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全米で大ヒットスタートの映画『デッドプール』、ライアン・レイノルズとコミック原作のR指定映画は、どのように復活を遂げたのか

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映画『デッドプール』の記録破りの大当たりは、まさに2つのカムバックの物語である。

1つは、主演のライアン・レイノルズの再起だ。同作が全米で公開され、初週の興行成績が発表されるまで、この容姿端麗な俳優は窮地に立たされていた。

レイノルズは映画『あなたは私の婿になる』、映画『[リミット]』に出演した後、次なる大役に任命された。彼が出演した次の2作品、映画『グリーン・ランタン』と映画『ゴースト・エージェント/R.I.P.D.』は大失敗し、彼は大物俳優の座から陥落した。このことが、映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』のような作品で、ヘレン・ミレンのサポート役に甘んじる状況に、彼を追い込んだと思われる。

しかし、そんなレイノルズは『デッドプール』で復活を遂げた。彼は外見の醜い傭兵を演じ、その歪んだ世界観から、世界を救うと同時に道徳的秩序をも切り裂いてやろうと考える、最高のコスチュームに身を包んだ復讐者へと変貌した。ある意味で、レイノルズがこれまで演じてきた人当たりの良い主人公の役は、彼が持つコメディの才能を十分に活かしきれていなかったと言える。映画とは、俳優の意思がその役に入り込むものなのだ。

デジタル市場分析を行うコムスコア(ComScore)のシニア・メディア・アナリスト、ポール・デルガラベディアンは「本作はレイノルズにとってのアイアンマンだ」「ロバート・ダウニー・Jrがアイアンマンそのものだったのと同様に、彼以上にデッドプールにふさわしい俳優はいない」と述べた。

『デッドプール』が興行成績で成功を収めたことは、コミックを原作とするR指定映画の復興にもつながる。映画『ウォッチメン』、映画『キック・アス』、映画『パニッシャー』のような失敗と失望は、このジャンルを奇抜な作品という立場に追いやる恐れがあった。よく知られた見識として、スーパーヒーロー映画が観客を最大限に動員するためには、PG-13に指定される必要があるとされていた。

『デッドプール』が公開初週末に全米で1億3500万ドルを獲得したことで、レイノルズは今後もシリーズ化される作品の主役の座を手にし、将来の脚本とプロジェクトの選択権を得た。同作を手掛ける米FOXは、すでに続編の製作を始めている。

レイノルズにセカンドチャンスが与えられた理由の1つには、彼自身が持つ人間的な魅力があるかもしれない。業界幹部らは、出演した映画に関して意欲的にキャンペーンを行う彼を常に称賛し、親しみやすい俳優として認知してきた。レイノルズの映画がつまづいた時も、幹部らにその不幸を喜ぶような様子は見られなかった。それは、シャイア・ラブーフがウォルグリーンズ(米国のドラッグストア)に不法侵入したり、ブロードウェイ・ミュージカル『キャバレー』のキャストに野次を飛ばしてイメージを失墜させた時の反応とは大違いである。

レイノルズの再起はまた、彼の活動の成果でもある。彼は2009年の映画『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』でデッドプールを演じた後、コミックが持つ独特の不遜なスピリットを真の意味で活用し、再びスクリーンに戻るための行動を起こした。

調査会社エグジビター・リレーションズの興行成績アナリスト、ジェフ・ボックは「レイノルズは彼自身の運命をコントロールした」と語っている。

『デッドプール』の下品な言葉を多用する傾向と極端な暴力描写は、飽和状態に達する恐れのあったこのジャンルに新境地をもたらした。米FOXの国内配給部門の代表であるクリス・アーロンソンは、レイティングを「差別化要因」と見なす一方で、R指定の作品にゴーサインを出すのは「多くの勇気が必要である」と認めている。

同スタジオはまだ観客動員の人口統計上の数字を公表していないが、競合他社は『デッドプール』はR指定にも関わらず、幅広い層の映画ファンを魅了したと語っている。その結果、同日公開された他の新作映画に与えた影響は少なくない。米パラマウント・ピクチャーズの映画『Zoolander 2(原題)』、米ワーナー・ブラザースの映画『How to Be Single(原題)』などは、観客を呼び込むのに四苦八苦している。

パラマウントの国際マーケティングおよび配給部門トップのミーガン・コリガンは「映画市場に大作を持ち込むことは誰でもできるが、非凡な才能を持ち込むことは難しい」と語る。

ただ、この状態が長く続くとみる意見は少なく、他のスタジオはすぐに『デッドプール』に続くだろうと予想されている。尽きることないコミック原作映画が市場にあふれ、製作者らは自分の作品を際立たせる方法を模索している。『デッドプール』の成功を受け、ソーシャル・メディア上の興味は、映画『スーサイド・スクワッド』に移行した。コミックの悪役たちがチームを組む本作もまた、成人と親同伴の10代の子供(PG-13)をターゲットにしている。

「いまスーパーヒーロー映画の編集を手掛けるなら、人のテンションを高める言葉使いやアクション、立ち居振る舞いの価値を考えるだろう。観客はそれが大好きなのだから」と前出のデルガラベディアンは語る。

しかし、ただエッジが鋭いという評価を得るためだけに爆弾を投下してはならない。『デッドプール』が見せてくれたように、作品とそのマーケティングの両方が原作に忠実であるべきなのだ。コミコンの観客が同作の最初の予告映像に興奮した理由、そしてデッドプールがトイレに座っていたり、バート・レイノルズのように熊の皮でできた敷物に寝そべっていたりする画像をソーシャル・メディアが受け入れた理由は、それがシリアスになってしまったジャンルにおける気の利いたパロディーだったからだ。それはまさに、コミックに登場するデッドプールと同じだった。彼はカネ目当ての傭兵で、第4の壁(フィクションと現実の境界)を打ち破る人物で、世界を救うことよりも相手を完全にぶちのめすことに夢中になっている。

『デッドプール』に関して、おそらく最もすがすがしいことは、あらゆるスーパーヒーローたちが、地球に迫りくる脅威、いや銀河系規模の脅威、いやいや人類絶滅の危機など、大きな問題に立ち向かっているときに、デッドプールが相手にしている危険の度合いが比較的小さいことだろう。悪者が世界を支配しようとする代わりに、レイノルズは恋人を救ったり、自分を醜い外見の”饒舌な傭兵”に変貌させた人物に復讐したりすることで、頭がいっぱいなのである。

もしかしたら、それが『デッドプール』の最も過激な要素であり、映画製作者らが幾度となく世界の主要都市を破壊させてきたことはもはや新鮮ではない、という重大な警告なのかもしれない。加えて、破壊行為に勝るものはないのだ。映画『フェリスはある朝突然に』のパロディーである。

『デッドプール』が成功した理由は多岐にわたるが、今回の圧倒的な興行成績を受け、窓際に追いやられたと認識されていた2つの要素、すなわち、R指定のコミック原作映画であることと、低迷が続く俳優ライアン・レイノルズは、突如としてトップに返り咲いた。まるで、抵当に入れてあきらめかけていた財産を、取り戻したかのようである。

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