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オウム事件から目を背ける社会――「A2」監督・森達也氏が語る

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森達也氏

 なぜ、オウムはサリンをまいたのか――。2011年8月24日から25日にかけて放送された「ニコ生ノンフィクション論」では、オウム真理教をテーマにしたドキュメンタリー映画「A2」(2001年)を上映。映画の前には特別企画として、監督の森達也氏、オウム幹部も出演経験のある「朝まで生テレビ」のディレクターとして活躍した山口栄一氏、ノンフィクションライターの藤井誠二氏による鼎談を行った。

 森監督は「A2」のほかにも、前篇の「A」とその関連書籍や単行本「A3」といった作品を世に出し、オウムを継続取材している。地下鉄サリン事件以降、日本社会が大きく転換した一方で、「何がどうしてこうなったのか、しっかり知らないと歴史的に大きな禍根を残す」と警鐘を鳴らす森監督は、

「オウムって皆知ってはいるんですよ。でも、彼らがなぜ地下鉄にサリンをまいたかという一番大事な動機の部分が、実は全然分かっていない。法廷でもそういった努力はなされなかったし、メディアもある意味、放棄してしまった」

と取材を続ける動機を明かす。

■オウム事件の衝撃と集団化

 森監督は、事件の全貌が解明されていない理由のひとつとして、事件のキーマンである元教祖・麻原彰晃(本名:松本智津夫)が裁判の途中で精神的に崩壊してしまい、話を聞き出せなくなったことを挙げる。この点については、精神障害を装っているなどの意見もあり、裁判では精神鑑定の結果から、手続きを理解する「訴訟能力」があるとしている。しかし、監督は何年間も人と話さない、面会に来た実の娘の前でのマスターベーションなどの行動は障害を装ってできることではないとし、「治療してから改めて裁判をしよう」とした弁護士側の主張を支持している。

 だが、こういう声を上げようものなら、「麻原を擁護するのか」と世間から激しいバッシングを受ける。監督自身は視聴者からの批判コメントに対しても、「死刑執行させるなとは誰も言っていない。ちゃんと裁判をやりましょうと言っているんですよ」と揺るがないが、こうしたバッシングを避けるために、司法は早足の判決を出し、メディアもそれを支持する。結果として、オウム事件の全貌がつかめず、何の教訓も得られないという現状が生まれているという。

 森監督はこのバッシングの源である「集団化」の心理が、オウム以後の社会の大きな変化だと感じている。

「要するに怖いんですよ。9.11以降のアメリカを考えれば分かりやすいかもしれないけれど、皆でまとまろう、ひとつになろう、邪悪な敵と戦おう、と。その連帯の中で、もし異質なものがいたら排除しようという社会状況、意識が毎年毎年強くなっている」

 こうして、オウム事件によって生まれた不安を打ち消すために、「悪」であれば、既存の制度や手続きを省略して「早急」に「重い」罰を下すことを是とする風潮が生まれる。また「悪」を見つけてくれと捜査権力の背中を押す風潮が生じ、捜査権力が無理をすることで冤罪も増えてくるという。

 まとめとして監督は、

「見えているはずなんだけど、ちゃんと認知していない。そういう現象がすごく多い。もちろん、すべてに焦点を合わせては、人間生きていけないけれど、オウム事件は社会を考える上ではものすごく重要なことだと思っています。今からでも遅くはない。事件について、皆が考える、悩む、煩悶する、何が理由だったのか、それを考えるだけでも随分違うと思います」

と語った。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「オウム事件から目を背けている」から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv60722367?po=news&ref=news#32:37
・[ニコニコ生放送]映画「A2」上映から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv60722367?po=news&ref=news#1:01:23

(野吟りん)

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