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衆院選の格差是正 小手先改革はもう限界(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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■ 衆議院議長の諮問機関が「一票の格差」是正に向けた選挙制度改革案を公表

衆院議長の諮問機関が14日、「一票の格差」の是正に向けた選挙制度改革案を公表した。格差是正を求める司法と、地方の議席を重視する与党の双方に配慮した「折衷案」。選挙制度を巡ってはこれまでも現職議員への配慮から小手先の手直しを繰り返してきたが、そろそろごまかしのきかない時期にきている。

【調査会が提案したアダムズ方式】

「衆議院選挙制度に関する調査会」(座長=佐々木毅元東大学長)の答申は現行の小選挙区比例代表並列制を維持しつつ、小選挙区の都道府県別の議席配分にあたってより人口比を反映させる「アダムズ方式」を採用。5年ごとに選挙区の境界を決める「区割り」を見直し、格差を2倍未満に抑えるのが柱だ。

衆議院選挙制度に関する調査会答申(衆院HPより)http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/senkyoseido_toshin.html

安倍晋三首相や与野党の「宣言」を踏まえ、定数削減も盛り込んだ。定数は小選挙区で「7増13減」、比例代表で「1増5減」し、全体で現行の475から465に10減らす。答申の実現には関連法の改正が必要で、焦点は各党及び与野党間の協議に移る。

今回の答申で最も注目すべきは聞き慣れないアダムズ方式という言葉だろう。都道府県への議員定数や各政党への議席配分に使われる計算法の一種で、米国の第6代大統領アダムズが提唱したとされることからその名がつけられた。

計算方式は少し複雑で、都道府県の人口をある「特定の数」で割り、得られた数字の小数点部分を切り上げたものを各都道府県の定数とする。都道府県の定数の合計と総定数が同じになるよう「特定の数」を調整する仕組みだ。

例えば定数45を人口1000人のA県、1500人のB県、1500人のC県に配分する場合、それぞれの人口を100で割ると10、15、17.5となる。小数点以下を切り上げると11、16、18で計45となるため、A県の定数を11、B県を16、C県を18とするのだ。

この計算方式は小数点以下を切り上げるので、実質的には各都道府県にまず1ずつ配分することとなり、現行の「1人別枠方式」に近い。その上で現行方式より最大格差が縮まるのが最大の特長だ。

司法は「違憲判決」を下すなど格差是正を強く求めているが、地方の地盤が強い自民党は過疎地の定数削減に後ろ向き。調査会の答申は司法と与党の両方に配慮した結果なのである。

 

■ 評価がわかれる理由

今朝の新聞各紙に掲載されている識者のコメントを見ていると「格差の根本的な是正にはつながらない」(片木淳早大教授)とさらなる是正を求める一方で、「人口の少ない地域の声は届きにくくなる」(佐々木信夫中央大教授)と地域への配慮を求める声もある。評価がわかれたのは小手先の改革ではすでに対応できない状態になりつつあるからだ。

司法が格差の是正を求めるのは、憲法が国会議員を「国民の代表」と位置付けており、同時に法の下の平等を定めているから。現行憲法に純粋に従えば、限りなく格差を縮めることこそが重要である。

一方で「地方の意見を国政に届けるべきだ」という意見にも一定の理がある。首都圏への人口一極集中が加速する中で格差是正を進めれば、ますます人口集中を助長しかねない。つまり、憲法の改正を含めた抜本的な制度改革が欠かせないのである。

例えば衆議院を国民の代表と位置づけて限りなく格差を縮める一方、参議院を地域の代表と位置付けて各地から均等に議員を輩出する。もしくは道州制を導入し、国政の機能の大半を地方に移管したうえで、地域への利益誘導ではなく国家として決めなければならない限られた事項のみ国民全体の代表である国会議員が決める。そうした抜本的な改革に着手する時が来ているのではないか。

どちらも憲法改正が必要で、時間はかかる。それまでの間は格差是正の圧力を受けてじわじわと地方の議員は減り続けるだろう。国会議員の数が減れば減るほど、地方議員の役割が重要となる。

 

(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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Photo : http://bit.ly/1RpexBZ

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