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ミニマリストにやくみつる「ムダなしは人間的ぬくもりない」

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 家財道具、趣味の品など身の回りのあらゆるモノを最小限にして暮らす「ミニマリズム」「ミニマリスト」が注目されている。単なる片付け術や生活術を超え、禅や茶の湯との共通性を語り、心理学で理論武装するなど、生き方、哲学という色合いが濃い。

 モノを究極まで減らすことで、時間的にも精神的にもモノに煩わされなくなり、何が本当に大切なのかがわかる……のだという。それに対し、家にモノが溢れ、トイレットペーパーの包装紙など「珍品コレクター」として有名な漫画家のやくみつる氏が異議を唱える。

──ブームをどう思いますか。

やく:まず、蔵書もすべて捨てると言っているミニマリストが紙の本を出すんじゃない、ネットで言っとけ、と。

──やくさんはミニマリストとは対極の「マキシマリスト」で、なかなかモノが捨てられないそうですね。

やく:ブランド物とか宝飾品を買い集める趣味はまったくないんですが、小学校のときに使っていた文房具とか、中学のときに着ていたTシャツとか、行ってもいない大阪万博の記念品とかも残っています。収集品のトイレットペーパーも精査が追いつかなくて溜まる一方ですし、本も増えています。もうゴミ屋敷二歩手前で、モノの整理に時間を取られることは確かです。

 しかし、トイレットペーパーの包装紙という、どうでもいいことに関する知識が蓄積され、着々と我が国一の地位を固めつつあることに喜びを感じるんです。

──本書の著者は、日本でミニマリストが増えている背景には3つの条件があると言っていますね。〈増えすぎた情報とモノ〉〈モノを持たないで済む、モノとサービスの発展(注・スマホやシェア文化)〉〈東日本大震災〉です。

やく:著者は、地震によってモノが凶器となった恐ろしさや、津波によって大事なモノが流されてしまった虚しさについて述べていますが、震災の被災者だって、本当ならば、私が溜め込んでいるのと同じような、他人にとってはどうでもいいモノ、無価値なモノに囲まれた生活を続けたかったわけですよ。しかし、泣く泣く手放さざるを得なかったわけです。なのに、第三者がモノを持つことの虚しさ云々と言うのはちょっと不遜な気がしますね。

 田舎に行くと、欄間にご先祖様の写真が飾られていたり、食器棚だかこけし棚だかわからないくらいゴチャゴチャといろいろなモノが棚に並んでいたりしますよね。それが田舎の生活の原風景だと思いますが、ミニマリストの人たちの言うことはそういうものを否定することになりかねません。無駄がないということは、人間的な温もりがないということです。そうした光景がミニマリストの原風景だとしたら、ずいぶん寂しくないかなと思います。

──そもそも、今なぜミニマリズムが流行っていると思いますか。

やく:若い世代を中心に、ある種の虚無感に支配されているからではないでしょうか。モノというのは本来、人間の営みと不可分のものです。だから、それに対する興味を失うということは現実からの逃避につながりはしないかと懸念しますね。ミニマリストの方には、物の数だけ人の営みがある、喜びがある、幸せがあるということに思いを巡らせてほしいですね。

●やくみつる/1959年東京都生まれ。漫画家、コメンテーター、エッセイスト。早稲田大学商学部卒業。週刊ポストなど連載多数。『やくみつるの大珍宝』(日刊スポーツ出版社)など著書多数。

(インタビュー・文/鈴木洋史)

※SAPIO2016年3月号


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