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「正当防衛」か「緊急避難」か?

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「正当防衛」か「緊急避難」か?

Q.

 刑事ドラマの犯人が、「正当防衛だから許されるはずだ!」と叫んでいたりするシーンを目にする人は多いはず。

 さて、次のうちいずれが「正当防衛」(刑法36条)に合致する事例でしょうか?

(1)Xさんは、ヤクザのYにからまれ、Yは「ぶっ殺してやる」と激高。突如としてサバイバルナイフを抜き、それを固く握りしめ、突き刺そうと突進してきました。空手有段者のXさんは、腕に覚えがあり、身を守るために、とっさに手刀で首元を叩き、Yを気絶させました。その後、Yは全治1か月の重傷を負いました。このときのXさんの行為
(2)Xさんは散歩中に、ヤクザのYにからまれ、Yは拳骨で殴りつけようと猛突進してきました。「危ない!」と思ったXさんは、身を守るために、無断で他人の家の敷地に入り、施錠されていなかった玄関ドアから宅内に上り込んで身を隠しました。このときのXさんの行為

A.

正解(1)ヤクザYにからまれ、身を守るためにYを気絶させ全治1か月の重傷を負わせたXさんの行為

 正解は(1)です。刑法36条1項で規定される正当防衛は、「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」とされており、「急迫不正の侵害」「侵害の不正性」「自己または他人の権利防衛」「相当性」「防衛の意思」が必要だとされています。

 (1)の事例では、ナイフで切りかかられており「急迫不正の侵害」「侵害の不正性」が認められます。「身を守るため」にした行為ですから、「自己の生命という権利を守るため」と言えますし、「防衛の意思」もあります。
 サバイバルナイフで命を奪おうと突進してきているのに対して、手刀で叩く程度ですから(結果的に全治1か月だったとしても)「侵害に対して防衛行為の相当性」も肯定されるでしょう。したがって正当防衛は成立します。

 一方、(2)の事例は、侵害行為に対して真正面から応じるのではなく、権利を守るために、「他人の家に無断で上り込む」という第三者の権利を侵害しているケースです。
 これについては、刑法37条1項で「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない」とされる「緊急避難」が成立します。

 正当防衛か緊急避難かの行為の態様における違いとは、簡単に言えば「侵害してきたものに対する防衛行為(急迫不正の侵害に『対して』とあるため)」か「権利を守るために第三者への権利侵害を認めるか(『現在の危機を避けるため』として、侵害への対抗関係に言及していない)」にあると言えます。

 そのほかにも、法律の学問上の議論として、
・正当防衛が成立する際に、緊急避難は成立しないのか。
・正当防衛と緊急避難における「やむを得ずにした行為」のハードルはどっちが高いのか。
・どのような具体的な違いがあるのか。
などがあります。

元記事

「正当防衛」か「緊急避難」か?

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