ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

日本の住宅寿命が欧米よりも20年短い理由

DATE: BY:
  • ガジェット通信を≫

日本の住宅寿命が欧米よりも20年短い理由

 多くの人にとって、家を建てることは、一生に一度の「大きな買い物」。できるだけ快適な家を建てたいものだが、そもそもあなたが求める「快適さ」とは、どのようなものだろうか?

 『1時間でわかる省エネ住宅! 夢を叶える家づくり』(青春出版社/刊)の著者、高垣さんによると、「夏涼しく、冬暖かい」ことこそが、「快適な家」の本来あるべき姿。しかし、この快適さを実現している日本の住宅は驚くほど少ないという。
 この問題を解決すべく、本書では「パッシブデザイン」という工法を取り上げている。この方法を用いることにより家の断熱性を高めることができ、無暖房でも、部屋の温度を最低、15〜16度に保つことができる。
 このような効果を持つ「パッシブデザイン」とはどのようなものなのか。住宅会社で戦略立案や営業支援の仕事に携わっている高垣さんにお話をうかがった。今回はその後編である。

――「日本の住宅寿命は、欧米のそれに比べて圧倒的に短い」という話を聞いたことがあります。これは本当なのでしょうか。
 
高垣:まったくのウソというわけではありませんが、やや正確さに欠ける表現だと思います。
「住宅寿命」とひと口に言っても、物理的耐久性と社会的耐久性の二通りの意味があります。まず前者についていえば、日本の住宅の物理的耐久性は欧米のそれにひけをとらず、きちんとメンテナンスを行なえば、30年どころか50年以上はもちます。
ではなぜ日本の住宅の多くは30年で建て壊されてしまうのかといえば、「家が消費の対象になっていたから」でしょう。戦後の高度経済成長によって、あらゆるものの消費スピードを上がっていくなかで、私たちは「家をどんどん建て替えること」に抵抗を感じなくなっていきました。なので「住宅寿命が短い」よりも「社会的耐久性が落ちた」と言ったほうが正確だと思います。

――では、パッシブデザインを取り入れることは、住宅の物理的耐久性と社会的耐久性にそれぞれどのような影響を及ぼすのでしょうか。
 
高垣:パッシブデザインの前提条件である高気密・高断熱な家においては、断熱性や気密性を上げることと同じくらい、「壁のなかに湿気が入らないようにする」ことが重要です。湿気が入ってしまうと、「壁体内結露」といって、ガラスの表面がビシャビシャに結露しているような現象が壁のなかで起きてしまうからです。この状態は極めて危険で、酷い場合は柱が腐ってしまうなど物理的な耐久性に大きな影響を及ぼします。
さきほど断熱材の話をしましたが、家の断熱性が高まれば高まるほど、外気温と室温との差が大きくなり、結露のリスクは高まります。その意味では、中途半端な知識しか持たない状態で高気密・高断熱な家にすると、物理的な耐久性にマイナスの影響を及ぼすリスクがあるということです。
一方、社会的耐久性については、パッシブデザインを取り入れることで、プラスの影響が考えられます。室内の温度差を小さく保つためには、断熱性能の向上外に、廊下スペースを減らし、できるだけ「仕切り」を少なくするという方法があるんですが、仕切りが少なければ間取りを自由に変えられる。
たとえば、元々は四人家族が真四角な部屋の四隅を四等分してプライベートな空間として使っていたとします。でも余計な間仕切りがなければ、子どもが巣立ち夫婦ふたりになった段階で、部屋を二等分して使うということも可能なわけです。つまり、わざわざ建て替えたりしなくても、目的に合わせて住環境を再設計できる。これは社会的耐久性を向上させることにつながると言っていいでしょう。

――インタビューの冒頭では、パッシブデザインという考え方が、まだ日本にはまったく浸透していないというお話がありました。今後、この考え方がどのように広がっていけばいいと思われますか。
 
高垣:パッシブデザインという言葉は使われなくても、「こういうふうに家をつくれば、熱をコントロールできるよね」という考えが、消費者のあいだで根づいていけばいいと思います。
この考え自体は難しいものでもなんでもありません。日本人は昔からごく自然な形で「パッシブデザイン的なもの」を実践していたという意味で、これからの日本の住環境は「原点回帰」していくべきだと思っています。
北海道を例にとれば、アイヌ民族の人々は「チセ」という竪穴式住居のなかで、年中、焚き火を焚くということをしていました。竪穴式住居の構造を簡単に説明すると、床は藁と土を何層にも積み重ねることでできていて上には穴が開いています。「冬になったら寒そう」と思うかもしれませんが、これがまったく寒くないんです。それは夏の間じゅう、ずっとチョロチョロと焚き火をすることで大地に熱をためこむことに成功しているからです。つまり、夏のあいだにためておいた熱がジワジワと上にあがってきて、冬はその輻射熱によって竪穴式住居のなかが暖まるんです。
日本の各地には、このように寒暖差を乗り切るための知恵が沢山あります。そうしたものに目を向けていくことも重要だと思いますね。
 
――最後に読者の皆様へメッセージをお願いします。
 
高垣:パッシブデザインの考え方を取り入れれば、光熱費を抑え、しかも健康な暮らしも手に入れられる。つまり、パッシブデザインはとてもおトクな方法なのだということを知っていただきたいですね。この本を通じて、「パッシブデザインを知っているだけで、おトクなんだ」ということだけでも是非知っていただければと思います。

(了)


(新刊JP)記事関連リンク
室温●度以下は病気リスク増? 寒い冬に知っておきたい最新建築事情
死亡者数は交通事故の倍! 「ヒートショック」が起きる家の特徴
家づくりに成功した人たちに共通している部分とは?

カテゴリー : エンタメ タグ :
新刊JPの記事一覧をみる ▶

記者:

ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。