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弁護士のお仕事

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 前回、ある女流作家のことを契機に責任能力のことを書いた。今回も、その女流作家の小説からの話である。
 小説の内容をそのまま引用すると、「現代、公事宿に相当する弁護士は、依頼人の事件をできるだけ簡略にきき、余分な話には耳を傾けなくなっている。これは弁護士が、社会的地位に高い職業と一般に認識されたためと、依頼人は思いが募ってどうしても饒舌になり、丁寧に対応していたら、切りがないからだろう。これにくらべ、公事宿の主をはじめ下代や手代は、依頼人の用件を詳細にきくことを、専ら大事と心掛けた。話によく耳を傾ける点において、辛抱強かった」とある。

 これが、現代の弁護士に対する一般社会からの評価であるとしたならば、それは弁護士自信に問題のあることであり、改善をしていかなければならないと思う。
 ただ、私の経験からすれば、多くの弁護士(というよりも私の知る弁護士のすべて)は、「依頼人の用件を詳細にきくことを、専ら大事と心掛けており、話によく耳を傾ける点において、辛抱強い」と思われる。

 弁護士は、依頼人から持ち込まれる法律問題を、依頼人からの感情面での不服、事実そのものの経緯などをすべて聞いて、それを法律的にいかに解決できるかを考えていくのが仕事である。
 私たち弁護士にとって、何が重要な事実であるかについては、依頼者自身が自覚していることは少ないし、いろいろな話を聞いているうちに、弁護士自身が当初は思いもしなかった法的問題に行き当たることもしばしばある。
 つまり、依頼者の話を辛抱強く聞くことによって、依頼事件の見通しを立てることができるのである。依頼者が話す10のことのうちに、重要な1が含まれていることもあるのである。

 だから、簡略に話を聞くことなどできないし、簡略化しようとすれば、依頼者が萎縮して、結局10聞かねばならないところを、5しか聞かず、重要な事実を聞き逃してしまうことにもなる。これでは、依頼者が納得するような活動はできない。

 私の経験でも、長いときは2時間でも3時間でも、依頼者の話を聞くことがある。それでも他用のある場合には、一度中断をして、別機会に詳細に依頼者の話を聞くことになる。それで自分自身も納得できるのである。

 もし、女流作家が指摘するような弁護士がいるとしたら、それは手抜きの活動であるというべきであるし、依頼者が納得するような結論にはたどりつけないと思う。
 依頼者の話をじっくりと聞いて、活動方針を丁寧に説明することによって、仮に依頼者の満足のいく結論にならずとも、多くの依頼者は感謝をしてくれるのである。

 裁判で敗訴した結果となっても、依頼者から「よく話を聞いてくれて、よくやってくれたので、敗訴でも仕方がないと思います、先生には感謝しています」と言われることもしばしばあるが、場合によっては勝訴をしたときよりも、うれしいことである。
 勝訴したときよりも、弁護士になってよかったなと思う瞬間である。

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弁護士のお仕事

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