分で出した大声に驚いて、起きてしまったという有様なのでした。

 そもそも、どうして、わたしはお化けのフリをしたのか。そのときは、芝居小屋のような建物で、守衛のようなことをやっていたのです。

 守衛といっても、布団を敷いて、ただ寝ているだけの見張り番だったのですが、そこに侵入者がやってきたので、どうしたら良いのかわからなくなった自分は、お化けのフリをして、侵入者を追い返そうとしたのです。

 侵入者に向かって、「おい、なんだお前は!」とか「出ていけ!」「テメエこのやろう!」などと言って、相手に刺激を与えるならば、お化けのフリをして追い返した方が、得策だと思ったのです。

 なぜなら、お化けだったら、相手も攻撃してこないし、人間同士ではないので、馬鹿らしくなって、逃げていくだろうと思ったのでした。まあ、夢の中だったので、良かったのですが、このようなことが、実際にもありました。

 友達と酒を飲みに行ったら、タチの悪いおっさんが絡んできました。そのおっさん、あまりにもしつこかったのですが、友達も、怒り出したら収拾がつかなくなるような性質で、「おい、うるせえぞ」となったら、一触即発なところまで来てしまいました。

 とにかく、この事態を回避するため、わたしは、よくわからない人間になってやろうと思い、おっさんに、いろいろと、変な質問をしまくりながら絡んでいきました。

「イージー・ライダーのバイク乗ってる二人、どっちが好きですか?」「あれ、さっき帽子かぶってませんでしたっけ? 中日ドラゴンズの」とか、「うわーこのカラシとても辛いですよ、食べてみませんか!」などなど、相手の話を聞かず喋り続けていたら、結局、おっさん、面倒臭くなったみたいで、黙りだしたのです。

 ある人に、「あなたは、人を助けようとするとき、変な人になって、そこらの人々を攪乱させますよね」と言われたことがあります。

 しかし、窮地において、この方法が、正しいのか、いまだによくわかりません。たぶん、正しくないと思います。

●いぬい・あきと/1971年東京都生まれ。作家。「鉄割アルバトロスケット」主宰。2008年小説家デビュー。『ひっ』『びんぞろ』『まずいスープ』『どろにやいと』が芥川賞候補に。『すっぽん心中』で川端賞受賞。著作『俳優・亀岡拓次』が映画化。散歩ばかりしている。

※週刊ポスト2016年3月11日号

【関連記事】
【書評】お化け好きが急所をつかんで描いたお化け好きの評伝
お化け屋敷のお化け役で客から突き飛ばされ負傷 弁護士の見解
曽野綾子氏の連載エッセイ挿絵を集めた井筒啓之氏個展開催

NEWSポストセブンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。