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9.11から10年 なりふり構わぬ状態になったアメリカ

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司会のモーリー氏(左)と今井氏(中)、野口氏(右)

 ハリウッド映画のような光景はまだ目に焼きついている。あれから10年、全世界に衝撃を与えた「9.11」以降、アメリカは、世界はどう変わったのか。そして、日本は――米同時多発テロから10年となった2011年9月11日、ニコニコ動画では「9.11から10年~米同時多発テロは世界の何を変えたのか~」を放送。国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏を司会に、この10年を振り返った。ジャーナリストの野口修司氏は、「9.11」以降のアメリカは「なりふり構わない」状態になったと語る。

 飛行機がビルに突っ込むという映像もさることながら、9.11最大の衝撃はあのアメリカが直接攻撃されたということだった。NHKで「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」のエグゼクティブプロデューサーなどを務めた今井彰氏は、

「アメリカの戦争で一番死者が多かったのは内戦の南北戦争なんですね。それ以外の戦争は、圧倒的に被害者は少ない。しかも、本土が襲われたのは歴史的にほとんどない。点のような本土攻撃の記憶しかなかったと思うんです。それが、いきなり心臓部をドスンとやられた」

と語り、その衝撃を「天地がひっくり返った」と表現する。これをきっかけに、アメリカは現在まで続く「テロとの戦い」をスタートさせる。

■アメリカの綺麗事が全部なくなった

ジャーナリストの野口修司氏

 テロとの戦いで大きく変わったのは、「アメリカの綺麗事が全部なくなった」(モーリー氏)ことだ。中でも、ビンラディンのスーダン潜伏時代の話は、9.11の前後を比較する上で象徴的な話かもしれない。ビンラディンはアフガニスタンにおける旧ソ連との戦いで身を投じた後、出身国のサウジアラビアに戻ったが、米軍の駐留問題で王家と対立。90年代の前半から半ばまではスーダンに亡命し、テロ活動を行っていたとされる。

 このことについて、安全保障に詳しいジャーナリストの野口修司氏は、

「アメリカは、『テロ国家を作りあげている』ということで、スーダンに経済制裁をかけたんですね。そのとき、スーダン政府はビンラディンの身柄を引き渡すと言ったんですが、アメリカは受け取らなかった。なぜかというと、あのときは9.11の前ですからアメリカは法治国家で、しっかり法の裁きを受けさせようと。その場合、数々のテロの計画や実行もあったが、法的に米国内で有罪にできないだろうという判断があった」

と解説を加える。しかし、9.11以降は、「戦争だから何をやっても良いと。なりふり構わない」(野口氏)という状況に。事実、各地で米軍による拷問や誤爆が問題になったし、ビンラディンの殺害にしてもパキスタン政府の許可を取らない作戦行動だった。

 国民の同意もこれを後押しした。野口氏は、「9.11によってアメリカ国民はPTSD(心的外傷後ストレス障害)にかかった」と表現する。
 

「アレ(9.11)が常に甦って来る。アレを防ぐためには何でもやる。取材で年間何回も飛行機に乗るんですけど、あの誇り高い、人権だなんだというアメリカ人が空港の身体検査に応ずるんですよ。あれを見ても、アメリカ人は本当に覚悟しているんだなと」

 この他にも愛国者法などによってプライバシーが制限されたり、アラブ人を中心に外国人差別が問題になったりと、9.11はアメリカ人の生活に大きな爪跡を残している。

■日本人は忘れっぽい?

今井彰氏

 しかし、自衛隊の派遣はあったものの、日本人が当事者意識を持つのは困難。「映画のような」という言葉に表れるように、どこか「遠い目」で見てしまいがちだ。

 これについて今井氏は、

「政府は福島原発のことで、防潮堤の話ばかりをしているが、原発がテロの標的になったら、どういう対処をするのかというのがとても不安。何せ福島原発の凄まじい様を世界中のテロリストに見せてしまった。日本人は、もっと危機意識を持ったほうが良いのではないか」

と警鐘を鳴らし、野口氏も内部告発サイト・ウィキリークスによって、日本にもテロ対策が必要な施設が何カ所もあったことが分かったのに議論があまり出なかったことや、地下鉄サリン事件が風化していることを指摘した。

 いつまでも事件を引きずらないのは、「社会の強みでもある」(モーリー氏)という見方もできるが、「なりふり構わない」アメリカとは対照的だ。しかし、これは日本人が「忘れっぽい」というよりは、「忘れようとしている」からなのかもしれない。

 今井氏は、

「9.11だけが原因ではありませんけど、この10年間で鬱病になった人は2.4倍になった。その心の病は、必ずしもサラリーマン生活や組織の問題だけじゃなくて、社会全体に対する不安に色濃く根ざしているんじゃないかと思うんですね」

と語る。同盟国である日本も狙われるのではないかという不安、あのアメリカが直接攻撃されたという価値観の揺らぎ。元テレビマンの今井氏は、マスコミに対する不信感もこの延長上にあるのではないかとし、日本もこの10年で「さまざまな媒体から情報を集め、自分の価値観を探す時代に入った」という見方を示した。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「アメリカ国民はPTSDにかかった」部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv62798235?po=news&ref=news#1:11:53
・[ニコニコ生放送]「日本の変化」部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv62798235?po=news&ref=news#1:11:53

(野吟りん)

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