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子どものための決定は誰がする?「組体操」問題で問われているもの

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組み体操の一部禁止に至った理由

大阪市教育委員会は,運動会の種目である組み体操のうち「ピラミッド(四つんばいになった生徒を何段も上に積み上げるもの)」と「タワー(生徒の肩の上にほかの生徒を乗せて上に積み上げるもの)」を禁止することにしました。この「ピラミッド」と「タワー」は,運動会の花形種目として多くの生徒や保護者に人気がある一方,段が崩れて落下した生徒や下敷きになった生徒が骨折などの重傷を負う事故が後を絶たない危険な種目として多くの識者などが実施反対を訴えています。大阪市教育委員会の今回の決定は,「ピラミッド」と「タワー」が危険な種目であることを重視し,安全への配慮を優先するために禁止する決定をしたものです。
確かに「ピラミッド」や「タワー」は見栄えがする種目です。成功させたらヒーローになれます。また全員が一生懸命取り組まなければならないので,困難に立ち向かう気持ちが養えますし,やり遂げた達成感も得られます。団体競技であるため連帯感も生まれます。これらは,保護者も先生も子どもに身につけてほしい「教育的効果」です。また,成功すれば子どもにとってもとてもうれしいですし,人として大きく成長できるでしょう。いわば「子どものため」なのです。

組み体操が原因で大きなけがをすることも

一方で,失敗したら大きなけがをするリスクがあります。組み体操に限らず学校でけがをしたら日本スポーツ振興センター(本部・東京)から医療費が給付されますが,2014年度同センターから組み体操による事故で医療費が払われたのは8592件でした。そのうち骨折が約2割,脊椎や骨盤などの骨折は72件,脳挫傷や内臓損傷のケースもあるとのことです。こんなけがをするリスクがある種目は,「子どものため」に禁止すべきとの主張も,説得力がありますね。

「子どものため」の問題は子どもが選択するべき

つまりこの問題は,子どもの将来にプラスになることを身につけさせるのが「子どものため」なのか,危険なことをさせないのが「子どものため」なのかの論争である側面もあるということです。
運動会の種目は,子どもにとって素晴らしい効果がある種目であっても,体を使う種目である以上どんな種目であってもけがのリスクは避けられません。けがのリスクがあるからといってさせないのであれば,せっかく期待できる「子どものため」も得られません。しかしけがのリスクを避けるのもまた「子どものため」です。ならばどちらの「子どものため」をとるのかを,先生や保護者が決めるのではなく子どもがきちんと理解したうえ自分で決めればいいのではないでしょうか。なぜならこれは,先生や保護者といった「大人のため」ではなく「子どものため」の問題だからです。「子どものため」である以上,当事者である子どもが決めるべきです。
今,運動会で「選択種目」を取り入れている学校があります。いくつか種目があってどれをするのか子どもが決めるのです。「ピラミッド」なども,全員参加を強制するのではなく,選択種目にすればいいのではないでしょうか。もちろん,その場合でも学校は安全に最大の配慮をするべきですし,学校はリスクについて誠実に説明し,形だけ自由ではなくほんとうに自由に選択できるように配慮するべきであることは言うまでもありません。

(船越 克真/教育カウンセラー)

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