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第40回 ハトが飛んできた

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 留置場と異なり、拘置所独居では接見のときを除いて他人との接触がほとんどない。
 話をする相手は刑務官と面倒見さんだけであり、他の収容者とは、運動に行くときと入浴の往き帰りに、刑務官の目を盗んで素早くかつ小声で話をするくらいだ。
 それでもここに書くに値すると思われる人が幾人かいる。幾人かを紹介していくこととする。

 何年か前に大阪拘置所において被疑者同士とか、接見禁止処分のついている者が外部と連絡をするために、刑務官に「ハト行為」をしてもらい、刑務官が見返りに現金をもらっていたという事件があった。「ハト」とは伝書鳩のことである。
 話をすることはもちろん、会うこともできないAさんとBさんとの間を、飛び回って、双方の伝言を運ぶ役目である。

 私が拘置所に入ったその日、ものの10分も経たないとき、「山本先生、○○さんがよろしくとのことです」と、鳩が飛んできてすばやく飛び去って行った。
 鳩が誰であるか、○○が誰であるかは、今現在でも差し支えがあるかもしれないので明らかにはできない。

 それにしても、私が入ったことをその日に知っていることには驚いた。
 この鳩さんはその後も時々来ては「○○さんに何か伝言はありますか」などと聞いてくるので、仕方なく「元気だと伝えて」などというやりとりをしていた。
 その他にもハト行為ではないが、その鳩さんは不便なことはありませんか、困っていることはありませんかといろいろと私に気を使ってくれた。
 特段の不便や困りごとはなかったが、中での生活の仕方はいろいろと丁寧に教えてくれ非常に助かった。

 私は、隣人(1室)との関係で(それは次回に書く)、しばらく経った日に1階の独居に移されたのだが、それには私の共犯者であるとされたAが関与していた。布団などを持って、1階に移動する。

 移動が終了したときに刑務官がやってきて、「2階の1室の隣は大変だから先生が心配だ、先生を1階に移せとしつこく言う奴がいて移したんだよ」と言われた。「誰ですか」と聞いたが「それは言えない」との返答。「Aでしょ」と言うと、「まぁ言えないから」とほとんど肯定したような返事をもらった。

 Aは、私の共犯として身柄拘束されていた者で、刑務所暮らしにも慣れている者である。Aは、2階の独居、つまり私の並びの独居に収容されていた。そのため、入浴、運動そして接見のたびごとに私の部屋の前を通る。
 そして、刑務官がいるのもなんのその、それどころか刑務官が注意しても、私の部屋の前で必ず「お~す」とか「おはようございます」とかいった挨拶をしていく。刑務官が止めても「無実の人に挨拶して何が悪いんだ」と驚くようなことを言い返している。
 私が無実だろうが、他人に話しかけてはいけないというのがルールなんだけどな~。私といえば一応規則は守るつもりなのだが、さりとて無視するのもどうかと思い、顔を彼に向けて、うなづくことで挨拶を返していた。

 彼は、結局私の事件での共犯では立件されず(結局暴力団関係者で私の共犯とされた者はすべて無罪ないしは不起訴として放免され、私だけが有罪実刑という不可思議な結果となった)、まったく無関係の傷害事件だか暴行事件で逮捕起訴され争ったものの前科もあることで実刑判決となった。
 しかし、勾留期間が長かったことから、刑期に満つるまで未決勾留が参入されたため、その場で釈放となったと聞いている。(つづく)

元記事

第40回 ハトが飛んできた

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