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弟が姉の自宅の倉庫から2億円を窃盗

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 金属回収業の姉が管理する山口県宇部市の倉庫から現金約2億円を盗んだとして、山口県警宇部署は7日、弟を窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕しました。逮捕容疑は、2015年11月9日から10日の2日間に、宇部市内にある実姉の自宅にある倉庫に侵入して、現金約2億円を盗んだ疑いとのことです。
 2億円という金額は大きすぎてさすがにありえませんが、昔お小遣いが足りなくて両親の財布からお金をとってしまった…という苦い経験をお持ちのかたもいらっしゃるのではないでしょうか?実は、法律は家族や親族間の犯罪について特別の規定を設けています。
 今回はその規定について見てみたいと思います。

 刑法は、配偶者や直系血族、又は同居の親族との間で窃盗罪、不動産侵奪罪等特定の犯罪が行われた場合(未遂も含まれます)について、刑を免除するとしています(刑法244条1項)。
 その他の親族の場合には、告訴がなければ公訴を提起することができないとして、親告罪としています(刑法244条2項)。この特例のことを「親族相盗例」といいます。

 なぜこのような規定が設けられたかというと、親族間の一定の犯罪については、国家が刑罰権を控え、親族間の自律に委ねるほうが望ましいという政策的な配慮によるものです(最決平成20年2月18日)。儒教的な家族観の影響を受けているとも言われています。
 この規定が適用される結果、姉弟が同居していれば刑が免除され、同居していない場合でも姉の告訴がなければ裁判を行うことはできません。

 親族相盗例が適用される範囲ですが、犯人と窃盗の目的となった物を現実に保持していた人(占有者)との間のみならず、その物の所有者にも親族関係がなければ1項は適用されません(最決平成6年7月19日)。
 つまり、一緒に住んでいる父親の鞄から高級時計を盗んだけれども、その時計は実は父親が職場の同僚から預かったものであったという場合には、親族相盗例は適用されず、犯人は窃盗罪で処罰されることになります。

 また、1項の配偶者は、法律上の婚姻関係にある夫や妻に限られ、事実上の婚姻関係にある内縁者は含まれません(最決平成18年8月30日)。内縁の妻が、内縁の夫の財布から無断で金銭をとった場合には、窃盗罪が成立してしまうことになります。
 免除を受ける人の範囲は明確に定める必要があるという理由から内縁関係には認められなかったようですが、家族のあり方が多様化し、事実婚という形態も増えてきている今日、この結論を疑問視する声もあるようです。

 最近で、親族相盗例の適用が否定されたという例としては、家庭裁判所から選任された成年後見人(成年被後見人の義父)が、預かり保管中の成年被後見人の預貯金を引き出して横領したケースです。
 裁判所は、成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、その財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているということを理由に、親族相盗例の準用を否定しています(最決平成24年10月19日)。

 親族相盗例のように刑法が親族に対する例外を認めているものとしては、犯人隠匿罪・証拠隠滅罪についての特例を定める105条、盗品等関与罪についての特例を定める257条などがあります。

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