Album Review: ヘリオスら新たな感性を通じてニルス・フラームの名盤が再構築された『Screws Reworked』

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Album Review: ヘリオスら新たな感性を通じてニルス・フラームの名盤が再構築された『Screws Reworked』

 ここ数年、ちょっとしたムーヴメントとなっているジャンルレスなピアニスト。そのなかでも、突出した存在のひとりが、ニルス・フラームだ。ドイツのベルリンを拠点にし、一作ごとに斬新なコンセプトで作品を発表し続けている。

 そんなニルスの作品中、もっともユニークなのが、2012年に発表した『Screws』だ。左手の親指を負傷し、ボルトを4本も埋め込んだ彼は、ある日「9本の指で9曲の短い楽曲を作ろう」と思い立つ。そして出来上がったのが本作だ。曲タイトルも、1曲目が「You」で、9曲目が「Me」、そしてその間には、「Do」「Re」「Mi」「Fa」「Sol」「La」「Si」と名付けられているのが面白い。ノイズ混じりで真夜中のつぶやきのような小品群はとても内省的で個人的だが、それだけに聴く者の心を打つメロディが奏でられる。

 そんな名盤を、まるごとリミックスしたヴァージョンを加え、新装で再リリースしたのがこの『Screws Reworked』。ヘリオス(キース・ケニフ)やフレッド・ヤダデンを筆頭に、アンビエント、エレクトロニカ、ダウンテンポ、ポスト・クラシカルなどのアーティストが9組参加。新たにストリングスなどの楽器を加えたり、プログラミングで深淵にコーティングするなど、原曲とはまた違った味わいに仕立て上げている。タイプは様々だが、共通するのはメロディを引き立たせ、ピアノの質感を崩さないところ。逆に言えば、ニルスの音楽へのリスペクトを表明したリワークばかりなのだ。

 名作が、新たな感性を通じて生まれ変わり、さらに名作を生む。理想のリワークがここにある。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『Screws Reworked』
ニルス・フラーム
2016/01/24 RELEASE
2,808円(tax incl.)

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