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ヤナーチェクのオペラ『イェヌーファ』レポート、イェヌーファが下す決断とは

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 ヤナーチェクのオペラ『イェヌーファ』が、2月28日より新国立劇場にて開幕した。

 本作は、ヤナーチェクが1894年から1903年まで約10年かけて作り上げた全三幕からなるオペラで、主人公イェヌーファと2名の男性を巡る愛と悲劇のストーリー。結婚していないのにシュテヴァの子供を妊娠してしまうイェヌーファ、愛するが故にイェヌーファの顔に傷を付けてしまうラツァ、ハンサムだが酒癖が悪くイェヌーファを拒み他の女性と婚約するシュテヴァ。現代のサスペンスドラマ顔負けの愛憎劇だ。

 この作品にはもう一人の主人公がいる。原作戯曲のタイトルである「彼女の養女」が示す通り、イェヌーファの継母コステルニチカだ。コステルニチカは、結婚前に妊娠してしまいシングルマザーになってしまったイェヌーファを憂い、世間体を気にするあまり生まれたばかりの子供を氷につけて殺してしまうのだ。

 今回、新国立劇場で上演されたC.ロイ演出の『イェヌーファ』では、オペラ本編上演前に無言劇が付け加えられており、子供を殺したコステルニチカが捕まるシーンから始まる。幕が開くと真っ白で四角い舞台に、バックを抱えながら歩き回るコステルニチカ。日頃、音が溢れる歌劇場だが、この日ばかりは沈黙で満たされ、不安と困惑が入り混じった空気が漂い始めたところで第一幕がスタートした。全編を通じて、大きな装飾は施されず、真っ白な舞台と背景のみ。その白い舞台は両サイドの壁や背後が非常にゆっくりと動いており、気が付いた時には、急に舞台が大きかったり、景色が変わっていたりと驚かされる。

 ジェニファー・ラーモア(コステルニチカ)、ミヒャエル・カウネ(イェヌーファ)、ジャンルカ・ザンピエーリ(シュテヴァ)、ヴィル・ハルトマン(ラツァ)など、みな歌唱力のみならず、演技力の高さも素晴らしく、それぞれの事情を抱えた人物像を生き生きと描いた。特に印象的なのは2幕。身勝手なシュテヴァと子供の父がシュテヴァであることを知り戸惑うラツァの間で、パニックになった結果、子供を殺してしまうという最悪の決断をしてしまうコステルニチカの心情の変化を、ジェニファー・ラーモアが見事に演じ切った。子供の死に気付いていないイェヌーファによるアリアの美しさは、観客の涙を誘った。スピーディーな物語展開と美しいヤナーチェクの音楽で、一度観ると再び観たくなるオペラ『イェヌーファ』。公演は、3月11日まで行われる。文:高嶋直子 / 撮影:寺司 正彦 / 提供:新国立劇場

◎公演情報
ヤナーチェク『イェヌーファ』
日時:2月28日(日)14:00、3月2日(水)18:30、3月5日(土)14:00、3月8日(火)18:30、3月11日(金)14:00
会場:新国立劇場
指揮:トマーシュ・ハヌス
演出:クリストフ・ロイ
ブリヤ家の主人:ハンナ・シュヴァルツ
ラツァ・クレメニュ:ヴィル・ハルトマン
シュテヴァ・ブリヤ:ジャンルカ・ザンピエーリ
コステルニチカ:ジェニファー・ラーモア
イェヌーファ:ミヒャエラ・カウネ
粉屋の親方:荻原潤
村長:志村文彦
村長夫人:与田朝子
カロルカ:針生美智子
羊飼いの女:鵜木絵里
バレナ:小泉詠子
ヤノ:吉原圭子
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団
芸術監督:飯守泰次郎

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