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第45回 女性との遭遇

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 身柄を拘束されている身分であるから、逮捕以来女性と接することはまずほとんどない。接するどころか見る機会もない。
 ところが6人の女性に遭ったし、そのうち一人とは会話もし、もう一人とは向こうから一方的とはいえ声を掛けられた。残りの二人は後ろ姿を見ただけである。あともう一人。接見にきてくれた女性がいたが、事件の依頼者である。彼女のことは別に書く機会があると思う。
 残る一人は、女性検察官である。

 身柄を拘束されて最初に女性に接したのは宮崎北警察署でのことだった(女性検察官を除いて)。
 中で散髪をすることができるということを聞き及んで、散髪の予約をした。風評では、おそろしく下手で顔を剃られたりすると、いつまでも髭剃り痕が痛くてたまらないということだった。
 それでもあまりに髪が伸びてきたので申込みをすることとしたのだ。まだ起訴される前のことであった。

 いくら待っても呼出しがかからず運動時間に係官に聞いてみると、散髪の人は時々やってくるのであって確実に何日とか何曜日とか決まっているわけじゃないと言われた。
 またそもそも私の場合はまだ被疑者でいつ取調べが入るか分からないのでダメであること、起訴になってからのことだと言われた。言われてみればそのとおりである。

 起訴後、散髪のことなどすっかり忘れていたときに散髪の呼出しがきた。
 係官と共に手錠腰縄状態で留置場を出ると、タバコの入っている棚から私のタバコをピックアップしたではないか。運動のときの2本しか吸えなくなっていた私は喜んだ。思わずうれしい声を出したらしく、係官が「散髪の間吸えるよ」と優しく声を掛けてくれた。

 留置場を出て右に曲がりしばらく行くと左手に理容室があった。そこには中年のおばさんがいた。女性なんだ!とびっくり。
 係官は2メートルほど後ろの真後ろの椅子に控え、両手錠はしたままで散髪が始まった。腰縄を付けたままかどうかは記憶にない。
 このおばさんが話好きで、1時間ほどの散髪時間の間のべつまくなしに、つけっ放しのテレビを見ながら、女優のことや男優のことを話すのである。私は久し振りに見る動く画面のおかげで気分が悪かったが、適当に相槌を打っていた。

 散髪終了後、「もう一服しなさいよ、いいでしょ担当さん」と係官の了承まで得てくれ、この散髪3本目の喫煙となった。その最後の一服の間、スエットに付いている髪をガムテープで丁寧に取ってくれる。「こうやりながら若い人の体を触るのが好きなんよ」と宮崎弁丸出しで言う。なかなか面白いおばさんだった。
 腕前はといえば、風評が単に風評に過ぎないことが確認できた、つまりなかなかのものであった。ちなみに拘置所は、丸刈りしかないそうだ。

 残りの3人は、女性刑務官2人と女性被告人1人である。
 拘置監を入った廊下の突き当りの大きな鉄製の扉が女子房との境であることは前に述べた。別にも出入り口があるのかもしれないが。
 ある日の午前中、廊下の曲がり角のところで女性刑務官と出合い頭にぶつかりそうになった。まじまじと見ることはできないが小柄でなかなか可愛い顔をしていたような気がする。しかし、その性格には疑問符がつく。

 こちらは男性刑務官の誘導で歩いており悪いことはない。だからといってその女性刑務官が悪いということもないが、ぶつかりそうになり、思わず横に飛びのいた私は「すみません」と声をかけた。それがマナーというものだろう。ところが彼女から返ってきたのは「チッ!気をつけなさい」という声だった。
 人格を疑ってしまうような態度である。隔絶された世界でしかも被告人や受刑者を相手にしていると、ときとして常識が培われなくなるが彼女もその類か。

 最後に会ったのも女性刑務官である。接見に行く途中であろうか女性被告人と一緒だった。
 男性房との区切りの鉄製扉からちょうど出てきたときに、接見帰りの私と出会った。
 男性女性を問わず相互に顔を合わせないようにするために、出会った場合にはどちらか一方が刑務官の指図で壁の方を向いて立ち、他方をやり過ごすことになる。
 このときは、女性らが壁を向いたのでそのまま私は歩いて行ったのだが、女性刑務官も女性被告人も若かった。(つづく)

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第45回 女性との遭遇

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