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「赤ちゃん泣いてますよ」「もう、行けません!」 初めての育児。産後鬱は他人ごとではなかった

「赤ちゃん泣いてますよ」「もう、行けません!」 初めての育児。産後鬱は他人ごとではなかった f:id:akasuguope02:20160128230038j:plain

第一子を出産した大学病院での出来事。

深夜でもかまわず「赤ちゃん泣いてますよ」と呼びに来る助産師さんに、耐えられなくなっていた。

意図しない帝王切開となり、お腹の傷以上に、心が少し傷ついていたのかもしれない。

でも、出産ハイのような、変なアドレナリンが出ていたことも確かで、“自分が病んでいる”そのことに気づく暇がないほど、助産師さんは「赤ちゃん泣いてますよ」と何度も呼びにきた。

「もう、行けません!」

出産して何日目だっただろうか。

呼びに来た助産師さんか看護師さん相手に、何かがブチっと切れて、私は泣き出してしまった。

子どもを生んでからというもの、テンションがどんどん下がっている私をよそに、初孫フィーバーで舞い上がる両親、次々訪れる親戚、平日はなかなか来てくれない夫。

思うように動かない体は、寝ていたくても乳が張って寝ることもできない。

断続的に新生児室に呼ばれ、睡眠は取れない。

たまっていた黒いものが全部爆発してしまった。

その日、伯母が面会に来ていたが、赤ちゃんだけ見て帰ってもらった。

とても誰かに会うような気力はなかったのだ。

自分の体から出てきた小さい生き物は、寝たり泣いたり、排泄したりを繰り返していた。

かわいい……のかなあ?

かわいいかわいいと周りは言うけれど、いまいち実感がわかずにいた。

「かわいいねえ」と口に出し続けることで、この生き物をかわいいと心から思えるのではないだろうか。

何度も試した。

「かわいいね」

コットに入った赤子は薄目を開けたり閉じたりする。

「かわいいね」

赤子はじたばたとただ動いていた。

……かわいいという感情がよくわからないまま、退院の日を迎えた。

ほんとうに戦場と化したのは、退院してからだった。

「赤ちゃん泣いてますよ」と都度呼ばれていたにしても、新生児室であずかってくれるということが、こんなに安心できることだったとは!

産後の1ヶ月は実家に居候し、夫とは週末婚のような状態を続けていた。

11月。

気温も低くなり、冷えた薄暗い台所での深夜の調乳は、私の心に影を落とすのだった。

──楽しく自由だった生活からの隔離。

自分の都合だけでは、もうどこに行くこともできない。

友達と深夜に飲み歩くことも、気晴らしに出かけることすら許されない。

産後の1ヶ月は外出しちゃダメ、という母親の(よかれと思って言ったことが全部裏目に出るような)アドバイスも、じわじわと私を苦しめていた。

そこで私は、ちょっとした買い物でも用事を見つけ、母親に新生児を預けて、実家から数分の距離にあるショッピングセンターに脱出する作戦を思いついた。

「母体もさ、ずっと寝てると筋力が弱っちゃうから」

そう母を説得し、1日1回は外に出るようにしてみた。

「自由だー!」

目と鼻の先の距離に移動しただけにもかかわらず、それは私にとって大変な自由を手に入れたに等しかった。

一人だということ。

命の責任を、今、この数分は背負わなくていいということ。

おそらく、赤ちゃんを願って願って授かった場合と、あまりそこまで考えていなかったところからのスタートでは、知識量と覚悟が違うのではないかと思った。

赤ちゃんは欲しいと思ったが、私自身そこまで子ども好きということでもなく、新生児を迎えて、ともに生活することが、実際にどうなるのかがまったくわかっていなかった。

人間、意図しない動きに対してはなかなか対応できにくいものだが、それが四六時中続くなんて、考えてもみなかったのだ。

何をしても泣き止まない3ヶ月児を、もう放り投げてしまいたくなったり、それはいけない!と思いとどまって、柔らかいクッションの上にそっと着地させてみたり。

「赤ちゃんかわいい」よりも「思うようにならないストレス」が勝ってしまうことは、“赤ちゃんの赤ちゃんらしい時期”を素直に楽しみきれないという意味で残念なことでもある。

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