DARKSTAR『Foam Island』インタビュー

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「ビーチ・ボーイズ、ブライアン・イーノ、レディオヘッドが交差する場所にダークスターは存在する」――。〈Warp〉移籍作となった2nd『News from Nowhere』(2013年)が称賛を集め、ポスト・ダブステップ以降のエレクトロニック・ミュージック~UKアンダーグラウンド・シーンを担う一角として評価を得るダークスター。今年リリースされた最新作『Foam Island』は、多様なエッセンスを反映し更なる深化を遂げた音楽性と共に、地元のイギリス北部ハダースフィールドのドキュメンタリー・プロジェクトを発端としたメッセージ性の高い内容も大きな話題を呼んだ。今秋、朝霧ジャム、東京の単独公演への出演のため来日したふたりに、アルバムの制作背景、そして昨年急逝したマーク・ベルのことなど音楽的なバックボーンについて聞いた。

 

―今回のニュー・アルバム『Foam Island』は、地元のハダーズフィールドで暮らす若者たちと地域情勢や社会問題について語り合ったことが元になっているということで、そうしたメッセージ性の高い楽曲をライヴで披露するにあたりこれまでと違う感覚だったり意識したことはありますか?

エイデン・ウォーリー「というか、ライヴではメッセージの中身を変えていく必要があるんだよ。同じ作品を元にしていても、アルバムとライヴでは伝え方が全然違ってるし、エンターテイメント性を無視してアルバムのメッセージを忠実に再現しようとはしてないんだ。だから、アルバムの中にあるメッセージ性は薄まってるかもしれないけど、サウンド面は強化されていたり、音もラウドだったり、アレンジの部分でもアルバムとは違う新しいことに挑戦してたりっていう違いがあるよね」

ジェイムス・ヤング「ライヴの冒頭で新作からのサウンドを打ち出すことで、この先のライヴの方向性だったりトーンを示してみたり、ライヴ全体の流れを意識しながら要所要所でアルバムのトーンを伝えてようとはしてるけど、ただ、コンセプトっていう意味ではアルバムほど明確ではないよ」

―今回は政治的なメッセージを持った作品ということで、リスナーや身近な人達の反応もこれまでと違った、みたいなことはありましたか?

ジェームス「まわりの反応は概ね好評だよ。自分達が単なる演出じゃなく、実際にそうした現実を目撃した上でメッセージを発してることを理解してもらってると思うし。実際に現場に足を赴けて、現実を目撃した実感に基づいて作ってるんだってことがね。そのへんは正当に評価されてると感じてるね」

―驚いたレビューや感想とかありました?

ジェームス「いや、そうでもないかな。もともとメッセージ性が強い作品なんで、賛否両論があって当然だって覚悟はしてたんだ。実際、ポジティヴというよりはネガティヴな意見もあったし、さすがにこれはひどいと思える意見もあったけど。政治に関する個人的な意見を、そのまま作品の評価に当てはめるみたいなね。そういうのがあると、匿名で発表できたら素直な意見が聞けてよかったのに、とか思ったりするけどね」

―今、「覚悟はしてた」とありましたけど、こうした作品を出すことについて最初は戸惑いもあったのでしょうか? 

ジェームス「もちろん、それを覚悟の上で挑戦してるんだ。政治的なメッセージを、上から目線や自分達の価値観を押し付ける形でなく伝えていきたかったから。政治的なメッセージを伝えること以外にも、今のイギリス社会の現実をありのままに映し出すことだったり、自分達の人生の目的だったり野望だったり、家族や親しい人達への想いだったり、思春期から大人になるにつれて直面する数々の場面を取り上げているという。自分達とかそれよりも少し下の世代がこれから直面するであろう人生の大きなテーマについてね」

―“A Different Kind Of Struggle”というタイトルの曲が目を引きますが、これも具体的な出来事をイメージして生まれた曲なんでしょうか?

ジェームス「あの曲がこのアルバムの中でおそらく最も政治的な曲なんだけど、社会に失望したイギリスの若者の姿を映し出していて、アルバムを象徴する曲でもあるんだ。すべてはこの曲から始まったというか、この曲によって今回のアルバムは政治的な内容になるってことが決定づけられたんだ。曲の中で伝えているメッセージもアルバム全体のメッセージを象徴してるんだ」

―そうしたコンセプトやメッセージ性がサウンド作りにも影響を与えた部分はありますか?

ジェームス「そうだね、今回アルバムを作るにあたって色んな人にインタビューしてるんだけど、それがアルバムのサウンドだとか、アルバム全体の流れだとかストーリーと連動してて。音を作りながら一方でインタビューして、そこで受けた影響なり感覚をまた音に反映させてっていう作業を重ねながら作ってるんだ」

エイダン「ジェームスがインタビューした内容をもとに自分が音楽を作ってた時期もあったしね。ジェームスがインタビューを通して伝えようとしたことをもとに自分が音楽を作ったりもしてるしね」

―アルバムでは実際に会話を録音したモノローグが多く使用されていますが、その際に誰のモノローグを使うか、あるいはどの部分を使うか、という点で意識したようなことはありますか?

ジェームス「最初はとりあえず、ウエスト・ヨークシャー(※ハダースフィールドが位置する都市州)のありのままの現実をフィルターをかけずに表現するってことを意識してたんだ。そのためには良い面も悪い面もひっくるめてウエスト・ヨークシャーという土地について、政治的、社会的、さらにはストーリーという観点から映し出した上で、そこからさらに深く掘り下げて、そこで生活している人が幸せなのかあるいは不満を抱いてるのかについて描き出していってるんだ。最初から最後まで大まかな流れみたいなものを作っておいて、アルバムの最初のほうでウエスト・ヨークシャーの土地柄なり特徴なり地理的な基本情報なんかを紹介しておいて、そこから実際にそこで暮らす人々がその土地に対してどのような希望や不安を抱いているかを描いていき、それでも最終的にウエスト・ヨークシャーという街に住み続ける理由について説明するような流れになってる。だから、一つの見方や結論からじゃなくて、様々な角度からウエスト・ヨークシャーという街の現実を映し出してるんだよ」

―膨大な量のインタビューをしていく中で、若者達の発言でショックを受けたり、発見があったようなことはありましたか?

ジェームス「若い子達と話してて、この齢でこんなに深いところまで見てるんだってことにものすごい感動したことがあったよ。実際、インタビューしてても楽しかったし、それがきっかけで親しくなった人達とかもいるからね。同じストーリーでも角度を変えるとこんなに違った側面があるんだっていうことに感動したよ。ただ、驚きはなかったというか、自分ももともとウエスト・ヨークシャー周辺の出身なんで。あの土地で生まれ育って生活していく感覚についてある程度理解してるつもりだから。たしかに素晴らしい土地ではあるけど、可能性が圧倒的に少ないってことはあるよね。遊びに行く場所にしたって圧倒的に限られてるし、ただ淡々と変わらない日常が続いていくだけなんだ。それで自分も18歳のときに音楽がやりたくてロンドンに出てきたんだし。イギリス若者はどうしても都会に目が向きがちだよね。だからこそ、ウエスト・ヨークシャーという土地にあえて焦点を当てたかったんだ。自分達にとって意味があると同時に、大都市でなくても特別な場所なんだってことを示したかったからなんだ」

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―ウエスト・ヨークシャーの地域社会と連動しながら作られたアルバムですが、その作っていく過程で、ウエスト・ヨークシャーに限らず他の国や世代にも当てはまる普遍的なメッセージを持った作品になるのではないか――みたいな感覚もあったのではないでしょうか?

ジェームス「そうそう、そこが最終的に目指してたところなんだ。今回こうした政治的/社会的なテーマにフォーカスしてるのも、ウエスト・ヨークシャーで起きてる現実がそのまま世界のどこかの町の若者なり上の世代の現実にも当てはまるって確信があったからなんだ。どこの国や地域にも、政治的な政策や方針や、あるいは社会的な動きに対して失望している人達は必ずいるわけだからね。政治や社会的な政策にしろ、宗教的なものにしろ、もしかして自分の将来を決定するかも知れない決断が自分の知らないところで日々決められて行くことに対して疑問を抱いている人はいるは必ずいるからね」

―ちなみに、アートワークに収められている建物は実際にウエスト・ヨークシャーにある建物なんですか?

ジェームス「知り合いのアーティストが撮影を担当してくれてるんだけど、あの建物にしろ、今回自分達がインタビューした人達だったり実際に訪れた場所を撮影してくれて。アートワークの中にある駐車場もそうだけど、現実をそのまま記録として映し出したくてね。まあ、アルバムのアートワークだから、一応アートとして成り立つように美しい形で表現されているけど、ウエスト・ヨークシャーの現実をリアルに映し出すものにしたかったんだ」

―あの建物にはウエスト・ヨークシャーのどんな部分が象徴されてると言えますか? 

ジェームス「ウエスト・ヨークシャーってすごく面白い町だと思うんだ。美しい田舎の風景に囲まれた中に工業地域みたいなのがあって、大型ショッピングセンターみたいなのが中心部にあって……それと坂がすごく多いよね。丘や緑の風景が広がっててさ。何よりもそこに住む人々の共同体意識というか、コミュニティの繋がりみたいなものを感じるんだ。コミュニティの意識が強いが故に、外部の人からしたら少し閉鎖的な雰囲気があるのかもね」

―ところで昨年、マーク・ベルが亡くなったとき、前作『News from Nowhere』のプロダクションはマーク・ベルに影響を受けた、って内容のことをツイートされていましたね。今作に関してもマーク・ベルの影響が反映されているところはありますか? 

ジェームス「常に影響を受けてるよ。こないだのミックス・テープは聴いた? アルバムが出る2、3ヶ月前に出たんだけど、その作品の中でLFOのリミックスをしてるんだ。マーク・ベルからはまあ、とにかく多大な影響を受けてるよ。マーク・ベルの生前最後のショウで前座を出来たっていうのも、すごく光栄なことだしね。ものすごく残念なニュースだし、驚いたけど、本当にパイオニア的な存在だと思うよ」

―前作もそうでしたが、今作においてもヴォーカルや歌詞が重要な位置を占めています。そうした部分で影響を受けたシンガー・ソングライターなどはいますか? あるいは好きなアーティストとか。 

エイダン「自分の場合、今回初めてヴォーカルをとってるってこともあるから。自分の声を使ってどういうふうに自分を表現していくかってことが今後の自分の課題でもあり……この先、どうやって自分の声でありサウンドを見つけていくかってことだよね。そういう意味で言うなら、アーサー・ラッセルとか、声がまさにその人自身が乗り移ってるような。もし仮にヴォーカルに関して影響を受けたっていったら、アーサー・ラッセルかな」

―ちなみに、今年の春ぐらいにワイルド・ビースツとコラボしたポール・マッカートニーの“テンポラリー・セクレタリー”のカヴァーを公開されましたよね。あれはどういった経緯で?

ジェームス「もともと、『マッカートニーII』ってアルバムが好きで、何年か前にあの中に入ってる曲にちなんでアルバムのタイトルを『チェック・マイ・マシーン』にしようっていう案があったくらいなんだ。それくらいマッカートニーの作品が好きで、“テンポラリー・セクレタリー”についても、何年か前からカバーしてた作品だったんだけど、ずっとファイルで保管したままの状態で外に出す機会がなくて。それがミックス・テープをやるタイミングで浮上してきたというか、シリアスにならずに単純に楽しんでもらえると思ってね。実際、すごく好評なんだよ」

―あの曲のどんなところに惹かれたんですか? 

ジェームス「それまで見せてなかったマッカートニー像みたいなものが初めて見えた作品だからじゃないかな。エレクトロニックな音だったりキーボードを全面的にフィーチャーした作品で、マッカートニーのソングライターとしての実力が、アコースティック・ギターだとか、そうした先入観なしで初めて表現されてる気がして」

―2人にとって、モスト・フェイヴァリットなビートルズの作品は? 

ジェームス「『リボルバー』かなあ……いや、『アビイ・ロード』だね。“カム・トゥゲザー”を超えるアルバムのオープニング曲はないし。“ア・デイ・イン・ア・ライフ”が一番好きな曲なんだけど、あの曲も『アビイ・ロード』に収録されてるから、一番を選ぶならやっぱり『アビイ・ロード』だね」

エイダン「自分は『リボルバー』の中に入ってる“アイム・オンリー・スリーピング”って曲が好きで。あと、もう一つ好きなのは『ホワイト・アルバム』の中に入ってる“ブラックバード”って曲で、だから『リボルバー』か『ホワイト・アルバム』かってとこかな」

 

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DARKSTAR

『Foam Island 』

(WARP RECORDS/ BEAT RECORDS)

 

発売中

 

国内盤CD  ¥2,000(+税)

国内盤特典:ボーナストラック追加収録

 

beatkartで購入:http://shop.beatink.com/shopdetail/000000001957/

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tower records: http://bit.ly/1DwWH50

HMV: http://bit.ly/1MpuwNq

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