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【ビジネスマンが家族を守るとき】家族問題の解決と出世を両立させるには?

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自分の家族が病気や問題を抱えていても、なかなか会社に相談できないといった悩みにさいなまれた経験はないでしょうか。

家族の問題はいまだ多くの企業でオープンに話せない状況です。家族に問題が起こっても仕事を優先した結果、役員や経営者の立場になった頃には家族が崩壊。あまり幸せとはいえない生活を過ごしているビジネスマンが、この日本では少なくありません。

『ビジネスマンが家族を守るとき』(WAVE出版)の著者であり、東レ経営研究所社長であった佐々木常夫氏は、どんな苦境に立たされたとしても運命を引き受けることだといいます。自閉症の長男とうつ病の妻を支えながら、家族を守り、仕事にも全力を尽くし、家族再生のために取り組んできました。多くの人が重い荷を自分と家族だけで背負おうとするけれど、それをオープンにし、悩みを共有できる仲間がいると知るだけでもつらさの半分は解消できるとも。

ライフ・ワーク・バランスのシンボル的な存在であり、出世街道をまっしぐらに走りながら、家事をこなすために夕方6時には退社する生活を続けてきた佐々木氏に、家族と仕事の両立について聞きました。

佐々木常夫氏

東京大学経済学部卒業後、東レ株式会社に入社。家庭では自閉症の長男と肝臓病とうつ病を患う妻を抱えながら仕事でも大きな成果を出し、01年、東レの取締役。03年に東レ経営研究所社長に就任。内閣府の男女共同参画会議議員、大阪大学客員教授などの公職も歴任。「ワーク・ライフ・バランス」のシンボル的な存在である。

世界の成功者は家族を大切にしている

ビジネスマンが家族を守ることは、世界の常識です。海外で成功している人の自叙伝を読むと、「私が仕事に邁進できたのは、妻がいたから」といった感謝の言葉が、あとがきに必ず書かれてあります。

ところが日本の役員や経営者は、不思議なことにそういった発言をする方は稀です。それどころか、家事はすべて妻任せで、家族に何か問題が起こっても仕事を優先するといったことを平然とメディアや著書で公言しています。

しかし、よく考えてみてください。人間としてどうすべきか。家族の一員として何をすべきか。家で誰かが困っていたら、家族全員で助け合うことこそ、元来あるべき人としての姿じゃないでしょうか。

家族の問題はビジネスよりも優先されるべきなのに、日本の多くのビジネスマンはそうではありません。ある大企業の役員とディスカッションした際、みな口にしないだけで、日本の経営者や役員の過半数は家族が崩壊している可能性が大きいという話になりました。家族の一大事に背を向けて仕事だけに没頭し、高い収入や立場だけ手に入れたとしても、本当にその人は幸せと言えるのでしょうか。家族が困っている時に手を差し伸べないというのでは、人として最も大切な愛情が自分には欠けていると認めざるをえず、私はむしろ哀れに感じます。

自分が幸せになりたいなら人をまずは幸せにすること

自分が幸せになりたいなら、まずは周りを幸せにすることが先決でしょう。パートナーからも子どもたちからも尊敬されないと、本当の幸せは得られないと思います。私は息子や娘に対してひとりの個として尊敬しながら接しますし、妻に対しても同様です。そういうスタンスで接しているからこそ、彼らも私と向き合っていろいろな話をしてくれますし、本心しか話しません。家族と深い絆を持っていると思えることは、私の何よりの幸せです。

家族に問題が起きた時、現実から逃げてしまい、見たくない、知りたくないといった態度に出てしまう人もいるようですが、正直、私はそういった人たちの気持ちがわかりません。

だって、かけがえのない「あなたの家族」ですよ。家族である限り、さまざまな重責が自分に降りかかってきます。どう逃げようとしたところで、逃げられないものなのです。

そうであるのなら、相手の立場に立って、どうしたら解決できるかを一緒に考えるほうが、よほどお互いのためでしょう。無論、人である限り、調子がよい時と悪い時はあります。家族であればなおさらです。しかし、自分が逃げずに相手の立場に立って話を聞き続ければ、相手も次第に腹を割って話してくれるようになります。家族であるなら、そういった会話を成立させることは当たり前のことなのです。


家族に対しては無償の愛で、無条件に接する

家族の世話は、なぜやるのかとか、なぜやらないのかと、考えれば考えるほど複雑になりますから、あまり余計なことは考えず、無償の愛で、無条件で接することが何よりだと思います。

長男が自閉症で幻聴が聞こえていた時期は、妻に何時間も話し続け、それに疲れた妻の話を私が帰宅後、何時間も聞くといったことが頻繁にありました。彼女も話をしないと落ち着かない状態だったので、モヤモヤと何かを抱えている時は、できる限り話を聞くように心がけていました。とはいえ、無理は禁物です。疲れている時は「今日はダメ。疲れているから」と正直に話しましたし、深夜2時くらいになったら「もう寝よう」と声をかけもしました。

病気などの理由で、ひとりの家族が攻撃的になっている時はよりいっそう受け入れるべきでしょう。あちらの攻撃に対して、こちらまで攻撃したら、ハチャメチャになってしまいます。ですから、感情的に交戦するより、どういうように持っていったら大事にはならないですむか、今の相手の現況ではどう対応したらよいかと考え、受け止めるように努めました。


家族と真剣に向き合うことは出世にもつながる

夕飯をつくるために18時に退社しようとするにはタイムマネジメントは必須です。そのために一番重要なのは、「事実を正しく知る能力」でしょうか。

組織を観察していると、肝心な情報が入ってこなくて回り道をしている人が多いことがあります。自分がよしと思ってきたことがただの思い込みだったり、実は正しくないということが正しいことだったりすることは容易にあります。細々とした業務を含めて、みんなで確認しあいながらやれば、事実でない場合は早い段階で変えられますし、事実であると再確認できたときは作業を加速することも可能となるでしょう。

たとえば、上の人から調べ物を頼まれたとき、相手が15分くらいで調べてほしいと思っているのか、それとも1時間くらいで調べてほしいと思っているのかを事前に確かめるだけで業務量をかなり節約できます。1ページ程の簡易な報告書でよいのに、パワーポイントでかっちり資料をつくってきたら、なぜそんな余計なことをするんだと上司は思います。何が無駄で、何が重要なのかを互いに確認しながら仕事をすることで、かなりの時短は可能となるでしょう。

あとは無駄な会議の省略です。そのテーマに関する人だけを集めたミーティングはやりますが、私は重々しい会議は一切行いませんでした。特に無駄と感じていたのは報告会で、ああいったものこそ極力ペーパー化するべきです。


家族同様、部下の悩みを聞いてこそ仕事がうまくいく

会社で共に働いている人たちは、多かれ少なかれ家族の問題を抱えているものです。管理者として大事なことは、仕事の悩みだけではなく、プライベートも含めて、部下の悩みを極力知ろうとする心です。

そう簡単にプライベートの悩みを話す部下はいないと反論したくなる人も中にはいるでしょう。ですが、自分が話した内容が他の人に絶対に漏れず、「上司は自分の身になって動いてくれる」という信頼関係さえ構築してあれば、部下は心を開いてくれます

私は定期的に年2回、ひとりあたり約2時間かけて面談をやっていました。最初の1時間で家族の問題などプライベートで悩んでいることを聞き、残りの1時間を仕事の悩みについてヒアリングします。仕事のことは大体わかっているけれど、プライベートに関してはわからないので、初めに聞く。そうすることで部下たちのモチベーションも変わり、業績もよくなっていきました。

たとえば母親が病気になって、介護を自分がやらなければならないと部下から相談された時は、買物を頼んでは外出する用事を作ってあげて、できるだけ早めに帰らせるということをやっていました。そうすることで、その女性は同僚たちに母親の具合を知らせずにすむと同時に、余計な気を遣わずに家に帰ることができました。のちにその部下から年賀状をもらって、あの頃の佐々木課長との面談が、待ち遠しくて、楽しくてと書かれていたことがありました。そういう気持ちで社員が働いてくれる社の雰囲気はすごくいいですし、仕事もとてもがんばってくれるものです。


自分を愛し、人を愛する「自己中心主義」を心がける

一律管理をしようとしても、総じてうまくはいきません。なぜなら、人それぞれ抱えている悩みが違えば、解決法も違うからです。結局のところ、その人に合わせてやっていくしかないのです。

その人が何に関心を持ち、何に悩んでいるのかをまずは知ろうとする。そうすれば相手もあなたに対して話しやすいし、相談もしやすいですよね。会話を積み重ねれば、お互いに理解を深めて、信頼関係を築けます。家族も会社のチームも、それは変わりません。

著書の中で「仕事の進め方10カ条」を書いているのですが、一番大事なのは最後に書いた「自己中心主義」です。自分を一番愛しなさい。そのためには人を愛しなさいという内容です。なぜなら、人にやったことは自分に必ず返ってくるからです。

≪仕事の進め方10カ条≫

1.計画主義と重点主義

2.効率主義

3.フォローアップの徹底

4.結果主義

5.シンプル主義

6.整理整頓主義

7.常に上位者の視点と視野

8.自己主張の明確化

9.自己研鑽

10.自分中心主義

スティーブン・R・コヴィンさんが提唱した「7つの習慣」のうち、初めの3つは個人の習慣で、次の3つはチームや組織の習慣となっています。チームの習慣の一番最初に出てくるのが、自利利他円満「相手の立場に立って、相手をプラスにさせるためにはどうしたらよいかを最初に考え、次に自分のことを考えなさい」という教えです。つまり、組織がうまくいくためには、相手の立場に立って行動しなければならないとコヴィン氏も言及しています。

何も新しいことを言っているわけではなく、当たり前のことを言っているにすぎないのですが、みな、これがなかなか実行できません。それまで自分の視点でしか物事を話していなかった夫が、妻の立場に立って発言するようになったら、夫婦関係は必ずよくなります。それと同じように、組織の中で、相手の立場に立って会話するようにするとチームワークがよくなります。そうしたサンプルは世の中にいっぱいあるわけです。

なので、上にいる者が管理しやすいというだけの理由で、一律管理して、上からドンとやってもダメなんです。結局、一律管理というのは、上の立場でしか見ておらず、下の立場には立ててないわけですから。

まずは一歩を踏み出すことで、信頼関係が生まれる

現在多くの方が苦しんでいるうつ病も、早く手を打てば割と早く治る可能性が高くなります。一人で悩んでいるとなかなか治りにくいですが、いろいろな人の話を聞いたり、早めに専門家に相談して適切な薬を処方してもらったりすることで、良くなるケースが多いです。

自分のチーム内の悩みを抱えている人には配慮しなければなりません。仕事をうまく進めようと思ったら、そういうこともやらないと。会社で一緒に働く人も、広い視野で考えたら家族と同じなんですから。

うつを含め、誰にも話せない病気や悩みがあって苦しんでいるという人は、まずは一歩を踏み出してみることです。よく探せば、誰かしらは信頼できる人がいるものです。人間はみんな優しいところがありますから、誰かにすがられて、ほったらかしにできるひとはそうはいません。人に話すのが不安だ、信用できないという人は、まずは行動を起こしてみれば、それがよくわかると思います。

人間は、そもそも群れて、助け合って生きている動物です。ひとりで生きていくのは絶対に無理なんです。だからこそ、運命を引き受ける。自分だけでは苦しまず、つらいことや苦しいことがあったら、オープンに話す。身近な人となるべくコンタクトを取り、何でも話せる深い関係を築いていくことこそ、「本当の幸せ」なんですよね。

information

『ビジネスマンが家族を守るとき』

佐々木常夫著

人はどうしたらここまで強くなれるのか。自閉症の息子、うつ病の妻。逆境に立ち向かいながらも、家族を守り、なお仕事に全力を尽くした男の不撓不屈の物語。

*この作品は、2012年1月27日に小社より発行された『完全版 ビッグツリー 自閉症の子、うつ病の妻を守りぬいて』を改訂・改稿したものです

取材・文 山葵夕子 撮影 前田賢吾(L-CLIP)

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