体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

トム・ヨークも活用する音楽配信&販売サイト「Bandcamp」の魅力

2015年は「Google Play Music」や「Apple Music」といった大型の定額音楽配信サービスがスタートし、無料でストリーミングし放題(定額配信もあり)の「Spotify」も日本上陸の気配を見せるなど、iTunesが普及して以降、音楽の聴き方の主流になるといわれてきた「CDから配信へ」という流れが一層顕在化した年だった。

しかし、CDが音楽メディアとして、かつての勢いを失いかけている一方で、近年は「アナログ復権」といわれるように、世界的にレコードやカセットテープの売り上げが伸びており、それらアナログメディアにオマケとしてMP3のダウンロードコードを付けて販売するスタイルも一般化している(もっとも、「伸びている」といってもレコードの売上は音楽市場全体のわずか2%であり、カセットはさらにニッチな市場ではあるが)。

ここで、「カセット?」と思った人もいるだろう。というか、20代以下の世代はカセットテープ自体を知らない人もいるかもしれない。だが、2000年代後半以降、特にインディペンデントな音楽シーンでカセットはじんわりと盛り上がりを見せ、現在進行形で新譜がカセットでリリースされ、モノによっては熾烈な争奪戦が繰り広げられている。

そんなアナログとデジタルが並存する場のひとつとして、「Bandcamp」を紹介したい。

Bandcampはファンがアーティストを直接「サポート」できる仕組み

Bandcampとは、2008年にアメリカでローンチした音楽配信・販売プラットフォームである。そこではさまざまなアーティストやレーベルが、デジタル音源はもちろん、フィジカル(アナログレコードやCD、カセットテープといった物理的メディア)も販売している。アップされた音源はすべて無料で試聴でき、ファンは気に入ったものがあれば購入するという、いたってシンプルなつくりだ。

2016年1月現在、サイトのトップページにはこんな一文が記されている。

「これまでにBandcampを通じてファンがアーティストに支払った総額は1億3,900万ドル(約164億円※1ドル=約118円)にのぼり、直近の30日間のみで400万ドル(約4億7,000万円)がアーティストの手に渡っている」

ここには、Bandcampのコンセプトが端的に表れている。すなわち、「アーティストにちゃんとカネを回す」こと=(特にインディーズの)アーティストをサポートすることだ。そんなBandcampの最大の特徴は、アーティスト自身が自由に音源の価格を決められる点にあり、多くのアーティストがデジタルアルバム1枚あたり”$7 or more”(7ドル以上)のような価格設定にしている。

この”or more”には「サポート」や「カンパ」といった意味合いが込められており、要するに「7ドルで買えるけど、めちゃくちゃ気に入ったから10ドル払っちゃおう」とか「これからもコンスタントに音源をリリースしてほしいから、活動資金の足しに」みたいなノリでファンが自発的に価格を上乗せすることができる。そのため、アーティストが設定した最低価格を、ファンの平均支払額が上回るケースもある。

このような「サポート」型の価格設定を突き詰めたのが、”Name Your Price”(価格はあなたが決めてください)だ。

これは、0ドルでも1ドルでも100ドルでも、ファンは払いたい額をアーティストに払えばいいというものだが、無料で手に入る音源にお金を支払ったとき、ファンはいったいなにを買ったのか……デジタル音源の購入がときに単なる”購買行動”以上の意味を持つのが、BandcampがAmazonやiTunesと決定的に異なる部分だろう。

1 2 3次のページ
TIME & SPACEの記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。