京都の学生なら一度は行ったことがあるかも?サークルの新歓コンパで連れて行かれた伝統の居酒屋
京都で始まる、俺の新しい物語
「注目ー! 新歓コンパにお集まりのみなさん! 今からお店に向いまーす! このツンツン頭の奴が先頭歩くので、見失わないようについていってくださーい!」。
集合場所は河原町交差点の高島屋前。今日はキャンパスでチラシをもらった学生劇団の新歓コンパだ。正直演劇とかあんまり興味が無いのだけど「新入生は無料だから!」としつこく勧誘されたのでノリで参加することにした。
2浪してやっと入った憧れの京都大学。これからどんな学生生活が待ち受けているんだろう。
「なぁなぁ、自分どこ出身なん? 俺は枚方やねん。せやから通いやわ。あ、俺は山本いうねん。ヤマちゃんでえーで」店までの移動中に声をかけてきた、いかにも関西人で人懐っこい笑顔の……ヤマちゃん。こいつとこの先腐れ縁になるだなんて、この時はまだ知るよしもなかった。
地球屋との出会い
「ここでーす!」高島屋前から3分ほど歩いただろうか。ツンツン頭の先輩が後ろを歩く集団に声を掛けて立ち止まった。そこには「地球屋」と書かれた看板。
地球屋……変わった名前の店だなと思いつつ、ツンツン先輩について店内に入る。うわっ、この店、ポスターだらけじゃん。
「なんやこれ! やばいなー! めっちゃアングラやん! かっこえー」
ヤマちゃんは思ったことが全部声に出るタイプみたいだ。
「先輩、ポスターやばいっすねぇ!」
「ああ、全部お客さんが貼っていってんねんで。ほらコレは俺らの劇団の。去年の公演のや」
そう言ってツンツン先輩は天井を指差す。
へぇ。ちょっとカッコいいじゃん。
「うわ、なぁなぁ、見てこれ! 中田ヒデが現役時代の新聞やで! やっば! いつのん??」
「こっちもヤバイで! なんやねんこのらくがき。アホやなぁ」
ほんとに……アホだな。
「うわ! 漫画家のサインがあるで! やっば!」
ヤマちゃん、さすがに本物じゃないと思うよ……
「トイレが解放軍やて! うけるわー」
たしかに尿意からの解放……はあると思う。
「ほらお前ら、ハシャいでないで席座れ。今日は団体予約してるから。奥のテーブルな」
ぞろぞろとみんな店に入ってきた。壁や天井一面のポスターに驚いていてキョロキョロしているのは俺らと同じ新入生だなとわかる。先輩たちはみんな常連のようだ。
「この店、飲み放題とか無いけど、安いからさ。それに新入生はオゴリだから。今日は好きなだけ飲み食いして行って」
と声をかけてくれたのは向かいの席に座った物腰の柔らかい黒縁メガネの先輩で3回生だそうだ。
予約は50人くらいまでOK。
※飲み放題、食べ放題等ございませんが¥2,000〜2,500で十分満足して頂けます。
「アザース。ところで先輩らはこの店よく来はるんですか?」
ヤマちゃんは3回生の先輩にも物怖じせず話しかける。
「うん。打ち上げはだいたいこの店かな。居心地良いし、安い美味いし。ある意味うちの劇団の伝統かな。劇団の設立当時からあるお店だから。たしか40年以上も営業してるとか」
へぇえ。そうなんだ。
「あと僕も聞いた話だけど、昔この店で打ち上げしてたある先輩が、隣のテーブルで飲んでた女の子と意気投合して、結婚したらしいよ」
「まじっすか! 俺にも出会いあるかな??」
ヤマちゃん食いつきすぎ……。
そうこう話しているうちに、みんな席についたようだ。乾杯のドリンクが並び、劇団長が挨拶をはじめた。
「新入生のみなさん入学おめでとう! これから始まる学生生活、うちの劇団に入るとめっちゃ楽しいで! 先輩のみなさん、楽しいよな? ほな、とりあえず乾杯しよか! 乾杯ー!」
たらふく飲み食い
そこからその日の記憶がほとんど無い。2浪で20歳だとバレたのでしこたま飲まされたのだ。ご飯が美味しくてたらふく食べたことだけは覚えている。
あと名物の皿うどんがデカかったことも覚えている。
(皿うどん600円+消費税)
じゃがバターは甘くてホクホクだった。うますぎてバター汁まで飲んでしまった。酔ってたんだな……。
じゃがバター350円+消費税)
ポテトサラダ+たっぷりのツナマヨ+コーンにお野菜のサラダ。俺の大好物が山盛りでガツガツ食べてしまった。
(地球屋サラダ600円+消費税)
肉がゴロッデカくてうまかった。ヤマちゃんと取り合いになった。
(豚角煮450円+消費税)
関西風の甘くないだしまき。京都に来たって感じがした。
(だしまき350円+消費税)
牛すじ煮込みはトロットロで溶けそうだった。
(牛すじ肉煮込み450円+消費税)
もうすぐあれから1年……
その後、俺は当然のように劇団に入団した。もちろんヤマちゃんもだ。俺は脚本を任され、ヤマちゃんは明るいキャラを活かしてキャストをやっている。よく2人で地球屋で飲んで語って、なかなか楽しく充実した学生生活を送っている。
あの新歓コンパからもうすぐ1年。そろそろ新しい団員を、地球屋で迎える季節がやってくる。
※本記事は地球屋店主の方から伺いしたお話を元に構成した三文小説です。登場人物は架空ですが、地球屋は下記店舗情報の通り実在します。メシ通レポーターmamitaがお送り致しました。
店舗情報
地球屋
住所 京都市下京区四条河原町下ル三筋目東入ル
電話番号 075-344-6159
営業時間17:00〜23:30
定休日1月1日
阪急河原町駅より徒歩3分
書いた人:
mamita
ひとり結婚式をした人として恋愛コラムからベンチャー企業取材までネット上に文章を書いています。ライター兼アマチュアボクサー。犬2匹+人間3人+夫と共に京都の町家シェアハウスで暮らしています。 黒歴史STORYS:mamita . | STORYS.JP webサイト:三十路でひとり結婚式
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