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「お母さん、お疲れ様です」 ボロボロの私に、見知らぬ紳士が頭を下げた。その一言に心が解放され、涙が…

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子どもを保育園に迎えに行くため職場から出たとき、雨が降ってきた。

「今日はママチャリは自転車置き場において、バスで帰宅だな。」と決心を固める。

上の娘は4歳4ヶ月、下の娘は保育園に入ったばかりで1歳7ヶ月。

保育園から家までこの二人を連れて歩いて帰ると、日が暮れてしまう距離。

ああ、天気予報をちゃんと見てくるべきだった。

今日は、抱っこひももベビーカーもなしで、この二人を連れてバスで帰らなければならない。仕方がない。下の子は抱っこで、上の子は歩きで連れて帰るしかない。

バス停から家は二人をつれて歩いて10分だ。

二人を連れて保育園から出ると、ありがたいことに雨はあがっていた。

けれども、もう自転車はおいてきてしまった。

傘をささないだけ、良かったと思うことにする。

自転車での帰宅でなかったせいか、その日、子どもは二人ともグズグズで、上の娘は「お腹減った〜。お腹減った〜。もう歩けない!!」とずっと駄々をこねている。

おとなしくバスに乗ってもらうために、近くのコンビニに寄ってプリンを一個ずつ買い、「自分で持ちたい!」と叫ぶため、一個ずつ袋にいれてもらった。

プリン効果でおとなしくバスに乗ったはいいものの、バスから降りると、上の娘は早く帰ってプリンを食べたく、猛ダッシュ。

下の娘も、姉と同じように自分で袋を持って歩いて帰りたく、袋はひきずるわ、よちよち歩きだわで、なかなか進まず…。

上の娘に向かって、「走らないで〜!!ストップ!!」と叫ぶ。

下の娘には「袋重たいから抱っこしようね〜。」というが、完全拒否で大泣き。

上が先に進んでないか確認しながら、下の娘の牛歩を援護。

ずりずりとビニール袋を地面にこすりながら歩くものだから、袋が破れるだけにとどまらず、プリンの蓋の包装も破れ、ドロドロになっている。

それを見て、下の娘また大泣き。

私は「そこで止まってて!!勝手に行かないで〜!!」と叫びながら、プリンと涙でどろどろになった反り返る下の娘を抱っこする。荷物もいっぱい持ちながら。

こんなとき、私は「無」の領域にはいる。

二人目ともなると、「そうよね、雨だというのに対策をしてこなかった私のせいだわ。家まであと少し、頑張ろう!」と無感情に心の中で自分を鼓舞することも上手くなる。

こんなこと、よくある、何でもない。

くじけそうになる心を、無にして、見なかったことにする。

と歩いていると、視線を感じ、ふと横を見る。

すると、スーツ姿のおじさまが私をみつめている。

この人、「この母親、何やってるんだ…。」ってあきれているんだろうな。すいませんね…。とやさぐれていると、いきなり「お母さん、おつかれ様です。」と頭を下げられた。

私はよくわからなかったが、確かに彼はぺこりと頭を下げた。

紳士は通り過ぎ、私も歩き出した。

何事もなかったように、子どもを制しながら、抱っこしながら歩き続けていると、なんだか涙がでてきた。

……ああ、この涙はなんだろう。

…悲しいのでもない、嬉しいのでもない、悔しいのでもない……何で私は泣いているのだろうと自分に戸惑った。

多分、こらえていたものが思いがけない一言で、ぐわっと出てきてしまったんだ。

そう、本当は叫びたい。

「泣かないでよ!プリン持ちたいって言わないでよ!先に行かないでよ!何かあったら全部わたしの責任になるんだから!疲れてるの、これから大量にやることあるの。反り返るあなたを荷物もあるのに抱っこできない。自転車でくればよかった、何であんな選択したんだろう…。ああ、何もかも投げ出したい!!」

子どもを育てていると、疲れてしまったとき、自分の感情を無意識におさえてしまう癖がついてくる。

その方が、自分の感情に振り回されなくてすむから。

子供に言ったって仕方ないし、自分の行動悔やんだところでどうしようもないし、その先は誰も助けてくれないし。

ただただ淡々と目の前のことをこなす、それがベスト。

でも、このどこにもぶつけられない抑えこまれた感情は、ちゃんとどこかで消滅しているのだろうか。

紳士は私の内心を見透かしていた。

上手く隠すどころか、私の背中からその感情はこぼれて出ていたんだ。

思いがけない発露のもと、蓄積された私の感情は吹き出し、涙となって現れた。

その日、子どもを寝かしつけるとき、ふと今日はいつもと違うことがしたくなった。

絵本を読んでも、なかなか寝ようとしない子どもたちを、いつもは「寝なさい!!」と言いながら無理矢理寝かそうとするのだけれども、今日はベランダに出てお月様を見ることにした。

空は雨があがった後で、月も星も綺麗に見えた。

子どもたちは「お月様おやすみなさい。」と挨拶をしたあと布団に入ると、いつもが嘘のように静かに眠りについた。

著者:ちらしずし

年齢:33歳

子どもの年齢:4歳8ヶ月・1歳10ヶ月

子供ができるまで、人生は自分だと思いあがっていたのですが、子供が生まれて以降、人生は他人だということに気づき、一歩大人に。仕事と子育てと家事の怒涛の毎日を過ごし、バランスがとれていない生活に悶絶中。でも、仕事が終わって、子供の臭いをかぐと一安心。日々を淡々と生きる覚悟がついた、33歳曲がり角女です。

※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。

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