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手足に力入らず感覚失う多発性硬化症 日本人にも急増

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 脳から出た情報は、神経細胞を通じて電気信号で体中に伝わって行く。神経細胞から伸びる神経の周囲は、ミエリンという皮膜に覆われ、電気信号がスムーズに伝わるようになっている。多発性硬化症(MS)はミエリンが自身のリンパ球の攻撃で障害(脱髄、だつずい)され、脳からの情報が適切に伝わらなくなる自己免疫が関係する病気だ。

 大脳、小脳、脊髄、視神経に病変が起こり、手足に力が入らない、感覚がわからない、突然眼が見えなくなるなど、様々な症状が出る。ところが、発症してもミエリンは回復が早いので、病状が安定して治まれば寛解(かんかい)する。ただ年に何度も再発を繰り返す症例も多い。

 宇多野病院(京都市)多発性硬化症センターの田中正美センター長に話を聞いた。

「MSは北欧やカナダの白人に起こる典型的な病気ですが、この20~30年、日本人も急激に増えています。日本では男女比3対7で女性が多く、世界中で女性患者が増加しています。2004年の全国調査で、発症年齢が以前より若くなっているとの報告があります」

 MSの診断は問診や血液検査、髄液検査、MRIでの画像診断などを組み合わせて行なう。似たような症状を起こす別の病気もあり、再発して初めてMSと診断されることもある。MSは症状が安定していても、脳では顕微鏡レベルの病巣が出没する。重要なのはMSの治療開始前に、症状や経過が類似している視神経脊髄炎(NMO)との鑑別だ。NMO患者にMSの再発抑制剤を投与すると、重篤な再発を誘導するからだ。

 治療は炎症と免疫異常を抑えるための抗炎症療法が行なわれる。急性期にはステロイドで炎症を抑え、その後は免疫機能を調整する治療を行なう。昨年秋に軽症の患者を対象にしたグラチラマー(商品名/コパキソン)が保険承認された。

「この薬は4種のアミノ酸混合物で、作用機序の詳細はよくわかっていません。ミエリンを攻撃するTリンパ球の機能を調整するなどして再発を予防します。1日1回、皮下注射をすれば、現在広く使用されているインターフェロンβと同程度の効果が得られますし、発熱やだるさがないのが特徴です。また内服のフマル酸ジメチルの治験が終了し、2年後には保険承認される見込みです。軽症での治療の選択肢がますます広がると思います」(田中センター長)

 進行したMSにはナタリズマブ(商品名/タイサブリ)やフィンゴリモド(商品名/イムセラ)を使用する。ナタリズマブはリンパ球が神経細胞に入るのをブロックする働きをするが、PML(進行性多巣性白質脳症)のリスクがある。フィンゴリモドは、特定のリンパ球をリンパ節に閉じ込める薬だ。飲み始めに徐脈や不整脈を起こすリスクがあり、開始時に1泊以上の入院が必要となる。

 MSは早期治療の奏功率が高いため、専門医による患者の状態に合わせた治療がなにより重要だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2016年2月5日号


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