音楽評論家が描く“小説”──高橋健太郎著『ヘッドフォン・ガール』

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音楽評論家が描く“小説”──高橋健太郎著『ヘッドフォン・ガール』

OTOTOYプロデューサーでもあり、音楽評論家、さらにはサウンド・エンジニアとしても知られる高橋健太郎。

昨年夏の『スタジオの音が聴こえる』に続き、このたびふたたび単著を出版する。なんとその内容は音楽評論集などいわゆる一般的なノンフィクションの“音楽書籍”ではなく「小説」。フィクションなのだ。

タイトルは『ヘッドフォン・ガール』。

主人公のMAエンジニア・アシスタントが、亡き父方の、疎遠にしていた長野の親戚から1本の電話を受けることからこの物語ははじまる。ここ数ヶ月の間、連絡のつかいない東京に住む叔母を探して欲しいという電話だ。その成り行きで、彼はほぼ会ったこともない他人のような祖父や叔母の家を訪れることになる。その家に眠っていた祖父の忘れ形見の機材たち──そのなかのひとつのスライド映写機の光とともに、彼はなぜか近い未来の、確実すぎる幻視を見てしまう。その幻視のなかでの彼はヘッドフォンをしたひとりの女性とひとつの存在になっている。

そして祖父の遺品のなかから見つかる古めかしいドイツ製マイクがひとつのモチーフとなって、彼を含めた人々を取り巻く不思議な縁が物語を生んでいく。

作品中には、登場人物を結びつけるそのマイクが生まれた録音文化的な背景、とあるバンドのプロデュースを担当するためにドイツから来日する、ホルガー某と誰かを足したようなアーティスト描写、さらには登場人物たちが作る、触れる、さまざまな音楽たち(架空のものも、実在のものも両方描かれている)に関する記述などなど、音楽評論家だからこその表現が各所に。当たり前だが、これらの要素はとってつけたような存在ではなく、音楽や機材が人々を結びつけ、ストーリーをひとつもふたつも深める役割をしている。

行方不明の叔母は? 不思議な縁で出会った人々と主人公は? 最後に鳴っている音楽は? それは読んでからのお楽しみということで。
(河村)

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