「自分には何ができるのか」――ベンチャーに飛び込み、600人を超えるマネジメントを経験した株式会社サイバー・バズ社長が考えるマネジメント論

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「自分には何ができるのか」――ベンチャーに飛び込み、600人を超えるマネジメントを経験した株式会社サイバー・バズ社長が考えるマネジメント論

サイバー・バズの代表取締役を務める高村彰典さんは、立ち上げ期のサイバーエージェントに入社し、マネージャー、営業統括、統括本部長、取締役を歴任。その後2010年10月から子会社サイバー・バズの社長に就任。ITベンチャー黎明期を経験し、さまざまなサイズの組織を見てきた高村さんが語るマネジメント論とは―――。

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高村彰典さん/株式会社サイバー・バズ 代表取締役

1974年生まれ、岡山県出身。青山学院大学を卒業し、1997年に興和株式会社へ入社。その後1999年に株式会社サイバーエージェントへ入社する。インターネット広告代理店事業にてトップセールスを誇り、マネージャー、営業統括、統括本部長を経験。2005年にはサイバーエージェントの取締役へと上り詰める。その後5年間取締役を務め、2010年10月に株式会社サイバー・バズ代表取締役に就任。

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「自分には何ができるのか」

高村さんが社会人となった1997年、そして翌年の1998年は、山一證券や北海道拓殖銀行のような、決して倒産しないだろうと思われていた会社が相次いで倒産した年だった。時代の変化を感じ取った高村さんは、大きな会社で働き続けるよりも、スピード感のあるベンチャー企業で経験を積み、「自分でやる力」を身につけることが重要だと感じたのだという。

そこでまだ立ち上げたばかりのベンチャー企業だったサイバーエージェントへの転職を決意。これまでとは全く違うスピード感の中で仕事を続けた高村さんは、やがてサイバーエージェントの取締役を担うほどに上り詰める。

最初は4~5人のグループから数百人の組織まで、大小さまざまな組織をマネジメントしていく中で磨かれた、高村さんのマネジメント論を聞いた。

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「数字」から「組織作り」へと視点が変わった営業統括時代

プレーヤーからマネージャーへ、苦労を乗り越えながらもステップアップを続けた高村さんは、とあることを契機に、社長の藤田晋氏から急きょカンパニープレジデントという、当時の営業組織全体を見る役割に抜擢されることになる。マネジメント対象が4~5人から一気に40~50人まで増えたことで、高村さんはかつてない危機を味わうこととなる。

「営業を全部見ろ、と言われたのが27~28歳の頃。マネジメント経験も浅かったので、最初の内はこれまでやってきたマネジメント方法を踏襲し、結構細かいところまでみていたんです。でも、それを続けていたら人がどんどん辞めてしまって。採用しても採用しても人が辞めていく。その結果、勢いよく成長を続けるインターネット広告市場において、売上が横ばいになる、という状態にまでなってしまいました。

あの頃は本当に苦労しました。自己否定を繰り返し、考え方を大きく変えるようになりましたね。数字のことばかりではなく、どうやったら離職率を下げられるか、どうすればみんなのモチベーションが上がるのか、ということを考えるようになり、それに伴って色々な打ち手、仕組みを入れました」

たとえばコミュニケーションを密にするため、さまざまなメンバーと定期的に「飲み」に行く仕組みを作ったり、互いを褒め合う「トピックスメール」という仕組みを作ったりし、社員が離れていかないための工夫・仕組をどんどん導入していった。このときの経験が、後の高村さんのマネジメント論に強く影響を与えたらしい。

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サイズの違う組織を見てきた中で培われたマネジメント論とは

その後統括本部長として、インターネット広告事業本部全体を見るようになる。マネジメント対象のメンバーも600人にのぼったという。

「マネジメントは30~40人くらいまでなら何とか一人でも見ることができる。ただそれを超えるとミドルマネジメントのポストが機能してこないと組織が崩壊し始めるので、50人以上の規模になったらミドルマネジメントの育成の重要度が非常に大きくなります。さらに100人を超えてくると、『仕組み作り』をしないことにはうまくいかないということをこれまでの経験から学びました。

ミドルマネジメントの人選はとても重要ですが、自分自身の失敗経験も踏まえて、定量評価4割・定性評価6割くらいで考えるようになりました。組織貢献という軸や、その人自身の人間性など、数字に表れない部分をより重視して、適材適所を心掛けていましたね。

また、人の重要性は強く感じていたので、全社員の顔と名前を一致させて、フラッとオフィスを歩きながら社員の表情をチェックしてました。パトロールなんて呼ばれてましたが(笑)」

そんな高村さんがマネジメントをしていく上で重視していることのひとつが「メッセージの浸透度」だ。

「いかにわかりやすくメッセージを伝えるか、という点はかなり工夫を重ねました。人が多くなるほど、そして内容が多く、複雑になるほどメッセージは伝わらなくなる。社員総会などでメッセージを発信した後、それぞれのメンバーに『どうだった?』とヒアリングすると、想定以上に伝わっていないという事がよくありましたね。だから、まずはとにかくわかりやすく簡潔なメッセージにすることを心掛け、同時にミドルマネジメントに対しては、各メンバーに背景を含めて丁寧に説明することを求めました」

多くの社員をまとめあげ、ひとつの方向に向かって動かしていく。その上でメッセージを伝えるというのは重要なパートを担う。だからこそ、伝える側の工夫と努力が求められるのだ。

その後も順調にキャリアを重ね、30歳になり独立を考え始めたころ、藤田氏よりサイバーエージェントの取締役就任を打診され、上場企業の取締役を経験できる機会はそうそうない、と就任を快諾。

「役員会の会話についていけるようになるのには半年はかかりました。代理事業とはかけ離れた、ゲームについての会話なども当然されるし、視野の広さや情報量などはこれまでとは全然違いましたね。わからない言葉は全部メモして、あとでいろんな人に聞いて回りました」

忙しい役員が集まる経営会議の場で、用語の解説などを求めるわけにもいかない。持ち前の「自走力」でとにかく学んでいった高村さんは、その後インターネット広告代理事業管轄役員、代理事業子会社管轄役員を歴任することになった。

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変化の早い時代に求められる、ひとつの自問

役員に就任して5年が過ぎたころ、高村さんの中では「どうしても自分で事業がやりたい」という思いが強くなっていった。当時は市場がガラケーからスマホへとシフトし始め、検索がメインだった情報取得経路に、ソーシャルメディアが名乗りを上げ始めた時期。

新たなチャレンジをするには、いい頃合いだった。

そこで独立をしようと考えていた矢先、子会社のサイバー・バズの経営陣を刷新しようとしている、という話が入る。高村さんは、迷わず手を挙げた。

しかしサイバー・バズの社長として再チャレンジをしていく中では、さまざまな困難があったという。

「元々スマホのサービスを作れる会社にしたいと思っていて、サイバー・バズの強みでもある、ソーシャルメディア上でのコミュニケーションに価値を生み出す仕事をしたいと思っていました。最初はネイティブアプリをメインで行くつもりだったけれど、なかなかうまくいかない。1億~2億投資をして、一定のユーザーがついてきたアプリであっても、撤退の判断を下したものもありました」

変化の早い環境下で、いかに良いサービスを生み出せるか、現在高村さんの仕事の大部分はそこに割かれている。良いWebサービスはすぐに真似されるため、先行者メリットが享受できるか、あるいは圧倒的な差別化要素が存在するか。特に意識しているのはその部分だ。

各社員からも新規事業のアイデアを募る中で見えてきた、サービスを考える際に陥りがちな罠があるという。それはユーザーに「期待しすぎてしまう」点だ。

「『いいアイデアが浮かんだ!』というときほど、良い方向に思い込み過ぎてしまう人が多いと思います。冷静に考えれば『ユーザーはそんな行動とるか?』というような内容でも、期待する通りにユーザーは動いてくれるものだと思い込んでしまう。たとえば『アンケートに100問答えてくれたらこんなプレゼントがもらえる』というサービスがあったとして、そもそもユーザーは本当に100問も答えてくれるんだっけ?というところが一切考えられていない、なんていうこともあります。

いいアイデアが浮かんだと思っても、『本当にユーザーは使ってくれるのか?』『本当に広告主は喜ぶのか?』という点は厳しく考えるようにしていますね

Webを取り巻く環境は、スマホの登場以降加速度的に変化が早くなっているように思われる。そんな時代に必要な人材とはどういった人材なのか、最後に高村さんに尋ねてみた。

すると返ってきた答えは、約20年前に高村さんが自問したあの言葉だった。

「環境適応力、みたいなものは今後より強く問われてくると思います。変化が激しい時代である以上、今当たっているサービスが長続きするとは限らない。もちろん自社サービスへの愛情や愛着は重要だけれど、最悪のケースを想定するというか、仮にそのサービスがなくなった時にどうするか、自分に何ができるのか、と常に自問し、次の一手を考えていける人材が、今求められているのではないでしょうか

「自分には何ができるのか」

20年の時を越えてなお、高村さんが自問し続けるテーマこそ、この時代を生きるすべてのビジネスパーソンが強く考えていかなければいけないものかもしれない。

監修:リクナビネクストジャーナル編集部

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