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生涯所得を数千万円変える“本当の”情報格差/若者よ書を求め街へ出よ?

デマこいてんじゃねえ!

今回はRootportさんのブログ『デマこいてんじゃねえ!』からご寄稿いただきました。

生涯所得を数千万円変える“本当の”情報格差/若者よ書を求め街へ出よ?

私の趣味はボードゲームで、休日には友だちと集まってわいわい遊んでいる。

ボードゲームはいい。まずカネがかからない。そして一晩中でも遊んでいられる。学生、サラリーマン、フリーター、派遣、ニートetc……かなりヘテロな仲間たちがゲームひとつで仲良くなれる。

あれは友人宅でドミニオン合宿を開いたときのことだ。その家の本棚のすばらしさに目を奪われた。

     ◆

その友人は――自分より一回り以上年上の人を“友人”と書くのは抵抗があるけれど、四十路を回ったばかりのイケメンなおっさんで、職業はデザイン関係、国立K大学の出身であり今はフリーランスで活躍している。広々とした一戸建てに暮らし、小学生の子どもが二人。絵に描いたようなリア充だ。家の内装は彼自身の手でデザインしたという。

そして、本棚があまりにも理想的だった。

腰ぐらいの高さの本棚が、リビングの壁の一面に沿って並んでいた。薄くて固い木板を組み合わせた、とてもシンプルなデザインだ。ラインナップは『腹ペコあおむし』から始まり、『シートン動物記』や『大草原の小さな家』シリーズ、『ずっこけ三人組』はもちろん、ミヒャエル=エンデや『ああ、無情』へと続き、最終的にはピンチョンの著作までそろっている。絵本→児童文学→大人向けの一般書籍と、子どもの成長段階に応じた名著たちだ。ソファに寝っ転がりながら心ゆくまで本を読める、読書好きにとっては夢のような空間だった。思わず「ここに住ませてください」と土下座したのは言うまでもない。もちろん断られた。

この家で育てば、子どもはごく自然に読書好きになるはずだ。すべての本が子どもの手に届く高さにある。少なくとも、活字に対する抵抗はなくなる。「マンガはないんですか?」と聞いたら、二階に専門の部屋を準備してあるのだとか。なんだよその夢空間。マジでここに住まわせてください。

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帰り道、別の友人が「あの家は恵まれすぎている」と漏らしていた。こちらの友人は鳥取県の出身で、山深い農村に育ったという。実家は昔ながらの農家なのだが、驚くべきことに本棚がなかったというのだ。図書館は自転車で一時間かかる隣村にしかなく、村で唯一のコンビニ(というか商店)の貧弱な雑誌コーナーだけが、書物を手にすることのできる場所だった。そんな環境だから、家族は誰も本を読まない。中学に上がってからは少ないお小遣いをやりくりして彼は本を買っていた。が、それさえも「邪魔だ」「この根暗め」「無駄遣いしやがって」と罵倒されたという。

小学校に上がる前から「本を読みなさい」と言われた私には、にわかに信じられない話だった。読書習慣のある彼だけが田舎を飛び出し、本を読まない家族は過疎地にとどまっている。

しかし、まあ、鳥取県といえば群馬県と並ぶ日本の秘境だ。群馬では今でも小学生がAK-47を手に命がけで戦っているというが、鳥取県も負けてはいない。県の土地の八割以上が砂漠であり、ターバンと水たばこが手放せない。鳥取県民は赤ん坊が生まれると仔(こ)ラクダを一頭買ってくるという。生まれた子どもはそのラクダと共に育ち、十五歳になるとそのラクダを連れて一か月間砂漠を放浪をする。成人の儀式だ。この放浪の旅は過酷を極め、じつに十人に一人が命を落とすという――なんてふざけたことを書いていると鳥取県民に背中を円月刀で刺されそうだ。

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本を読むヤツは賢くなる――と、一般には言われている。

私もこの考え方におおむね同意だ。なかには読書が好きなのにスットコドッコイの私のような失敗品もあるけれど、基本的に本を読む習慣のある子どもは、そうでない子どもよりも賢くなる。らしい。

問題は、どのようにして読書習慣をつけさせるかだ。

学校の先生たちは、本の魅力を伝えようと日々腐心している。しかし勝負はすでに学校に上がる前から始まっている。読み聞かせなどを通じて、「本には面白いことが書いてある!」とすり込まれた子どもは、なにもしなくても本を読む。大事なのは家庭環境なのだ。

ここでいう家庭環境は、家系環境と言い換えてもいい。

国立K大学卒の友人の場合、おそらく父親・祖父の代からよく本を読む家系だったのだろう。「何歳になったら***を読ませる」というノウハウが蓄積されているし、自分がされたように子どもを育てようとする。あの家庭の子どもたちは将来、親と同じように学問と技能を身につけて高給取りになるのだろう。

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