文章が苦手でも、ビジネスシーンで「情報の過不足がない」ドキュメントを作成する方法

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みなさんの報告書や企画書、ビジネスメールなどのドキュメントには、過不足のない情報が記載されているでしょうか。

ビジネスではさまざまなシーンでドキュメントが使用されますが、いざ執筆したドキュメントを読み返したり、提出したりすると、「中身がない」と思うことや、指摘されることもあるかと思います。

「中身がない」という感想には、複数の意味が考えられます。「中身=コンテンツの魅力」がない場合や、そもそも目標とする方向が違う場合では、意思決定者との摺り合わせの上で、ゼロから書き直しをするしかありません。しかし、そうではない場合、つまり、ただ文章のクオリティが低くて「中身=情報」がないのであれば、ブラッシュアップ次第でいくらでも優良なドキュメントに変化させることができます。

ドキュメント作成もまた、ビジネスにおけるコミュニケーションの一種です。コミュニケーションのポイントは、情報をどのように伝達するか。ドキュメントの「中身がない」というのは、つまり、コミュニケーションの失敗なのです。もちろん、仕事の進捗や評価にも直結するため、過不足のない情報というのが重要であることはご理解いただけるでしょう。

そこで今回は、ふだんあまり文章の情報の密度を意識しないビジネスパーソン向けに、わかりやすいドキュメントを作成する方法をご紹介します。

ドキュメントの情報の密度を規定する公式

とは言え、「中身がない」という感覚だけではなかなかドキュメントに反映しにくいので、以下のように、ドキュメントの情報の密度を規定する公式を作成してみました。

ドキュメントの文字数 = 文型 × レトリック × 6W2H

まず、情報の密度を規定する時には、情報の容器になるドキュメントの文字数を設定する必要があります。ドキュメントの文字数は、報告書や企画書、ビジネスメールなどの種類、そして場合によりさまざまですが、A4一枚のドキュメントでおよそ1200文字前後が目安です。ドキュメントの文字数をどれくらいにするか、まずはそれを設定して、各要素をそれぞれ確認していきましょう。

文章の骨格になるのは文型

学生時代に英語の文型を勉強したことがあると思います。同じ言語である以上、日本語にも文型があり、それがドキュメントの骨格になります。まずは英語の文型を振り返ってみましょう。 第1文型(SV):SがVする 第2文型(SVC):SがCだ 第3文型(SVO):SがOをVする 第4文型(SVOO):SがO1にO2をVする 第5文型(SVOC):SがOをCにVする

これを踏まえて、省略が可能な日本語の文型は、簡単にまとめると、下記のようになります。学問的に厳密な定義ではなく、あくまでライティングへの理解を深めるための補助的な定義としてご確認ください。 SがVする Sがいる/ある SがCだ

日本語の文章は、大きくこの3つのパターンに分類されます。試しにいくつか、例文を品詞分解してみましょう。

我輩は猫である。

『我輩は猫である』夏目漱石

→我輩は(S)猫である(V)。

メロスは激怒した。

『走れメロス』太宰治

→メロスは(S)激怒した(V)。

このような文型が、ドキュメント作成の骨格になります。

レトリックでドキュメントを修飾する

“我輩は猫である。”は8文字。例えば100文字のドキュメントを作成したいとして、文字数はまったく足りません。ここで、文章の骨格に肉付け、つまり修飾をするのが、文章のレトリックです。同じネコについての下記のドキュメントをご一読ください。

その猫は自分はこの近くでゴマ(1歳、三毛猫、雌)の姿をみかけたことがあると思うといった。しかしながら猫は――ナカタさんの立場からすればということだが――かなり奇妙なしゃべり方をした。(91文字)

『海辺のカフカ』村上春樹

受ける印象はまったく異なり、『海辺のカフカ』の方がより持って回った印象です。この「持って回った印象」というのをより明確にするために、品詞分解をしてみましょう。

その猫は(S)/自分はこの近くでゴマ(1歳、三毛猫、雌)の姿をみかけたことがあると思うと/いった(V)。

しかしながら/猫は/――ナカタさんの立場からすればということだが――/かなり奇妙なしゃべり方を/した(V’)。

文字数に対して、文型(SV)の数が少ないことがわかります。このうち、例えば「――ナカタさんの立場からすればということだが――」のように、情報としてはあまり意味を持たないのが、修飾語、いわゆるレトリック(修辞技法)の部分です。

レトリック【rhetoric】修辞技法。修辞学。文彩(ぶんさい)、あやとも言われ、スピーチおよび文章に豊かな表現を与えるための技法のことを表すことが多い。(出典:はてなキーワード)

具体的には次のようなレトリックがあります。

比喩法(直喩・暗喩)/擬態法(擬態語・擬音語・擬声語)/擬人法・倒置法/反復法・同語反復/体言止め/反語/呼びかけ/パラレリズム/対句・押韻/語句の挿入/省略法/パロディ/冗語法など

村上春樹さんのように、文章を味わい深くするために必要なのがこのレトリックですが、ビジネスシーンにおいては多用は禁物です。前述した「持って回った」という印象は、そのまま「中身がない」という評価に直結してしまうからです。実際、いくらレトリックをドキュメントに散りばめても、情報の量が増えるわけではありません。ドキュメントの情報の密度が、

原稿の文字数 = 文型× レトリック × 6W2H

という公式で規定されるとすれば、レトリックの割合が大きくなるほど、それ以外の情報の割合が小さくなり、文章の「中身がない」ということになってしまうわけです。

過不足のないドキュメントには6W2Hが必要

文章の骨格である文型、それを修飾することで、いくらでも文字数を調節できることがわかりました。しかし、これだけでは過不足のないドキュメントは作成できません。情報の量だけでなく、質ももちろん重要になるためです。

相手に伝達するべき情報というのは、こちらも学生時代の英語の授業のようで申し訳ないのですが、大きく下記のように分類できるでしょう。

When(いつ)/Where(どこで)/Who(誰が)/Whom(誰に)/Why(なぜ)/What(何を)/How(どのように)/How much(いくらで)

過不足のないドキュメントの具体例は新聞です。限られた紙面の中で、必要十分な情報を伝達する社会的責任のあるメディアなので、ドキュメント作成においても参考になります。ここでは『品川経済新聞』の『田町・芝浦にレストラン「芝浦グリル」 お代わり自由のランチも』という記事をみていきましょう。

JR田町駅・芝浦工大芝浦キャンパス近くに6月30日、レストラン「SHIBAURA GRILL(芝浦グリル)」(港区芝浦2、TEL 03-6459-4253)がオープンした。店舗面積は約80坪、席数は120席。

店長の矢田亮介さんはオープンのきっかけについて「東京五輪などを見据えて再開発が進む芝浦エリアに注目していた。立地に合う業態を考え、千種グリルの2号店を作ろうと決めた」と話す。コンセプトは「ちょっとした日常のこだわり」。

これを6W2Hに振り分けます。

(Where)JR田町駅・芝浦工大芝浦キャンパス近くに(When)6月30日、(What)レストラン「SHIBAURA GRILL(芝浦グリル)」(港区芝浦2、TEL 03-6459-4253)がオープンした。(How much)店舗面積は約80坪、席数は120席。

(Who)店長の矢田亮介さんはオープンのきっかけについて(Why)「東京五輪などを見据えて再開発が進む芝浦エリアに注目していた。立地に合う業態を考え、千種グリルの2号店を作ろうと決めた」と話す。(How)コンセプトは「ちょっとした日常のこだわり」。

情報が6W2Hについて網羅されているのがおわかりいただけたでしょうか。この6W2Hは、ドキュメントに限らず、コミュニケーションの基本そのものです。報告書・企画書、ビジネスメールなど、それぞれのドキュメントにおいて、6W2Hのうち必要な情報を念頭に置き、それを記載することで、加不足のないドキュメントが作成できるでしょう。

情報の加不足がない文章を作成するために

繰り返しになりますが、ドキュメントの情報の密度を規定するのは、

ドキュメントの文字数 = 文型× レトリック × 6W2H の公式です。自分のドキュメントについて「中身がない」と思ったり、言われたりした場合は、どの要素が不十分であるのかチェックしてみると、補足するべき内容がわかるはずです。

コミュニケーションの一環であるドキュメント作成においては、アウトプットについて問題を見える化しやすいので、改善もしやすいと言えます。であれば、課題は何となくの苦手意識を持たずに、真摯に文章に向き合うことでしょう。そのきっかけとして、この公式を覚えておいていただければ幸いです。

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著者:朽木誠一郎 (id:seiichirokuchiki)

朽木誠一郎

編集者、ライター、メディアコンサルタント。大学時代にフリーライターとしてキャリアをスタートし、卒業後はメディア事業をおこなう企業に新卒入社。オウンドメディアの編集長として企画・編集・執筆を担当したのち退社。現在はYahoo!ニュース個人などで執筆、PAKUTASOのフリー素材モデルとしても活動している。ブログ『あまのじゃく日記』はメディア論から美味しいごはんまでゆるやかに更新中。

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