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第41回 隣人

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 前回、2階にいた際に隣人との関係で、私が1階の独居に移転となったことを書いた。
 その2階での隣人(上独1にいる人)は、相当に変わった人だった。精神的なものかもしれないが。
 日中は非常におとなしく物音一つしない。入浴で一緒になることもあり、姿も見るが大柄な人だった。
 ちらりと見た部屋の中にはかなりの数の週刊マンガ本が置いてあった。刑務官とも仲良くやっていて、特段問題があるようには思えなかった。
 刑務官との話を聞いていると、時々高齢の母親が面会に来て現金も差し入れてくれているようである。「お母さんも大変だよな、遠いところから。心配かけないようにしなきゃな」「お母さんには申し訳ないです」などといった会話を聞いていると切なくなってくる。

 真夜中のことであった。隣から水音が聞こえる。洗濯をしているようだ。かなりうるさい。
 今頃何?そもそも洗濯はできないでしょと思っていると、警備の刑務官が飛んできた。延々注意を受けていたが、そのうちどこかに連れていかれた。

 翌朝、刑務官から、そのときの隣の様子を聞かれたが、時間も分からないし、ただただ「何か洗濯をしていたような音がしていました」としか答えられなかった。
 その日のうちに彼は戻ってきたが、それから幾日か後のことのやはり真夜中。音がするので何かと思い起き上がって外を見ると(なんとか、彼の独居前の廊下を見ることができる)、彼が、ぶつぶつ独り言をつぶやきながら、食事などの差入口からマンガ本を次々と廊下に放り投げている。

 刑務官は別の場所を巡回しているのかやってこない。しかし、しばらくすると警備の刑務官が6人来た。
 それからの彼の暴れ方が尋常ではなかった。当然直接に見ることはできないが、物音から想像するに本棚を壊してそれを投げつけたり、ありとあらゆる物が刑務官に向かって投げられているようである。

 一人の刑務官は、廊下でその様子をビデオ撮影している。幾度も口頭で説得しようとしていた刑務官らであったが、もう限界と判断したのであろう、突如「制圧」と叫ぶや、数人の警備担当刑務官が部屋内になだれ込み、一人が片手、もう一人が他方の片手、一人が片足、もう一人が他方の片足を持ち、体前面を下にして(飛行機運びといわれるらしい)、彼は運び去られていった。
 ビデオ撮影担当の刑務官はその状況をすべて撮影していた。後日のもしもの場合に備えてのビデオ撮影だと思う。

 巡回している刑務官がいなかったのに、何故状況把握ができたのだろうと不思議に思っていたが、彼の部屋自体がそもそも特別な部屋で、ビニール製の畳の部屋内には監視カメラが取り付けてあった。つまり、監視カメラを見ていた警備の刑務官が駆け付けたのだ。
 その彼は翌日にはまた復帰してきた。想像だが、一時的に保護室みたいなところに入れられたのだろう。

 おそらく、未決の場合、懲罰という制度がないのかもしれないし、あってもできる限り懲罰にしないのかもしれない。だからこそ、あれだけ暴れても、その翌日には、「上独1」室に復帰してくるのだろう。

 このような監視カメラが付いている部屋はいくつかあるようだ。私も一時的にその部屋に入ったことがある。夕食後に部屋の蛍光灯が切れたことから、その取替作業中、別の部屋で待たされたことがある。
 このときに入った部屋に違和感を覚えた。何かが違うという感覚だった。よくよく見ると、畳がビニール製なのだ。さらに見ると、出入り口の上の方に監視カメラがあった。要保護状態の者を収容する部屋であった。(つづく)

元記事

第41回 隣人

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