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川崎市中1男子殺害事件で地元の子供たちに前向きな変化

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 2015年2月20日、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で、当時中学生だった上村遼太くんは13才というあまりにも短すぎる生涯を閉じた。上村くんは、幼少期から小学6年生の夏まで島根県の隠岐諸島・西ノ島で暮らしていたが、両親の離婚をきっかけに、母親ときょうだいと川崎へ転居。島に大勢の友達がいた上村くんは、川崎に移り住んでからもすぐに人気者になり、「カミソン」のあだ名で多くの友達ができた。

 そんな彼の命を奪ったのは、公園の遊び仲間だったという年上の少年3人。当時18才だったリーダー格の少年A、17才のBとCだった。Aは殺人と傷害の罪で起訴され、2月10日、横浜地裁から「絶命するまでの間に、被害者が味わわされた恐怖や苦痛は甚大で、その無念さは察するに余りある」とする一方、「生育環境が相当に大きな影響を与えている」として「懲役9年以上13年以下」という不定期刑の判決を下された。

 公判中、嗚咽を漏らしていた上村くんの父親は裁判後、弁護士を通じて、無念の思いを明かした。

「刑が軽すぎると思います。私は納得することができません。遼太の命が軽く扱われているようでかわいそうでなりません」

 判決の日、事件現場となった河川敷には多くの人が集まり、上村くんの同級生と思われる少年や少女の姿もあった。彼らは川崎で、見た目には1年前と同じような生活を送っているが、その心のうちはさまざまな気持ちに揺れ動きながら毎日を過ごしていた。

 河川敷で献花や供物の管理などをボランティアで行う、近隣住民の70代男性が言う。孫娘は上村くんと同じ年だ。

「孫娘が同級生にからかわれた時に、“やめろ”ってかばってくれたのが遼太でね。孫娘に聞いたら、島根からの転校生だっていうから、気にかけていたんだ。転校生はイジメに遭ったりするからね。でも、遼太は明るくてよく笑って、本当にいい子だった。だから殺されたって聞いたときは無念でね…。でもあれから1年、変わりつつある子もいるよ。身近に起きた死をどう受け止めればいいか、子供たちなりに考えている子もいるんだよ」

 あの日から1年。花をたむけ、手を合わせる人は後を絶たない。「あの日から早いもので一年になってしまいましたね。僕は一生忘れないよ」と書かれた手紙も添えられていた。

 事件後、川崎市は、学校にスクールカウンセラーを配置したり、電話相談窓口を開設したり、夜間パトロールを始めるなど対策を講じた。でも、子供たちが変わったのは、そうした“建前の措置”があったからではない。彼らは、この1年間、“上村くんの死”について自分たちなりに思いを巡らせ、自分たちなりに答えを見つけようとあがいていた。

 2月上旬の夕暮れ、上村くんが遊んでいた公園を訪れた。友達と、大好きだったバスケットボールを楽しんでいた場所だ。そこに集まっていたのは4人の少年。女性セブン記者が、上村くんの事件について思っていることを聞きたいと話しかけると、「はぁ~?」と言ったり、「話聞かせて?」と口真似をするなどしてからかってきた。

 あきらめて他の子供を探していると、先ほどの4人組と鉢合わせ。彼らは「まだ探してんのかよ」と呆れ気味に声をかけてきた。

「話聞きたいけど、私も中学生だったら無視しちゃうと思う」と記者が言うと、少年たちは「でしょ!」と笑う。そして「やれやれ」とでもいうような口ぶりで、ぽつり、ぽつりと話し始めた。

「うちも母親しかいなくて、カミソンと同じ。小さい頃に離婚しているから、父親の顔も覚えていない。でも、カミソンのことがあって、前はご飯を食べてるときもずっとスマホいじってたけど、前よりLINEの回数とか減らしている。

 まぁ、だからといって親と話しながらご飯食べるわけじゃないし、会話が増えているわけじゃないけど。母ちゃんと姉ちゃんが話してるだけ。ただ、前と違って何か聞かれたら“うるせえ”って思いながらも答えたりしてる。全部答えると調子に乗るから少しだけだけどね」(14才男子)

 事件について母親に話すことはないし、聞かれたこともない。表面上は家族関係に変化はない。

「でも、カミソンが死んで、人ってあっという間に死ぬんだな、と思った。だから今は、働きながら頑張って育ててくれている母ちゃんに感謝する気持ちが、なんとなく出てきたかな」

※女性セブン2016年3月3日号


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