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歌詞の音楽スタートアップGeniusに音楽雑誌Wax Poetics編集長が参画

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歌詞の音楽スタートアップGeniusに音楽雑誌Wax Poetics編集長が参画。メディア編集者から次々に参加する元「ラップ歌詞のウィキペディア」の現在

「歌詞のウィキペディア」と言われる、クラウドソース式の歌詞データベースのスタートアップ「Genius」の編集主幹(executive editor)に、ブラックミュージックの雑誌「Wax Poetics」元編集長で共同発行人のアンドレ・トーレス(Andre Torres)が就任しました。

元々はヒップホップの歌詞にユーザーが解釈や注釈を付けていくサイトとして始まったGenius(元Rap Genius)は後にあらゆる音楽ジャンルの歌詞に拡大していきます。現在では、ニュースや文学、スピーチ、映画の注釈付けに進出して、オンライン上のあらゆる情報に注釈を付けて文化をアーカイブするという壮大なゴールを目指しているスタートアップです。

Geniusにはこれまで大手VCのAndreessen Horowitzをはじめ、ヒップホップ・アーティストのNAS(とQueensBridge Venture Partners)やエミネム、ファレル・ウィリアムス、さらに元レディーガガのマネージャーで投資家トロイ・カーターの投資ファンドAFSquareなどが出資してこれまで5600万ドル以上を集めてきました。

歌詞のデータベースとして知られてきたGeniusですが、2015年からはあらゆるウェブページ上に注釈を挿入できる機能や、Spotifyと連携した歌詞提供を行うテクノロジー企業でもあります。特にウェブ上での注釈追加の機能は、大統領のスピーチをわかりやすく解説するために、ホワイトハウスの広報サイトに採用されるなど、徐々に利用が拡大しています。

Geniusの編集主幹にはアンドレ・トーレスの他に、若者向けのオンラインメディア「Complex.com」の音楽担当副編集長や、XXLやCMJの編集幹事を務めてきたクリスティーン・ワースマン(Christine Werthman)が就任しました。

またニューヨークのGawkerで編集者だったリア・フィネガン(Leah Finnegan)がニュースエディター責任者に就任、今後はニュース記事に注釈やコメントを付けていくコンテンツ「News Genius」を統括しています。

さらに元Complexで編集プロデューサーを6年以上務めていたインサナル・アメド(Insanul Ahmed)や、The FADERのソーシャルメディア・エディターだったカリラ・ドーズ(Khalila Douze)も参画を発表しています。

2015年に遡ると、8月にはMTVニュースのヒップホップエディターとして知られた音楽ジャーナリストで編集者のロブ・マークマンを引き抜き、Geniusでアーティスト・リレーション担当マネージャーに採用しています。

コンテンツ・ディレクターにはこれもComplexの元コンテンツ事業担当副社長だったブレンダン・フレデリック(Brendan Frederick)が2015年10月に就任しました。その他にヒップホップ雑誌VIBEの編集者だったジョン。ケネディ(John Kennedy)も編集者として参画しています。

過去12カ月のGeniusはコンテンツ・ビジネスを強化するための体制作りに注力しています。その理由の一つが、思想や哲学の強いユーザーたちを巻き込んだGeniusのアプローチが「音楽ジャーナリズム」の新しい手法として注目が高まっている事が挙げられます。

Geniusの進化として挙げられるのが、ヒップホップ・アーティストやプロデューサーたちが自らの曲を説明するユニークなファンとのやりとりが定着してきた点です。NASやエミネムの他にケンドリック・ラマーやIce Cube、プロデューサーのリック・ルービンがGenius内で歌詞の意味を解説する手法は、常にGeniusユーザーだけでなくメディアからも高い注目を集め、音楽のデータベースとしてGeniusをユニークなポジションへと押し上げています。

またGeniusは、一般ユーザーだけでなく、複数のジャーナリストがユーザーとして参加して注釈を付けることで、社会的または政治的なスタンスで議論するアクティブなコミュニティです。これは政治問題、社会問題に関心の高いユーザーのエンゲージメントを高める要因にも繋がっていることもGeniusが注目される理由です。

Geniusではニュース記事での注釈投稿において、これまでもワシントン・ポストやFusion、MSNBC、The New Republicなどとコラボレーションしてきました。さらに現在はニューヨーク・タイムズなどと交渉を進めています。

音楽の歌詞をデータベース化するために始まったGeniusが、ニュースをテーマにしたコンテンツまで広がり、音楽ファンやジャーナリストとコンテンツとの関係、さらに作品やアーティスト、社会問題の裏側にまで迫るジャーナリズムの手法を変革させるキッカケを業界に与えていることは、音楽スタートアップの域を超えた動きです。

Geniusは以前は歌詞のアップロードをユーザー側に許可していましたが運営上のロイヤリティ問題に直面した結果、2014年に米国音楽出版協会とライセンス料を支払うことで合意して、合法的に歌詞のアップロードを行うようになったことも結果的に大きくプラスに動いています。

音楽も多様化が進み、テクノロジーが先に進化してしまう時代になりました。定額制音楽サービスを中心として音楽を届ける手法は進化していることは世界的なトレンドです。業界全体の仕組みが見直されている中で、歌詞を通じてアーティストや作品の価値を知り未来に残していくことは、今まで自分では気付かなかった発見をもたらしてくれるに違いありません。注釈はすでに現代におけるコンテンツです。そして、これらを投稿しているのは、音楽や社会問題に関心の高い人たちであることも、唯一無二のコンテンツ体験に繋がっているのではないでしょうか? Geniusは音楽を「どう届けるか」よりも、音楽の「何を届けるか」を考える意味で今最も重要なプラットフォームの一つなのです。

これまでの音楽雑誌と違い、Geniusでは音楽に関する議論を歌詞を通じて複数の書き手たちが自由に起こしています。アルゴリズムでは提供できない言葉と体験を実現できていることが、Genius最大の価値ではないかと思います。このフォーマットは出版プラットフォームとして注目を集めている「Medium」と通じているところが多い点も見逃せず、これが新しい音楽ジャーナリズムを起こすヒントになる日も遠くないかもしれません。

■記事元http://jaykogami.com/2016/03/12805.html

記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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